東方十能力   作:nite

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百三十五話 異界

見渡す限り生物の反応はない。

荒廃した土地にどこか違和感のある建造物。昔は人間がいたのだろうか。

 

「すごーい!流石メリーね!」

「見て蓮子、私の知らない物質みたい!」

 

しかしこんな状況だと言うのに秘封倶楽部の二人は焦るどころか楽しんでいる。俺は結構焦っているのだが…二人はこういう経験は俺よりも多いみたいだしいつものこと、で処理できるのだろうか。

転移したのは秘封倶楽部の二人と俺、そしてルーミア。人払いをしていたとはいえある程度近くに他人がいたのだが、その人たちは巻き込まれていないみたいだ。その点を言えば幸運だったと言えよう。

帰るのは…紫を呼べるだろうか。あいつが来れるのなら自由に行き来ができるし結構余裕が持てるのだが。

まあそれに関しては後で調べよう。まずはここの調査だ。もしここに水那の姉が巻き込まれているのだとすれば…例え当時生きていてもここには植物も生えていないので餓死してしまっている可能性が高い。

 

「二人ともーあんまり遠くまで行くなよー!」

「「わかってまーす!」」

 

あの二人の『分かってる』は信用ならんが…目が届く範囲にいればいいか。

俺は周囲を見渡しつつ霊力を広げてこの世界についてわかる範囲で調べる。

地面、石、建築物…そのどれもが俺の知らない物質。植物は…一応地面に微量に存在している。だがこれを食べることは出来ないだろう。

空を見上げる。

太陽は…見えない。あるのかどうかも不明。そもそも昼夜の概念があるのか?太陽は見えないのに肉眼で遠くまで見えるほど明るい。といっても夕方くらいの明るさだが。

どうも単に転移しただけではなさそうだ。まさか星を繋いだ転移なぞ…紫みたいな反則級能力持ちならばまだしもそんな存在がポンポンと現れても困る。事後処理的な意味で。

それはともかく、ここは本当に俺が知らない所のようだな。ルーミアが触れて反応したということは妖怪か…はたまたどこかの誰かが妖怪を捕まえるために設置したトラップか…どのみち厄介なことには変わりない。

それにしてもあんな街中で…妖力を持つ人間など基本的にいないし、いたとしてもそれは純人間ではないだろう。俺も含めてな。

 

「定晴さーん。なんか落ちてます」

「ん?」

 

また特殊な人工物か?この世界にあるものはどれも知らないものだぞ…と思いながら蓮子の足元を見る。

それはお菓子の袋。なぜ一目で分かるのかと言うと、それが俺達の世界のものだったからだ。

これは…ポップコーンだな。俺達が捜している人物か、それとも別の人か。どちらにせよ救出する必要があるだろう。水も何も無い場所だ。食料を奇跡的に持っていたにせよそう長くは生きられまい。

 

「定晴、このポップコーンからどこにいったか分からない?」

「そんな犬みたいなこと出来るわけ…いや待てよ。霊力を辿れば行けるか?」

 

霊力を辿る。

それは強い霊力でないと普通は出来ない。しかし、霊力というのはその人を構成している部分であり言わば分身ともなる存在だ。故に霊力から感情を読むこともできる。

 

『狂気、行けるか?』

『そうだなぁ………生存本能…よし分かった。行ける』

 

流石狂気だ。

狂気はある程度は狂気以外の感情も読めるという。といっても詳しく判断し、また制御することができるのは狂気だけなのだが。どうも生存本能も一定のラインを超えれば死に物狂いと言うように若干の狂気が混じるらしい。

この世界はそもそも通常の世界ではない。俺たちの世界の住人がこの世界に飛ばされて生きようと思えばそれは確かに死に物狂いにもなるだろう。それを狂気は読み取ったのだ。感情の起伏に彼は敏感なのである。

 

「こっちだ」

「流石定晴ね」

 

正真正銘俺の力かと言われたらそうじゃないので少し反応に困るが…まあいい。

秘封倶楽部の二人も連れて狂気の言う通りに進んでいく。未だに生物の反応はない。こんな世界でよく植物は育つことができると思う。勿論十分に育っているとは言えないけども。

進むこと約十分、とうとう前方に人影が見えた。俺たちと同じ方向に歩いているようだ。手には何も持っていない、だがリュックを背負っている。きっとあれに食料などが入っているのだろう。

近付くと相手はすぐに気が付いた。

 

「誰!」

 

そしてこちらに向けるのは銃…銃!?

いやいや待て。何故一般人であると思われる彼女が銃を持っているのだ。まさか軍人か?

流石に銃を向けられると秘封倶楽部の二人も少々焦る。俺も焦る…結界を使えば防げるけど。

彼女から出る圧倒的殺意。俺達は少しの間動くことができなかった。

 

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