東方十能力   作:nite

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百四十三話 突撃こいし隊

地底の説明を幻想郷の住人にしろと言われたら大体の場合地底の入口、旧都、地霊殿が話題に挙がる。どれも言うならば観光名所みたいな所だ。名を挙げない方がおかしいだろう。もう少し詳しく説明するならば旧地獄だとか灼熱地獄跡だとかいう単語も聞こえてくると思われる。

さて、そんな地底だが一応は不可侵条約というのは残っている。そもそも地底の妖怪たちは地上に出たがらないのでそこまで懸念するものでもなかった。地底と地上の境目は間欠泉異変の後もある程度残っているはずだった。

しかし例外もいる。

 

「こいし!?」

「遊びに来たよー!」

 

地霊殿の人々(さとりを除く)である。

こいしは度々地上に遊びに来るし、お燐やお空はたまに博麗神社で動物状態で霊夢と共に日向ぼっこをしているという。なんとも自由な生活をしていると言っても過言ではない。元より地上と地底の仲が悪いため作られたものだし、霊夢が折り合いを付けた結果前よりもコミュニケーションが増えた今ならば条約など必要ないのかもしれないけれど。

さてさて、こいしが遊びに来たことに関してはこの際目を瞑るしかあるまい。だがなぜこいしが俺の所在を知っているのかを問いたださなければなるまい。こいしに直接質問したら…

 

「んー?霊夢に聞いたよー?」

 

…今後の予定を話したのは失敗だっただろうか。

兎も角、こいしが来たからと言って依頼を放り出すわけにはいかない。ここはこいしたちに御退場した頂くとしよう。暫く一緒に生活したのでこいしの性格は分かっている。言葉で言ってもきかないのだ。

 

「ふぎゃ!」

「ふみゃ!」

 

故に物理的に結界を使って分断する。申し訳ないが防音なので何か叫んだところで聞こえない。子供達の意識がいかないようにこちらからこいしたちを見る事もできなくなっている。

少々複雑な結界のせいで霊力消費も多いのだが、授業終わりまでは保つだろう。残存霊力によっては歩いて帰ることにもなりそうだが…とここでルーミアが妖力を流してきた。一応俺の事を気遣ってくれたようだ。

そしてこのまま授業開始。子供達は終始落ち着かないようだったが、その分寝る人はいなかった。

 


 

授業後。慧音に言われた通り机の上にあったプリントを配布し、見送った。人里はそこまで治安が悪い訳ではないので大丈夫だろう。ずっと人里に住んでいる子供達だ。そこら辺は用量も分かっていることだろう。

ルーミアは皆と別れて寺子屋に残った。遊びの約束もチルノの誘いも特に無かったらしいので俺と一緒に帰るつもりらしい。もうすっかり慣れてしまっているが、一応ルーミアも式神になる前、そして式神なって少しの間住んでいた場所がある筈なのだが…もしかして野宿だったのだろうか。妖怪だしあり得る話である。

閑話休題

結界を解く。こいしはどこかへ行ったかと思っていたが、どうもずっとここにいたらしい。こいしはフランと面識があるようだし、ぬえとも仲が良さそうだった。紅魔館は少々遠いけど、命蓮寺は結構…というより人里にあるので目と鼻の先にあるのに行かなかったのか。俺といてもそんなに楽しいことなど無いだろうに。

それでいて俺が構わなかったせいかこいしは隅で蹲って拗ねていた。申し訳ないとは思うが、こちらも仕事なのでね…

 

「こいしー」

「………は〜い」

 

呼びかけると暫くの沈黙の後間延びした声が返ってくる。

それこそ全身で不満を表していますと言わんばかりの態度に少しばかり笑いそうになるが、ここで笑うと本当に許してもらえなくなりそうなので自重。

?…

「…私も申し訳ないとは思ってるけど、せめて中に入れさせて欲しかったなぁ〜…」

 

文句と共になんだか達観したような口調で話すこいし。急に来るのも問題ではあるが、対処方法が雑だったのは俺なのであまり強くは言えない。

しょうがないのでお燐に説明を頼む。

 

「えっと…これを聞いても送り帰さないで欲しいんだけど…」

「つまり送り帰されるようなことなんだな?」

「うにゃぁ…実はさとり様に何も言わずに来たんだよあたいたち」

 

さとりに何も言わず…となるとこのままだと妹思いのさとりが発狂する可能性があるということなので…

送り帰したい。お燐にああ言われてもこれはやはり帰すべきなのではなかろうか。そもそもこいしはまだしもお燐はよくさとりに気付かれずにここまで来れたものだ。こいしの能力は対象をして使うようなものではなかったはずなのでお燐の身のこなしだけでさとりの…サードアイの目を躱してきたということだろう。

 

「というかお燐はこういう時止める立場じゃないのか?」

 

確かにお燐はさとりのペットであり、それはこいしのペットでもあるということ。だがそれはペットが主に従うという意味ではない。

特にお空やらお燐やらは妖怪化して喋ったりなんだりが可能になっている。地霊殿には普通の猫や鳥もいたので全員が全員妖怪化して人型というわけでもないのだろう。

その点を踏まえてもお燐やお空はその意思の元危ないときはこいしやさとりを止める必要がある。従者の努めというものだろうか。咲夜も妖夢も藍も日頃自分たちの主に手を焼いているらしいし、従者は抑止力の一端を担っているのかもしれない。

 

「あたいは…止めたんですけど…こいし様が聞かなくて…一人で行かせるくらいならぁ…なんてぇ…」

 

後ろになるに連れて語気が弱まっていくお燐。

まあこいしは人の話を聞くようなタイプではない。俺は地霊殿の風呂での出来事はまだ忘れていないぞ。さとりがいなかったら俺はあの場でお空とお燐によって消し炭にされていた可能性もあるからな。

お燐が言い訳を続けているとこいしが起きた。

 

「そういうわけで!私は暫くここで過ごします!定晴ー、家泊めてー」

「何がそういうわけで、なんだ。泊める分には構わないが、さとりに連絡はしておくぞ。お燐のこともな」

「…はい」

「えー」

 

お燐は少し諦めている表情だ。帰ってさとりに何をされるのか想像しているのか目にハイライトが無い。

それに対しこいしはいつものテンション。ペットと主は似るとよく聞くが、この場合は主の抑止力になるため反対になったと考えるべきだろうか。

いや、お燐はさとりに似たのだろう。さとりとこいしの性格は対極の位置に存在しているのである。

 

「泊めてくれるのは決定なんだねー?」

「はいはい、泊めてやるから。帰れと言われたらすぐに帰すからな」

 

不満そうなこいし、納得しているお燐。やはり性格が違いすぎる。お燐はさとり似だな。

仕方があるまい。あとでどうにか連絡するとしよう…ルーミアじゃない式神の練習にもなるだろうし。紙を媒体として動かすものだ。

こうして暫くの間居候が増えたのだった。

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