東方十能力   作:nite

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百二十九話 遊園地

まずはどこへ行こうか。

できるならば情報を集めながらルーミアが楽しめるところがいいが…いや、そんな都合がいいところはないな。情報集めならばあとでもできるだろうしルーミアが楽しめそうなところを探すとしよう。

ルーミアが好きなものと言えば…食べ物だろうか。妖怪なので主食は人間になるのだろうが、普通の料理も食べる。妖力は増えないけど腹を満たすだけなら問題ないらしい。

となれば外の世界の俺が作れない料理を食べさせてあげたいところだ。俺が作れないものは、技術的に足りない職人技が必要なもの、幻想郷では材料が足りず物理的に作れないもの、そもそも知らないものの三つだ。

料理人の仕事をさせられたことが何度かあるので和洋折衷フレンチイタリアン色々作れるが、西洋のデザートはレシピを知らないものも多い。

となれば俺がルーミアにしてあげられるのは昼食はジャンクフード、おやつにデザートという算段。

では残った時間は何が良いだろうか…

 

「…だ晴!定晴!」

「え?あ、なんだルーミア?」

「はぁ…いくら言ってもその考え事する癖はなおらないわね…」

 

呆れるルーミア。

確かにこれでもう何度目か分からない注意である。俺がこうやって考え事するのは通常は一人で行動しているからだ。ルーミアがいることは最近多いので少しずつ慣れなければ…って前も同じ気持ちになったような…

 

「それで?どこ行くの?」

「捜索は明日。まずはルーミアに外の世界に慣れてもらうために遊ぶぞ。遊園地だ」

「遊園地…?」

 

まあ知らないのも無理はない。幻想郷では一切似たような施設がないからな。

人工物による人間を楽しませるための場所だが、雰囲気とかもあるしルーミアも楽しめるだろうと踏んだうえでの選択だ。

俺は人混みをルーミアと離れないように手を繋いで歩いた。まあ離れても分かるけどね。

そしてバスに乗り到着するはこの街一番の遊園地。昨今では遊園地を楽しむ人が減り、外の世界では遊園地の数が減っていると聞いたがまだここは残っていたようだ。ここで三週間程スタッフをしていたので施設の場所も覚えている。案内するにしてもうってつけなのである。

チケットを買って入園。ルーミアを一時的に子供モードにして…ってのも出来たけどそんな黒いことはしない。金に困ってるわけでもないからな。

入園ゲートという時点で若干ルーミアは戸惑っていたが、遊園地の中はもっと人工物で溢れかえっている。ルーミアはあまり河童とは関わらないと言っていたので機械、科学技術には疎いのだろう。実際河童以外の幻想郷の住人は皆科学技術に疎いような気がする。霖之助なら多少は触れたことがあるかもしれないが。

入園してまず飛び込んできたのは遊園地の騒音。そして華やかな装飾だった。

遊園地の賑やかな音と共にキラキラした園内アトラクションはルーミアの目にどう映っただろうか。幻想郷では見る事が無い光の数々。弾幕ごっこは綺麗だが、それとは別の綺麗な風景が遊園地の中に広がっていた。

そして俺も若干気圧される。そうか、遊園地はこんな所だったな。スタッフとして園内にいた時はあまり周囲の景観を楽しむことはなかった。季節の移り変わりは装飾を見て楽しんでいたが、このように客として遊園地に入るとまた別の景色が見えるんだな。

少し興奮した様子でルーミアが尋ねてくる。

 

「それで、まずはどこに行くのかしら。私は遊園地なんて知らないし」

「それもそうだな。今日は平日、学生や社会人は少ない筈だ。ルーミアが乗りたいと思ったやつでいいぞ」

 

といってもルーミアは疑問顔。

それもそうか。俺たち外の世界の住人であればあれが何のジャンルのアトラクションかなんてすぐにわかるが、そもそもそれが何なのかすら知らない幻想郷の住人には見て判断するなんてできそうにない。

となればここは元スタッフとしてオススメに連れて行くのが筋だろう。勿論あのころからリニューアルしたり増えたり、逆になくなったりしたアトラクションもあるだろうが手持ちのパンフレットをもとにルーミアに合いそうな場所に連れて行くことにしよう。

正直妖怪であるルーミアに対して幽霊屋敷みたいなものは意味がないだろう。機械で動いているせいで妖力を感じたりはできないが、ルーミアなら問題ないような気がする。一応時間があれば連れて行くことにしよう。

