「お兄様ー!」
フランが突っ込んできた。いつものように身体強化を全身にかけて受け止める。
「なんでフランがいるんだ?」
「折角こいしちゃんもいるしお兄様の家に遊びに行きたいなーって」
理由になっていないような気もするが…
兎も角フランがここにいるという状況で最初に確認することがある。こいしが地上に遊びに来たときも同じような確認をしたが…
「フラン、レミリアや咲夜に許可は貰ったな?」
「美鈴に言ってきたよー。寝てたけど」
つまりは無許可。
何故こいしといいフランといい責任者に言わずに遊びに行くのだろうか。さとりやレミリアに同情の念を抱かざるを得ない。なにせ知らない間に妹がどこかに出かけているのだから。しかも二人とも少々厄介事を持っているというのも頭を悩ませるに値する。
責めるのは違うとは思うが…
「ルーミア?」
「……知らない」
そっぽを向いた。確信犯だな。
まあルーミアには後で話すとして咲夜かレミリアのどちらかに話をしておかなければならないだろう。美鈴は多分許可とか出せる立場じゃないというか勝手に許可出したら咲夜とかに怒られる立場だろうし。
「はぁ…仕方がない。ルーミア、紅魔館に伝言してもらえるか」
「…了解なのだー」
仕方がないから今日は晩御飯をこっちで食べるから晩御飯の後に帰すという旨を伝える。
フランは吸血鬼だし夜の行動でも問題ないだろう。昼間よりも自由に動けるので夜間に帰す方が楽なのである。
「えー!私ここで一泊したいー。というかこいしちゃんがいるなら私もここでー!」
「ダメだ。こいしは住んでいる所が少々面倒な所だから良いがフランはすぐだろう」
不貞腐れるフラン。そんな風にしょぼくれられても困るのだが仕方がない。癇癪を起して暴れられると大変なのでルーミアに交渉をしてもらうとしよう。レミリアはさとりよりもシスコン気質な部分があるからどこまで大丈夫なのかははっきりさせておかなければな。
「俺は晩御飯を作って待ってるからルーミア頼んだぞ」
「はーい」
ルーミアなら大丈夫だろう。今は本人の意志で力の封印は解けるわけだし。俺が式神の繋がりを使ってルーミアの制限をかけているとは言っても暴走しないようにという抑制なだけなので俺と最初に戦った時くらいのことは可能な筈だ。
というわけで俺は料理を開始するとしよう。フランが来ると先に言っておけば色々他の準備もしたというのに…せめて俺には伝えてほしかったもんだ。
冷蔵庫の中などを確認して余っているものが無いかを探していると奥からフランとこいしの会話が聞こえてきた。
「そういえば私お兄様の家に来るの初めてなんだよねー」
「そうなんだ。意外」
お兄様の家でこいしちゃんと雑談するなんてすごい新鮮。そもそもこいしちゃんは毎度能力を使ってこっそり地上に来ているからそこまで頻繁に会える相手でもないよいうのが正直なところだ。
ルーミアちゃんには悪いことをしてしまった。美鈴が寝ているのが悪いんだよ!それにお姉さまならお兄様の所で夕食を食べることを許可してくれるに違いない。私の狂気の騒動のおかげでお姉さまもお兄様にはそれなりに信頼をしているようだし。ただ一泊する要求が通るか分からない、お兄様の…異性の家に泊まるのは流石に許してくれないかもしれない。
「そういえばこいしちゃんの所にお兄様って泊った事あるんだよね?」
「そうだよー数か月前にね。一緒にお風呂にも入ったよー」
え?お兄様とこいしちゃんが?こ、混浴!?
