よし、街にくりだそう。
朝の準備…朝食等…が終われば本格的に捜索開始だ。なんとか筋肉痛も治った。というよりかは再生能力も並行させて治したの方が正しいかもしれない。
街のマップは俺の脳内に入っている。俺が知っている街に紫が送ってくれたからこその知識だな。これで知らない所だったとしてもパンフレットか何かを見て把握はするが。
今回探すのはどちらかと言えば貧相な人、死に際の子供だ。となれば行く場所は自ずと限られてくる。
保護された親元を離れた子供ではいけない。それでは条件を達成できないからだ。保護元すらいない子供でなくては。誘拐に近いのは仕方がない。世間一般からすればこれは神隠しということになるのだから。といっても幻想郷に入れば基本的に誰にも認知されなくなるのだが。
「ルーミア、行くぞ」
「はいはい」
取り敢えず俺の脳内マップを頼りに子供が隠れられそうな場所を探す。警察というのは孤児からすれば怖い存在なのか、保護されない子供というのは警察から逃げていることが多いのだ。
何より生きるために盗みなどをしている子が多く、捕まると思って逃げていることが多い。であれば隠れる場所があるはずである。勿論保護する人達もそういった場所は常日頃見ているだろうから、そんな人たちが知らないような、気づかないような場所を探す必要がある。
ということでここでルーミア(少女バージョン)の出番だ。ルーミアが少女形態になれば子供目線として色んな場所を見る事ができる。適材適所…とは違うかもしれないが、ともかくルーミアに見てもらった方が抜け道などは探しやすい。
「つうわけでルーミア、リボン付けて」
「分かったわ」
そう言ってリボンを付けるルーミア。このリボンは俺が作った物で付けているだけでも効果がある。リボンを外しておくと外の世界でも大人状態で行動ができるが、まあ少女モードの方が力を必要としないから低燃費であるのは言わずもがなである。
ルーミアが少女になったのを確認して出発。ビルの裏路地や隙間、廃屋などを調べていく。ルーミアは闇に溶け込めるようになったので移動がしやすく裏路地などはすぐに調べられるのは利点であった。こうなったのはルーミアの元の封印が解除されたからだが。
そしてその日は街全体の内の三割ほどを調べ終わった。見つけたのは猫とかばかりで子供はいなかったという。まあそう簡単に見つかるはずがない。俺も霊力を探しながら歩いていたが、結果は芳しくなかった。
ルーミアと共に拠点に戻り作戦会議。今度は反対側を調べる。中央の部分は人通りも多く、捜している人がいるという可能性が低いのだ。故に今度は反対側の人が閑散としている場所を調べることにした。
そして次の日。同じように捜す。こちら側は住宅街が多いので比較的交通量も多かったが、誰も住んでいない場所が多かったので、俺が入ると怪しまれるという可能性も踏まえてルーミアに全部入ってもらった。闇で隠れながら移動すれば誰も住んでいない建物の中に入ることくらいはルーミアにとっても容易であったらしく、捜索は結構早い段階で終わった。
しかし未だに見つける事ができないでいる。となれば残るは中央…果たして本当にいるのだろうか。とはいえ相手も移動している。俺たちから逃げているという考えも出来るし見つけられない理由など多くある。
というわけでルーミアと共に中央街へ。ここで見つからなければ少し作戦を考え直す必要があるな。
それとここに来て分かった問題が一つある。それは中央街の人通りが多く、また慣れていないことが祟った症状で…
「ちょっと、定晴、休みましょ…」
ルーミアの人酔いである。
幻想郷にはこれほどまでに人々が密集している場所はない。ルーミアも多少なりとも覚悟はしていたようだが、外の世界の人口密度に敗北してしまったらしい。
探索を中断しルーミアをベンチに座らせる。アルコールによる酔いであれば浄化でなんとかなるのだが、精神的な酔いは本人の自己回復を期待するしかない。何もできないのがもどかしいが、ここは我慢である。
「にしても見つからないわねぇ…」
「まあそう簡単に見つかるもんじゃない」
少し遠くを見ながら喋るルーミア。どうもこの人口密度にだいぶ参っているようだ。
かく言う俺も久しぶりの外の世界に若干気持ち悪くなっている。ルーミアほどではないだろうが、どうやら俺も相当幻想郷に慣れすぎていたようだ。
空をぼんやりと眺めながら考える。
まだ探していないのはどこだろうか。路地裏は結構見た。廃墟…廃ビルなんかも回ってみた。まあ俺が知りうるものだけなので案外奥の方にはまだ未探索の建物があるのかもしれないのだけど。
後は…そういえばここには地下通路があるなんていう噂を聞いたことがある。下水道ではないちゃんとした道だ。だがあくまで噂、本当にあるのかは分からない。
そもそも誰にも見つかっていないということは完全に埋め立てられており誰にも入れなくなっている可能性がある。妖怪のルーミアと能力者の俺なら地面に穴を掘るくらい簡単にできるが、一般人がコンクリートに穴を開けるなんて工事用の道具を使わないと不可能だろう。もしかしたら腕力で開けれる人がいたりするのだろうか。
「………」
「…」
無言の時間が続く。
行けそうだったらルーミアから言ってくるだろうから俺は待っている必要がある。俺が喋らないから機会を逃しているのかとたまにルーミアの方を見るが言おうとしている素振りはない。
ではもう少し考えよう。ルーミアに注意されたように深い思考には入らないように…
この街で人通りが多いのはこの時間帯だ。情報収集には最適だが、今回の場合そこらへんを歩いている人に聞いてわかるような内容ではない。そういった筋の知り合いもいないし…うーん…
…待てよ?そういえばその子たちが行動するのは夜じゃないか?確かに真っ暗の中を歩くのは難しいが、その子たちなら慣れている。それにわざわざ警察に見つかりやすい時間帯に出歩くとは思えない。行動するなら夜じゃないのか。夜ならルーミアを妖怪として多少力が増すし俺も能力を使いやすい。誰にもバレないからな。
俺だってこんな能力を持っているとなれば科学者にどんな実験をされるか分かったものじゃない。俺も警察にはあまり関わりたくない派の人間だ。犯罪を犯しているわけでもないけど…そういや輝剣も家宝の剣も銃刀法違反だって前に言った気がするな。
まあそんなことはいい。作戦を変えよう。
「ルーミア。一度帰るぞ」
「あら。まだ探しきってないわよ?」
「そもそもが間違ってたんだ。夜に探しに出るぞ」
そう言うと若干だがルーミアの目が妖怪の目になった。やはり妖怪として夜というのは興味…というか気分が乗るのだろう。
そして夜、俺たちは行動を開始した。