となれば行くべきは…幻想郷ではできない体験ができるものではなくてはな。熱いとか寒いとかそういったアトラクションは妖怪ならば慣れているだろう。幻想郷には炎を操る人も冷気を操る人も寒気を操る人もいるからな。どれも正真正銘の人間ではないけど。

となればやはり鉄板のジェットコースターだろうか。早い動きは俺も慣れているが、意外に高速された状態で自分が意図する動きをしないというのは結構怖いものだ。

 

「よし、ルーミア。ジェットコースターに乗ろう」

「ジェットコースター?」

「ああ。ここからでも見えるぞ。あれだ」

 

そして指さすは正面、少し上に見えるレール。

人が少ないといえ人気のジェットコースターから聞こえる悲鳴は遊園地を盛り上げる要因の一つと言えよう。これが無くては遊園地に来た感じがしない。

この遊園地には正面にあるもの以外に四つほどある。普通のもの、反対向きに進むもの、垂直落下するもの、速度が早いことで有名なものの四つだ。

さてさてルーミアにはどれに乗ってもらおうかな。入園するときにフリーパスも買ったからどれでも乗り放題だ。その分お金を使うことになったが、紫に俺のお金を換金してもらうと同時にそれなりの資金も貰っている。遊ぶための物ではないとは思うけど、ルーミアのためだ。是非も無し。

ルーミアに説明したら反対向きに進むものがいいという。

確かに反対向きに飛ぶなんて俺たちでもしない。その点で言えば中々しないことということで楽しめるだろう。

平日であるお陰で順番はすぐに回ってきた。並んで座る。運がいいことに一番前、いや後ろ向きだから一番後ろということになるのだろうか。正面に座席がない所に座った。

 

「…大丈夫よね?壊れないわよね?流石にこれがぶつかってきて無傷でいられる自信はないんだけど」

「安心しろ。俺たちが乗って壊れるのならこのジェットコースターは既に何度も事故っているはずだ。それがないというのなら問題ないだろう」

 

妖怪が乗ったかどうかは定かではないが、わざわざ不安を煽る必要もないだろう。

後ろ向きに進みだす。この時点で若干ルーミアは怖がっているようだ。かくいう俺も若干引き攣った笑みになる。やはり進む方向が見えないって怖いんだな。

そして頂点。遊園地全体が見えるここでルーミアの顔を見ている。

若干泣きそうだった。

そしてそのまま後ろ向きに落ちる。他の客が叫ぶ時ルーミアは…

 

ジェットコースターってのもたまにはいいな。楽しかった。

そしてルーミアはというと…

 

「普通に怖いじゃない!グス」

 

少し泣いていた。そもそも落ちた時には既にルーミアも叫んでいた。他の客に煽られたのもあるのだろうが、ルーミアが想定していたよりも恐怖が勝ったのだろう。

今も涙目のまま俺の腕を掴んで歩いている。少し休んだ方がよさそうだな。このままでは他のアトラクションを楽しむことはできないだろう。

 

「ほら、少しベンチに座るぞ」

「え、ええ。いいわ」

 

口調は強いが未だに涙目のルーミア。

こう言ってはなんだが、いつも大人モードのルーミアは落ち着いているのでこんな風に大人モードで泣いている様子を見るのはギャップが凄い。

飲み物を買ってきてルーミアに渡す。ペットボトルの開け方が分からず四苦八苦していたが、それのおかげで若干恐怖も和らいだようである。

その後恐怖から回復したルーミアが滝を落ちるようなアトラクションでまたもや少し涙目になり、妖力を感じ取れず、というか力云々が一切感じられない機械の幽霊により何度も驚かされルーミアは遊園地に対してどことなくトラウマを植え付けられたようだった。

なんとなくやっていたイベントを見て帰る。外の世界で過ごす間寝泊まり等をする借り家である。厳密に言えばアパートの一室だが。

紫によってそれなりの家具が揃えられ中も綺麗のままだ。俺とルーミアが同じ部屋で寝ることになったので紫は不満そうだったが、心配せずとも俺はルーミアに何もしない。

一通り確認した後に食事をして睡眠。明日からは本格的に探し始める。しっかり休まねば。

…遊園地により発生した若干の筋肉痛を治すためにも。

 


 

暗い街の中。一人の少女がフラフラと歩く。

見た目はどことなくみすぼらしくて、家がないのは一目瞭然である。

今日も警察から逃げていた彼女は呟く。

 

「…お姉ちゃん。私もそっちに行きたいよ…」

 

先日、ついに力尽き車に引かれた姉を想う。

天を仰ぎながら、心中は死にたいと思いつつ、それでも姉の最後の言葉「生きて」を思い出して歩く。

彼女に光は訪れない…

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