東方十能力   作:nite

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百三十三話 No data

朝。素早く朝食を終えた俺たちは始業時間を数分過ぎたあたりで役所にやってきた。あまり他の人には聞かれたくないうえ、関係ない人が聞いて心地よい話ではないからだ。

ルーミアも俺も正直言うと死体には慣れている。そもそもルーミアは死体を作る側だから当然といえば当然なのだけど。かく言う俺も死体処理は何度かしたことがある。慣れているとは言ったが何も思わないわけではないが。

水那に教えてもらった情報を元に姉の行方を探る…が、一行にそれらしい情報が見つからない。誰かに引き取られた云々の前にそもそも姉の死体の情報がない。ここにはまだ来ていないのか?

ともかく見つからないと判断した俺たちは役所を後にする。

うーむ…では死体はどこに行ったのか。何かしら悪意ある者若しくは何かしら理由がある警察ではない人が持っていった?可能性はゼロではない。ゼロではないが正直言って低い。もしかして俺たちみたいな、幻想郷以外の所の…ってそれはないか。そんなとこ紫に言われたことないし。

さて…取り敢えず事故があったという場所に向かってみるか。案外遺留品などが残っているかもしれない。

 

「…」

「…ないわね」

 

と思ってきたのだが、見事に何もなかった。警察が片付けてしまったのだろうか。

そもそも姉が轢かれたということは轢いた側もいるということ。轢いた側がきちんとその場に止まり警察に対応した場合は大きく発展せずに死体処理だけされて終わったということになる。なればこれは犯人の死亡として姉の死体は処理されるのだろう。

血痕などは残しておくと周囲の人間に不安を与えてしまうためすぐに処理されて元通りにされることが多い。となれば既にここには特に何も残っていないのか…?

 

「…?」

「ルーミア、どうした」

 

何かにルーミアが気づいた様子。

近付いてルーミアの足元を見る。それはただの石、ただの石なのだが…

 

「なんだこの違和感」

「分かんないわ」

 

なんというか奇妙な感じがする。

落ちているのは道路の脇。街中とはいえ小石などいくらでも落ちているしなんら不思議ではない。注意していなければ気にも留めないだろう。それこそ古明地の方のこいしのように。

だが、なんだか違和感を覚える。どんな違和感なのかと言葉に表すことはできない。というよりなぜこんな違和感を感じているのかすら俺にも、ルーミアにも分かっていない。だが何かがおかしい。

ルーミアが闇を流して石を包む。だがルーミアの顔は未だに不思議そうだ。何も分からなかったらしい。

俺も浄化や輝剣で叩くなどしてみるのだがただの石だ。だが何かがおかしい。それはルーミアと俺の共通認識である。

よく分からないまま石を持ち帰る。これが姉の関連したものなのかも定かではないが、関係がないにしてもどうしても気になってしまう。

石を幻空に入れるでもなく持って帰る。周囲からはどう思われるのだろうか。いや、もし自分が周囲の人物だとして手に石を持っていようが本を持っていようが特に何も思わないだろう。他人が何を持っているかなど目立たない限り気になりはしない。

だがなぜか視線を感じる。いや待て、これ俺に向けられている視線じゃないな。

ちらっとルーミアの方を見る。本人は全く気にしていないようだが、これはルーミアに向けられている視線だ。そのせいで相対的に俺にも一部の視線が向けられているようだ。

まさか先程の闇を操る場面を見られてしまったか。

気になったのでルーミアにすらバレることなく身体強化で聴覚をあげる。聞こえてきたのは…

 

『あの人すごい美人…』

『あれは彼氏か?お前少し声掛けて来いよ』

『あんなの前にしてまともに話せるかよ』

 

…そういやルーミアって子供モードにせよ大人モードにせよ美人だったな。

最近は結構近くにいることが多くて忘れていたが外の世界ではモデルとかしてそうな見た目だ。というか幻想郷の少女は基本的に美人な事が多い。賢者の紫からして気に留めたことは無いが外の世界では噂になるほどの美貌なのだし…なんだろう、幻想郷には女子を綺麗にする魔法でもかかっているのか。

それはともかく変に視線を集めるのは嫌だな。そも俺達はあまり目立つべきではないのである。

 

「ルーミア、こっち」

「どうしたのよ」

 

取り敢えずルーミアを連れて少しそれた裏路地に入る。ビルの隙間と違ってきちんと整備されている道だが、人通りはとても少ない。夜になれば多少飲み屋に入るための客が通るのかもしれないが未だに太陽は頭の上。

俺たちは結構朝早くから行動しているため昼食の少し前って程度の時間である。飲み屋はランチタイムは基本的に営業していない。

さっさと裏路地を進む。特にゆっくり歩く必要はないからな。

あとルーミアは視線のこと、まったく気にしていなかったらしい。というか興味がないと言った感じ。あまり周囲の評価などを気にしているような感じは話していて感じないし誰がなんと思おうと気にしないタイプのようだ。

俺もあまり気にしないけど目立つのは避けたい。仕事柄あまり目立つのはよろしくないのである。まあ宣伝系の依頼の場合は逆に極端に目立つこともあるのだけど。

そして裏路地を進んでいると急に横から誰かが出てきた。

速足ではあったが走っているわけでもないので余裕を持って止まる。こんな時間にこの道を通っているとは…店の支度だろうか。

とその人影を見ると…あれ、背が低い。子供か?

視線を下げる。それは二人組、黒い帽子を被った少女と白い帽子を被った少女。

 

「あれ、蓮子とメリーか?」

「え?……定晴さん?」

「本当だー」

 

今の間は思い出すのにかかった時間だろう。そもそも忘れられた存在だったので思い出すにしても時間がかかる。

秘封倶楽部なるサークルに入っている少女の登場である。

 

 

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