結局その後一時間ほど居座ってしまった。
まだ遅い時間というわけではないので大丈夫ではあるが、日帰り…というか元々こいしの送迎だけのはずだったので遅くなるとルーミアに心配されるかもしれない。なので俺は地上に戻ることにした。
「本当にありがとう御座いました。あと御迷惑をおかけしました」
「気にするなさとり。こいしが遊びに来るだけなら喜ぶやつも多いからな」
流石に宿泊するのは初めてだったろうが、今までも勝手に地上に来てフランと遊んでいたりするので出てくるだけならば問題はなかったりする。
とここでさとりは俺が避けていたことを聞いてきた。
「そう言えば定晴さん、ルーミアさんに対して何とも言えぬような感情が…何があったのですか?」
…
「定晴さん?」
…
「…定晴さんは心を無にするのも得意なんですね」
「すまないがこれは秘密だ」
よく考える癖があると言われるが、別に考えてないと死ぬわけでもないので心を無にしておくことも余裕だ。
結局さとりは俺の心を読むことは出来ず、俺は帰る準備が整った。
「それじゃまたなこいし」
「…うん」
どうにもこいしの元気が無い。まあ仕方の無いことかもしれないが。だがずっと地上にいるわけにもいかないのは事実。こいしのためにも今日はここで退くとする。
さとりからは次こいしが地上に行った時も同じように連絡をしてほしいと頼まれている。今度も同じ対応をさとりがするかは分からないが、所在不明よりよっぽどマシだ。こいし誘拐事件は俺とさとりの中で根付いてしまっている。
「…定晴!」
「ん?」
こいしが俺の名前を呼ぶ。
そして俺が振り返ると同時にこいしが抱きついてきた。
「……またね」
「おう」
こいしの頭を撫でるとこいしは満足したのかさとりの元に戻っていった。今生の別れというわけでもなかろうに。
「また地霊殿に泊まりに来てねー!」
こいしの元気が戻ったし大丈夫そうだな。
俺は地を蹴り来たときと同じ穴から俺がいるべき地上へと戻った。
なんだか少しニヤついてしまう。まさかこいしが大胆な行動をするなんて。
「こいし、最後のは…」
「無意識だもーん。へへへ…」
そう言いつつも顔を赤らめながら笑うこいし。どうも地上で心境の変化があったようだ。定晴さんが困惑していたので想いを伝えたってわけではないだろうが、ある程度こいしがこいし自身の気持ちに気付く原因があったようである。
最初、地霊殿で寝泊まりしていた定晴さんを送った時は自覚無く泣いてしまっていたこいしが今や抱きつくまでに至っている。相当地上で面白いことでもあったに違いない。
人間嫌いが集まる地底で人間である定晴さんのことを異性として気になっているこいしは地底からすれば異常にも見えるだろう。確かに定晴さんは人間としてありふれつつも達観しているので良い人だとは思うが…流石に妹の恋敵になるつもりはないし私はどうしても人間のことを異性として意識することは出来そうにない。元より心が読めるので恋なんてしたところで面白くもないが。
「ほら、入るわよこいし。もっと地上での思い出を聞かせて?」
「うん」
こいしを連れ立って歩く。
私と違ってこころを閉ざしてしまった妹。私でも心が読めない妹。それでいて人間に恋をした妹。私とは正反対。
恋がしたいわけじゃない…
でも少しだけ羨ましいと思うのは、勝手だろうか。
地上に戻ってきた。地底もどういうわけか全体的に明るいのだが、やはり天の光とは全く違う。地底での経験があると植物が求めるのもなんとなく分かるというものだ。
「おかえり〜」
博麗神社にもう一度よると掃除を終えた霊夢、あうん、萃香の三人がまったりお茶を飲んでいた。いや、萃香が飲んでいるのは酒だな。
地底から戻ってきた俺を見て萃香が呟く。
「私もちょくちょく地底に降りて勇儀たち鬼と酒飲むんだけどさ、若干遠いのがネックだよねぇ〜瞬間移動の妖術とかないのかねぇ〜」
「あんたは霧になって移動するから比較的楽でしょ」
そして霊夢にツッコまれた。
そう言えば萃香は能力で霧になるまで細かくなったり、逆に凄く大きくなったり出来るんだったな。霧になるってどういう感覚なのかは少し気になる。
「定晴さんもお茶飲む?あうんが何処からか貰ってきたらしいのよね」
「いや、さっきも地霊殿で雑談ついでに頂いてきたから遠慮する。んじゃまたな」
霊夢の誘いを断り家に帰る。霊夢がお茶に誘うなど中々無いことだが、地底でも結構飲んでしまったので喉は乾いていない。
博麗神社から家は結構近いのですぐに到着した。
「おかえりご主人様」
「おう。家に二人っきりってのは久し振りだな」
こいしが一週間泊まり、フランも一泊していったこの家で俺とルーミアの二人しかいないというのは一週間振りだ。こいしの側には必ず俺かルーミアがいたしこいしの遊びに付き合うために大方外に出ていた。こうやって家でまったりというのもまた久し振りなのであった。
「もう夕方だけど…買い物にでも行く?」
「いや、夕飯の材料は足りてる。ルーミアもこいしと遊んで疲れただろ。休んどけ」
俺がそう言うとルーミアは起こしていた体をソファに倒した。やはりルーミアも多少なりとも疲れていたようだ。
「今日はシチューだ」
「分かったー」
ルーミアはそう返事したら睡魔に負けたようだ。背もたれで隠れて見えないがその裏から寝息が聞こえる。
俺はそれを聞きながら夕飯の準備を始めた。こいしとの一週間はこれにて終わったのだった。
この章はこれにて終了です。次章の予告をするならば…
「またお前らか!本当に数多いな!」
「それじゃうちの子は渡せないね」
「ご主人様!待って!」
大体こんな感じです