「それは俺が誰も入ってないなと確認したのにお前が返事をしなかったからじゃないか。危うくお空たちに消し炭にされるところだったんだからな」
「えへへー、ごめんね!」
あー吃驚した。
そうだよね。お兄様はそういうモラルの部分はきちんとしてくれるから混浴なんて相当な事情が無いとしないよね。
お空っていうのはこいしちゃんの話だと確か核融合の力を持ってる鳥って聞いている。お兄様だから核の力に負けるとは思わないけど。だってあの賢者にも勝てるっていう話を魔理沙から聞いたことがある。私も魔理沙もそれを見たわけじゃないから噂の域をすぎないけど、お兄様は結構強いし実際本当なことな気もする。
でも能力にも相性があるからなー。妖力とかそういう部分だとルーミアちゃんより断然強いけど闇の中に隠れられると姿が見えなくてキュッって出来ないからいつもの戦い方ができない。弱点が見えなければ私の能力は通用しないのだ。
「そうそう、地底での定晴は凄かったんだよ!捕まった私とチルノちゃんを逃がして相手が撃ってきたレーザーをかき消したの!」
うーん、こいしちゃんは私と違って気になる所も全部すっとばして話すからツッコミたい所は色々あるけど…この際捕まっていた云々の話はスルーしておくとしよう。お兄様は多分だけど誰かを守りながらの戦い方は苦手なんだと思うし、不覚を取られてこいしちゃんが捕まってしまうこともあるだろう。
それよりもレーザーをかき消した方が気になる。パチュリーも多分だけど食いつく内容だと思う。
「ねーねー、何であれについて教えてくれないのー?」
「あれは基本的に秘密だからだ。そんなに聞きたければ紫にでも聞くんだな」
「つまり無理じゃん!」
こいしちゃんも詳しいことは知らないみたいだ。
私も今まで色んな本を読んできて核とかのことは知っているけどレーザーをかき消す力は知らない。妖力で練り上げたレーザーであればお兄様でも浄化の力をフルパワーで使えば私の狂気と同じように消せるのかもしれないけど…お兄様の浄化は反動がある。例えば妖力の壁で潰された場合お兄様の浄化の力では浄化する前に潰されてしまう。
うーん、十個の力全部を教えてもらったわけじゃないから私も知らない力によるものなのかもしれない。
「むー…定晴、夜ごはん何ー?」
「寒いから鍋だ。フランが来ることは予定してなかったから少し具材を増やすけどな」
お兄様には先に言っておくべきだったかな。でもお兄様は魔法の森に行ってるって話だったし連絡できなかった!つまり私に非はない!…私が急にここに来たことが問題だと言われたら私に十割で非があるんだけどね。
でもまあそれでもお兄様は私を責めるわけでもなく受け入れてくれるから好きだなー。霊夢と似てる部分があるような気もする。霊夢もなんだかんだ言って無理に追い払われたりしないから優しい。博麗の巫女としての役割の面からすれば妖怪と人間の境界を一番曖昧にしているのは問題なのだろうけど。
その後も色々と話してたらルーミアちゃんが帰ってきた。
「ただいまなのだー。夜ごはんの許可は貰ったぞー」
「ああ、ありがとうルーミア」
「一泊は…一泊だけならいいって言ってたぞー。その代わり明日の夕方までには帰してって言ってたのだ」
つまり今日と明日の夕方までは皆と一緒!それは朗報だ。
やはりお姉さまもお兄様にはある程度信頼しているからだろう。この許可もその証明と言える。
お兄様が困ったような顔をしているのは何でだろう。私と一緒にいれるんだから嬉しがってほしいところだ。勿論手を上げて喜ぶ…なんていうのは私が急に押しかけた時点で無理だったんだろうけど。
「そろそろできるからお前たち席に座れー」
「「「はーい」」」
ルーミアちゃんは今お兄様の所に居候してるって言ってたしこいしちゃんも一泊してるから二人の動きは早かった。
何でルーミアちゃんが居候しているのかは知らないけど他者の色々には深く追求しちゃだめってお姉さまも言っていたし気にしないことにしよう。
「「「いただきまーす」」」
「召し上がれ」
紅魔館ではあまり鍋とかは食べる機会がないからこうして皆で鍋を囲んで食べるっていうのはそれだけでちょっと楽しい。
後でこいしちゃんの部屋に突撃するとしよう…の前にお風呂。
…こいしちゃんが一緒に入ったなら私も入っていいよね?