東方十能力   作:nite

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくおねがいします。


百四十九話 温かいうどん

俺が何者か…ね。

「俺は人間だぞ」

「それは知ってます!定晴さんの生まれや成長過程を聞いているんです。定晴さんの生態は普通の人間のそれではありません!」

 

まあそうだろうな。俺はどちらかと言えば妖夢やミキや妖怪たちの成長過程の方が気になるが、だがまあ周囲からすれば俺も奇怪なのだろう。

だが、ここで正直に話す必要はない。これは誰にも言えないのだ。ルーミアとかであってもな。

 

「それは秘匿情報だ。知りたいのなら…ミキにでも聞くんだな」

「つまり無理ってことですね!あの人は会おうと思って会えるわけじゃないんですよ!」

 

まあそういうことだ。俺だってミキと任意で会うことなど出来ないのだから文が俺の人生を知ることは無い。少なくとも今は。

このことは心の奥底にあるのでさとりでも能力を強くしなければ見る事も出来ないだろう。個人的にさとりに知ってほしくはないのだけど。

 

「というか俺が何者か、なんて本人に聞いたところで分かるわけ無いだろ。文、逆に聞くけどお前は何者だ?」

「っ…ええ、分かりました。取材はこれで終わりです。ありがとうございました」

 

文が不満を露わにしつつも守矢神社を去っていった。これから取材した内容を整理しなおして記事にするのだろう。何が書かれるのか分からないし一応今回のは人里で買っておくとしよう。

文が去った後、早苗が俺の方に乗り出してきた。

 

「なぜさっきの質問をはぐらかしたんですか?」

「はぐらかした…どちらかと言えば答えられなかったと言った方が正しい」

 

俺の人生を説明する分には簡単だ。普通の人が成長過程を説明するのとなんら変わりはない。

問題は俺も俺の能力の全てを知らないことだ。パチュリーに魔術適正を調べてもらってから初めて知ったこともあるのだし、俺の能力は未だに謎が多い。正直なところ狂気なんて謎の塊だ。

 

『おい』

『本当のことだろ』

 

それにこの十の能力だって、正しく言うならば十の力と言った方がいいのだ。能力と力の違いは何かと言われたら若干困るのだが、実際そうなのだから仕方がない。

 

「まあまあ早苗。こいつは…定晴は私達神からしても中々奇妙なもんさ」

「神奈子様がそういうのなら…」

 

俺が説明する前に神奈子によって態勢を戻した早苗。

沈黙が流れる…とここでこいしが声を発した。

 

「昼ごはん食べよ!」

「あ、もうそんな時間なんですか。定晴さん、折角なので食べていってください!こいしちゃん達の分も作るからねー」

「わーい!」

 

取材を始めた時から結構時間が経っている。思い出やらなんやらを話していたらやはりそれなりに時間がかかってしまうな。

 

「早苗、俺も手伝うよ」

「え、いや、私が一人で…」

「いつもより人数が多いんだろ。一応宴会用の大人数向け料理とかも作ったことあるし、手伝ったほうが良いだろ。もてなしされるだけっていうのは若干居心地が悪い」

「うーん…分かりました。こちらです」

 

早苗の後を追って俺も台所へと向かった。

 


 

こうして残ったのは四人。神二人と妖怪二人である。

 

「うーん、私が先に訊いても良いかな神奈子」

「はいはい、好きにしな」

「はーい…んじゃあまず古明地こいし。何で地上にいるの?」

 

諏訪子からの鋭い質問。神として無意識か意識的か、威圧感がありこいしに緊張を与える。

 

「遊びにきただけだよー」

「ふーん、まあ最近は不可侵条約もよく分からないものになってるし、神奈子が地下センターなんて作ってるからそれに関しては私たちもとやかく言えないや」

 

こいしは何とか声を出し、諏訪子を納得させることができた。

定晴は知らないことだが、過去の間欠泉異変の時にこの二柱は地霊殿の地獄鴉である空の核融合炉のエネルギーを新エネルギーにしようと専用の施設を作っているのだ。

諏訪子は次にルーミアに向いた。

 

「んじゃ次、君はルーミアとか言ったっけ?妖力の質が随分と変わったね。しかも定晴と力で繋がっていると見える。何があった?」

 

神というのは名ばかりだけではない。例えそれが専門外のものだとしても力の繋がりや広がりなどは巫女よりもよく分かる。これは諏訪子だけでなく神奈子も感じて気になっていたものだ。

 

「うーん…繋がりはあるよ。妖力の質も変わった。でもこれは私が勝手に話していいものじゃないから。後で定晴に聞いてよ」

「ふーん、これはそこの妖怪にも聞かせてよかったの?」

「こいしにはもう話してるから」

 

尚既にこいしに話すことになった出来事はルーミアの中で恥ずかしい記憶となっている。こればかりはルーミアを出し抜いたこいしが一枚上手だったと言えよう。

 

「まあいいや。いつか定晴に訊けばいいことだしね。ご飯ができるまで時間かかるだろうし本でも読む?そこに本が置いてあるよ」

 

神の威圧感が消え失せ見た目に相応な口調と雰囲気に変わった。このようなオンオフの切り替えが素早く的確にできるのはやはり神としてもそれなりに力があるからである。ミシャグジさまの力は半端なものではないのである。

 


 

「はーい、皆さん。お昼ご飯ができましたよ」

「意外に早かったね」

「寒いですし温かいうどんです!」

 

早苗と一緒に作ったのはうどんだ。折角ならと天ぷらを揚げてうどんと一緒に食べることができるようにしてみた。

ついでに卵も持ってきている。月見うどんにしたい人はどうぞ、という配慮だ。

 

「あ、そうだ定晴」

「なんだ諏訪子?」

「今日じゃなくてもいいから、その妖怪との話をさせてね」

 

諏訪子が首の動きで示したのはルーミアだ。やはり神は式神の繋がりを見分けることくらい造作でもなかったようだ。

ルーミアもルーミアで勝手に話さないと決めているのか俺の許可が下りるまでは勘づかれても説明しないスタンスにしているようなので、俺達が料理をしている間に何かしらひと悶着あったのだろう。険悪な雰囲気になっていないのであまり心配はしていない。

俺たちはうどんを食べた。結構美味しかったので、早苗に麺をどこで買っているのかを聞いた。温かいうどんは標高のせいもあってか一段と寒い守矢神社で冷えた体に染み渡った。

 

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