東方十能力   作:nite

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百五十五話 人間友好度

こいしを立たせてあげて次はフランに向く。

 

「それでフランは何か方法思いついたか?」

「…またどこかの夜にやりあおうね!」

 

思いつかなかったのだろう。だがまあいつかするという約束を取り付けたのでその時にフランとは戦うとしよう。

多分こいしは起きたらもう一回…いや、もう何回も再戦を希望するだろうから今の内に休んでおくことにしよう。俺とて人間だし、再生の力も体力回復に使うことはできない。何だかんだ言っても霊力がばかにならないからな。

 

「にしてもお兄様はいつの間にスペカを増やしているのかしら?」

「あー、作りたいと思ったときに」

 

そもスペカは言うてただの紙切れでしかない。そこに名前を書いて弾幕ごっこの時に宣言することで決闘になるのだ。

だが俺は自分の弾幕など覚えてられないし、スペカに予めある程度の霊力を込めている。そうすることで発動もスムーズになるのだ。連続で何度も使えないという欠点はあるものの色々と俺にとっては都合のいいように作っている。

こんな弾幕面白そうだなと思ったときに作っているが、作ろうと思って結局作ってないスペカも何個もある。

ただ剣術系のスペカは例外で、攻める弾幕…というか技なので霊力の込めようがないためこればかりは覚えている。大体はいつもの剣技に名前を付けているだけなので忘れることはそうそうない。

「でも定晴の技はどうにも弾幕ごっこ向きじゃないのだー」

 

そう言うのはルーミア。

一応申し訳程度の小弾は撃っているが、確かに弾幕ごっこ向きではない。何せ元より殺傷能力がある技を敢えて殺傷性を無くして弾幕ごっこに落とし込んでいるだけなので閃光【一】なんて攻撃性能しかなく弾幕とすら呼べない。斬った跡には弾を残しているが、そもそもこの技は奇襲用なのだ。先に宣言する、回避不能のものは禁止という弾幕ごっこのルールがあるため先に宣言し回避不能ではないだろうという意味でしかない。

 

「やっぱりお兄様には弾幕ごっこより普通の殺し合いの方が向いてるんだろうね」

「やっぱりってなんだよ」

「え?もしよかったら弾幕ごっこじゃない殺し合い、やってもいいかなって思っただけ」

 

そう言って微笑むフラン。だがその笑みは若干狂気地味ているような気がして…大丈夫だよな?狂気が何も言わないから突っ込まないぞ?

 

「むにゃ…は!定晴、もう一戦!」

 

こいしが起きて予想通り再戦を希望してきた。

こいしとチルノは根の部分では全く違うが、表面上はとても似ているので扱いやすさで言うとフランよりかは扱いやすい。弾幕ごっこに負けた後再戦を希望してくるところもチルノと同じだ。

 

「連戦で大丈夫か?」

「そんなこと言ったら定晴だって連戦だし!ちょっと痛むけど問題なし」

「問題あり、休め」

 

こいしを強制的に家の前に座らせる。

この時期は木陰だと寒いので日が当たる場所で休んでもらった方がいいという判断だ。こいしは不満そうにしているが致し方あるまい。変に怪我とかされてしまうとさとりに怒られてしまうしお燐達に殺されてしまう。

 

「まあまあこいしちゃん。私と話しましょ?」

「はーい」

 

フランがいい感じに宥めてくれた。ナイスフォローである。

俺とルーミアも会話に参加して雑談していたら誰かが近付く気配がして立ち上がる。

 

「おや、珍しいと思ったが本当に珍しい。吸血鬼の妹に地底の妹、それに闇の妖怪か。どういうパーティーだい定晴?」

「霖之助!?」

 

いつも香霖堂の中で引き篭もり出掛けたかと思えば漂着物探しをしているという森近霖之助がこんな所に現れた。いつもの服装で歩いてきたようで、手にはビニール袋をぶら下げている。袋も漂着物だろうか。

 

「僕は博麗神社に服を届けに行くんだ」

 

そう言って霖之助が袋から出したのは紅い着物。巫女服ではないようだが色からして霊夢用であることは一目瞭然だ。

霖之助はぐるりと俺の周囲の妖怪たちを見渡して再度俺に尋ねる。

 

「それで、これは何の集まりだい」

「地底からこいしが来たから弾幕ごっこをしていたんだ残りの二人は見てただけだよ」

 

俺がそう言うと霖之助は思案顔になる。霖之助は考え事をしているときの表情がわかりやすい。数秒間考えた上で俺に更に質問をぶつけてきた。

 

「どうやって仲良くなったんだい。吸血鬼の妹はそれはそれは恐ろしくあらゆる物を破壊して楽しみ、さとり妖怪の妹は無意識で様々な所に行き正体不明とまで言われ、闇妖怪は日常的に人間を襲い誰かと一緒であることなど殆ど無い…そして人間友好度は皆無、極低、低だ。勿論稗田家の調査が完全に正しいとは思わないがそれでもある程度に参考とすべき値であると思っている。定晴は強いから何ともないだろうがどうして仲良く出来ているのかは僕としては興味がある」

