東方十能力   作:nite

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百四十八話 質疑応答

俺たちが家を出る頃にはお燐も地霊殿へと出発していたので、しっかと家の鍵を閉めてから出る。紫とかミキとか、最近だとルーミアも鍵を無視しだしたのであまり幻想郷でも意味はないかもしれないが…鍵を閉めておけば誰かがうっかりで入るのを防ぐことができるし無いよりマシだろう。

俺たち三人は地面と平行に飛んでいく。

妖怪の山の山頂付近にある守矢神社に向かうならば直線での移動も可能だ。だが、周囲に何もない高い空を飛ぶとこの季節だと寒すぎるのだ。ある程度時間はかかるが、そこまでギリギリの出発ではない、というか結構余裕を持って出発したので問題はない。

こいしは飛びながらもうろちょろしている。地上の風景は地底と違うので色々と見てて面白いのだろう。

こいしは地上でも普通に行動できる。相当強い力を持った人物でないとこいしに気付かない(見えないのではなくあくまで気付けない)ので、地上を歩き回るだけならこいし一人で可能だ。

それでも楽しそうに見えるのは、俺やルーミアがいるからだろうか。自惚れでなければいいけど。

 

「お!紅魔館が見える〜!フランちゃ〜ん!」

 

そう言って遠くに見える紅魔館に向かって手を振るこいし。いくら吸血鬼という種族が身体能力の高さを売りにしていたとしてもここで手を振ったところで見えないだろう。

しかしそんなことにはお構いなく手を振るこいし。いつもよりテンションが高いのはこういうところでも顕著に表れるということだろうか。

 

「こいし、こっちだ」

「ん?あ、ごめーん」

 

このままだとずっと振ってそうだったので声をかけて先に進む。

妖怪の山の登山道に入っても終始こいしはふらふらしていた。どうやら妖怪の山の山頂付近にはあまり近寄らないらしい。

尚この正規の登山道は天狗を含めて妖怪の山に住む妖怪達のテリトリーから少し離れた場所に作られており、この道は人里の人間も通ることができる。一応天狗の哨戒内ではあるので危険なことにはならない…はず。

ともかくその登山道を進むこと約十分。やっと守矢神社が見えてきた。前回は徒歩かつ萃香の案内がいたので色々と鬼の道楽にも付き合わされたのだが、今回は全編を通して飛行で進んだので誰一人危ない目にあうことなくここまでたどり着くことができた。途中で分かりにくい分岐路もなかったし、守矢神社の布教の熱心さ故か等間隔に案内看板が置かれたいたので迷う危険性もなかった。それでも参拝客が少ないのはやはり立地なのだろう。

 

「お、来ましたねー。定晴さん。それにお二人も」

「文、二人も俺の話を聞きたいっていうんだけど取材に同席してもよかったか?」

「私の取材の邪魔さえしてくれなければ大丈夫ですよ」

 

二人を追い返す方が面倒だと判断したのかすぐに返事はもらえた。

文は人間に対しても友好的な妖怪だと本で読んだことがある。新聞記者として妖怪だけでなく人間に対してもきちんと対応することが大切だと考えているのか、妖怪にも人間にもその対応は変わりない。文に連れられ奥に入ると早苗、諏訪子、神奈子の三人が円卓を囲むように座って待っていた。

 

「こ、こんにちは!定晴さん!」

「定晴いらっしゃ~い」

「お茶くらいしか出せないけどいらっしゃい」

 

三者三様の挨拶をしてくる。早苗が緊張しているように見えるのはやはりこれから行われるのが取材だからだろうか。

文は役者は揃ったと言わんばかりの表情をして俺の挨拶も待たずに話し始めた。

 

「今日は外の世界について取材をしたいと思います。一度早苗さんには聞いたことがありますが、定晴さんというもう一人の外来人についてどうやら話があると風の噂に聞いたので今回取材をさせていただこうと思いました。一応神の二柱にも一緒に聞いてもらおうと思います。本日はよろしくおねがいします」

