私がアミュレットを、魔理沙が魔法弾を撃ちだした。
私のアミュレットは追尾機能がある。しかしその分威力に劣るという点がある。逆に魔理沙の魔法弾は真っすぐにしか飛ばないけどその分威力が高い。私と魔理沙が組めば死角はないと言ってもいい。
この所謂通常弾に属する弾幕の特徴はそのままスペルカードにも現れる。魔理沙のスペルカードは基本的に直線的。流線型のもあるけど決められた動きをする高火力型。
対して私はランダム性の高いものが多い。どちらも撃ちなれているからこそこういった特徴として現れるのだろう。
例外として定晴さんはどうやらスペルカードの紙に霊力を込めていると聞いた。この方式なら慣れてるとか関係なく撃てるからいいのかもしれない。一々霊力を込めるなんて面倒だからしないけど。
「恋符【マスタースパーク】!」
魔理沙の十八番、マスタースパークが犯人と思われる男に向かって放たれる。いや、というか犯人確定なのだけど。
男は動かない。何のつもりかと観察していたら急に横から妖怪が飛び出しマスタースパークを体で受け止めた。式神…?でもそのようには見えない。
「あんたの脳力は妖怪を操ることかしら?」
「残念、不正解。博麗霊夢、もっと頭を使うといいさ。勿論体もね」
男がそう言った瞬間私は咄嗟に高度を上げた。そして先程まで私がいた場所をレーザーが通り抜けた。弾幕ごっこ用ではない、完全に殺すための威力で。
「っ!魔理沙!本気出して!」
「はあ!?私はいつでも本気だって!」
「違う!気持ちじゃない!威力の方!」
弾幕ごっこの弾はどれだけ威力を高くしたとしてもルール通りにするならば気絶させるのが限界だ。そしてそれは私が決めたし、幻想郷の決闘ルールとして広く伝わった。意志のない…というより理解するほどの知能がない妖怪には残念ながら適用されないが、今では幻想郷では殺す殺されるの戦いはほとんど起きない。例え紫レベルの大妖怪だとしても弾幕ごっこルールで負けたら素直に負けを認めるという取り決めだからだ。
だが、こいつは違う。確実に殺しに来ていた。今のレーザー、撃ったのは男ではなく死角にいた妖怪。何らかの方法で手懐けているのだろう。殺気が男の方に向くことはない。元々妖怪というのは人間を喰らう。これは知能あるなしに関係することではない。
なんせ紫だって人間は喰らうし、今では定晴さんの式神となってしまったルーミアも人間は普通に喰らって生きていた。
だからその殺気は、技は人間を殺すに値する。もし今のレーザーが体を直撃していたら…私は即死していただろう。最低でも満身創痍となり動けなくなっていた筈だ。足に当たっていたら足が吹き飛んでいただろうし、私の勘と瞬発力には感謝するしかない。
「くっそ!霊夢!後ろ支えてくれ!」
そう言うと魔理沙のミニ八卦炉が光り輝き出した。どうやら魔理沙も相当本気で行くようだ。先程のレーザーを見たからだろう。
魔理沙の持っているミニ八卦炉は霖之助さんが作った物で、一応相当な火力を出せるという。火力重視、派手さ重視の魔理沙にはとってもお似合いの道具であることは確かだ。そしてこの八卦炉、やろうと思えば博麗神社程度の広さなら焼き払えると魔理沙は言っている。まあそこまですると八卦炉自体も破壊されるらしいし、そもそもそんなことが本当にできるのかという時点で私は疑っているのだけど。
そんな八卦炉、いつもは変わらないのだが魔力を一杯込めると光りだす。今のように。
「くらええええええ!!」
私が後ろで支えていても後ろに少しずつ後退してしまう。それほどの威力なのだ。
男もこれほどの威力は想定していなかったのか余裕を崩して逃げた。
「魔理沙!追うわよ!」
「がってん!」
私達が男を追い始めると横から数匹の妖怪が現れた。
「邪魔!」
お札をばら撒いて妖怪の視界を遮る。
だがその選択はよくなかったのか…そのうちの妖怪の一匹が煙幕を口から噴出した。見た感じだと毒性の成分は含まれていなさそうだが、吸ってしまって倒れたら水那の二の舞だ。
「霊符【二重結界】!」
すかさず結界を張って吸い込むのを防ぐ。しかしこのままでは男を逃がしてしまう。
「とりゃあ!」
魔理沙がミニ八卦炉を煙幕に向けて風を発生させた。
どうやら今もなお煙幕を妖怪が噴出しているらしい、風で飛ばしてもすぐに視界が煙幕で覆われてしまう。魔理沙には風を起こし続けてもらって、私は問題の妖怪を始末してしまおう。
私は懐からお札の代わりに針を取り出した。これは妖怪の力を封じる力があり、普通の妖怪でも刺されば動けなくなる特注品だ。お札と違っていっぱい用意できないのが問題だけど。
「はぁ!」
「きゃん!」
犬のような声を出して動かなくなった。それと同時に煙幕の発生も止まる。視界が遮られてて目標は見えずとも勘と記憶から当てることができた。こういう事ができるから修練なんて必要ないと華扇には言っているのだけど…
「ちっ!逃げられたぜ」
「そうみたいね…水那たちを呼ぶわ。追跡はそのあとにしましょう」
今ここで追ったところでまた妖怪に邪魔されるのは分かっている。定晴さんがいれば強行突破もできるだろうし、今はここまでが限界だろう。
それにしてもあいつの目的は何なのか。人間からすれば厄介な妖怪を減らしてくれてありがたい、のかもしれないが、人間だけが生き残るなんていうのは幻想郷では認められない。なんせここは妖怪と人間が共存できる紫の理想郷なのだから。
「魔理沙、博麗神社に戻るわよ」
「了解だぜ」
…定晴さんとルーミアは一緒に戻ってくるのだろうけど、魔理沙になんて説明しようかしら。まあ本人たちに丸投げすればいいか。