 

霖之助が少々早口気味に言う。

まあ確かに三人共に人間友好度の面だとそこまで高くないのかもしれない。稗田家のってことは人里に住んでる阿求のとこで書かれてる幻想郷縁起の内容のことを言っているのだろう。

幻想郷縁起の実物を読んだことは生憎無いのだが、書いてある内容は実際に本人に聞いたりして書かれた正確なものらしく天狗たちの新聞とは全然違うらしい。そこには人間友好度なる項目があり、阿求の定めたものではあるがある程度の指標になることは確かだろう。

だが…

 

「詳しい内容は省くが今の所三人に危険な部分が出ないようにしている。強いていうならずっと危ないが俺は問題なく生活できてる。ま、危険って言ったってフランやこいしがレミリアやさとりを吹き飛ばすわけではないしルーミアだって妖精に混じって遊ぶことがあるってことだ」

「つまり定晴の能力によって三人に何らかの対処をしている。また友好度が低いとは言え姉もいるし仲良くなればある程度は安全といったところか。そう言えば紅魔館のメイドがたまに来るけど彼女は人間だったね。そういうことか…」

 

察しの良い友人とは時にすごくありがたい。

霖之助はまたも数秒考えた後顔を上げて話しかけてきた。

 

「うん、まあ霊夢たちも同じように妖怪と仲良くしてる様子はあるし何事も例外はあるってことか。ありがとう参考になった。それでは僕はこれで…」

 

そう言って霖之助は博麗神社の方へ歩いていった。あいつも半人半妖だし飛ぼうと思えば飛べると思うのだが…いや飛べないのかもしれない。飛びたくないだけかもしれないが。

休憩もいいところだし続きをしようと後ろを振り向くと三人とも何か微妙な表情をしていた。

 

「どうしたお前ら」

「いや、その…」

「なんでも…」

「…」

 

なんだか様子がおかしい。俺と霖之助の会話の中で何か思うところがあったのだろうか。

三人を代表してルーミアが話し始めた。

 

「私達の人間友好度が低いのは私達も承知の上だしそもそもそういう妖怪だからそれはあまり気にしていないんだけど、やっぱそれって定晴たち人間から見れば変なのかなーって…」

 

ルーミアが何を気にしているのかが分からない。それこそ今更だし霖之助が言った通り霊夢は萃香やら針妙丸やら色々と神社で寝泊まりさせているし咲夜も紅魔館で働いている。俺が妖怪といたところでそれと何ら変わらないような気がするのだけど…

 

「…霊夢は立場上人間側であることがはっきりしてる。咲夜は逆に主に仕える者として妖怪側であるんだと思う。でも定晴は、定晴はどちら側かはっきりしてない。それって両方から敵視されることになるんじゃないかなって…私達みたいに危険な妖怪といえば人間からすれば妖怪側なのだと思われるだろうし、人里で色々していたら妖怪から人間側だと思われるかもしれない。それって両者から敵対されて定晴一人に…」

「馬鹿かルーミア」

「はえ?」

 

ルーミアが変な声を出す。

 

「俺は基本的には人間側だ。だが俺が三人と遊んでいるところを見て人間側が敵対するんだったらそれはそれで害をなしてきた奴に対抗するだけだ。誰がなんと言おうとそいつらの勝手だし、妖怪と共存してもいる幻想郷では慣れてるやつも多いだろう。それでも俺と敵対して襲ってくるんだとしたら…」

 

その時は幻想郷を去る。だがそれを言葉にすることはしなかった。

俺の話を聞いてフランが不安そうな声を出した。

 

「お兄様は迷惑じゃない?」

「ああ勿論だ。敵対してくる奴らとお前らは別だよ」

「…定晴は強いね。私達は一部の人間の影響で人間全部を恐れて地底に逃げたのに。そこをすっぱり切れるのは凄いと思う」

 

そう言うのはこいし。

地底の妖怪達は人間から逃げるために地底に移り住んだと言われている。当時も妖怪と分け隔てなく生きる人間、聖のような人もいたことだろう。だが一部の…その当時は大多数だっただろうが…人間によって皆人間に対して恐怖心を持ってしまった。そのせいで今でも地底には人間と絶対関わりたくない妖怪も多くいるという。

 

「だがまあそんなことを話しても仕方ねえよ。今はそんなこと起きてないしな。三人とも人間に対して思うところがあるのだろうが俺は気にしないからお前らも気にすんな」

 

しばしの沈黙。そして…

 

「…悩んでも仕方ない!定晴続き!」

「はいはい」

 

こいしが吹っ切るように声をあげて弾幕ごっこの続きを促した。

三人とも人間との色々はあることだろう。俺はそこに関わることは出来ない。だが式神のルーミアにだけはある程度の理解をしてもらっていた方がいいだろう。俺はそう決めて地面を蹴った。

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