 

前回俺が宴会で文に取材された時とは丁寧さが違う。それについて文句を言うわけではないが、神にも同席してもらってるっていうのが文にも緊張させているのかもしれない。この二柱…というか神奈子には早苗と話しているだけで吹き飛ばされた経験があるので、変なことをすると神奈子から御柱が飛んでくることを警戒しているのかもしれない。

 

「それでは早速…早苗さんと定晴さんはどういった関係なのですか?」

「友人だ」

「へ!?え、あ、友人です…」

 

なぜそこで早苗が落ち込むのか。

文は短くメモ帳にペンでスラスラと何かをメモした後、次の質問をかけてきた。一問一答形式ならこちらも回答しやすいというものだ。

 

「二人は外の世界で会ったことがあるんですよね?それはどういった出会いだったのですか?」

 

早速、と言える質問だな。多分文はそこらへんを上手い具合に脚色してゴシップ記事のようにしたいのだろう。【文々。新聞】でもそういった感じの記事を見かけるのでそれに騙される人もそうそういないとは思うが。尚新聞は週刊を取っているのではなく、人里の本屋で気まぐれに買って読んでいるに過ぎない。

 

「出会った時の話は俺も早苗に言われるまで忘れていたんだが、俺が外の世界で何でも屋として依頼を受けていた時に早苗が俺の退治対象に襲われていたことがあったんだ。それを助けたってだけで特に面白い話はないぞ?」

「ふーむ…早苗さんからは何かありますか?」

「えっと、概ね同じ感じです。強いて言えば定晴さんの名前は名刺が落ちてたから知ったのでその後はあまり接点が無かったってだけですかね」

 

文が少々長めの文章をメモ帳に書き連ねている。この短い話の中に何を見つけたのか知らないが、文章量はページ一枚を超えたらしい。

一通りメモをしたら文は二柱に向かって質問を投げかけた。

 

「この話はお二人は知っていたんですか?」

「んー、確かに当時妖怪に襲われた後はあったのに泣いてる様子もなかったから変だとは思ったけどそういう話をされたのは幻想郷で定晴に会ってからだね~」

 

諏訪子が若干ゆったりとした口調で文の質問に答える。

妖怪に襲われたりしたら普通言うものだが…当時既に早苗は神社で風祝をしていたから言わなくても分かるだろうみたいな風に考えていたのかもしれない。妖怪という存在を知っている立場からすれば妖怪に襲われるのもそこまで驚くに値するものではない。

 

「なるほどなるほど…ではお次に、外の世界の文化について…」

 

文の質問はそこから外の世界の一般的な話になった。

早苗よりも俺の方が年上なので俺の方が若干古い話になったので早苗やこいし達は楽しそうに聞いていた。幻想郷に流れ着く外の世界のものは基本的には外の世界で忘れられた物なので、俺が子供の頃に遊んでいたものなどの一部は幻想郷にも流れ着いているらしいことが分かった。

それにしてもやはり文の新聞記者としての実力というか、姿勢というのは見習うべき部分もあるな。俺は誰にでも分け隔てなく接してはいるが、丁寧さで言うと全く持って足りない。なにせ指摘されるまでは敬語を使わないのだから。ちなみに言うとこれは癖だし、正直なところ直すつもりはない。

和やかに進む質疑応答。時折それに因んだエピソードなども含めつつ早苗と共に答えていく。そしてその空気は最後に崩れ去ることになる。

 

「それでは最後の質問です。定晴さん…あなたは何者なのですか?」

 

今までの空気は何だったのか。

文の今までとは違う声色と共に聞かれた質問はルーミアたちも含めて全員の意識を俺に向けさせたのだった。

 

 




年内最後の投稿となります。既に最後まで物語の構想は練っておりまして、その間にどれくらい私の書きたい小話や日常系を挟めるかを考えながら書いております。
今年は去年よりも投稿数を二倍くらいにして執筆してきました。今年もありがとうございましたm(_ _)m
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