東方十能力   作:nite

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百六十八話 功名な罠

妖怪の山に近付くだけで異変に気が付いた。

木々で生い茂っている部分が燃えているのだ。それも至る所で。

 

「どうやら火を使う妖怪が暴れたみたいだな」

「また水を消すのかー?あれはもうこりごりだぜ」

 

と言うのはしばらく前の惰眠異変の時。河童たちの集落で火事が発生したのを俺の魔術と魔理沙の魔法で消火の手伝いをしたのだ。

正直なところ消火活動の手伝いなどはした方がいいのだろうが…

 

「今回は申し訳ないが頼まれた時以外は無視しよう。そもそもあの時も俺と魔理沙の二人だけだと消しきれなかったんだ。こんなに広範囲に広がってしまっては俺達だけじゃ手に負えない」

「それもそうだな。私達は火を消しに来たんじゃなくてその火をつけた奴を倒しにきたんだぜ」

 

ここからでも分かる位置に暴走している妖怪が数匹ほど。まだまだいるだろうからそれ以上の相手をする必要がある。相手にとって不足はないが、速攻で倒しきらなければ妖怪の山が禿山になってしまいかねない。

 

「魔理沙!別れて行動するぞ!暴れてるやつがいれば片っ端から倒せ!」

「がってん承知だぜ!」

 

魔理沙が一番近くにいた天狗に特攻していった。魔理沙の攻撃は高火力かつ広範囲なので暴走状態の妖怪を数体同時に攻撃に巻き込むことができればその分鎮圧も早くなるだろう。

さて、俺も早速妖怪を倒しに行きたいところだが、その前に確認することがある。

 

『狂気、起きてるか?』

『俺に寝るっていう概念はねえよ。言わなくても分かる。あいつらの狂気の状態確認だろ?』

 

あの妖怪たちが暴れている原因がはっきりと分けるわけではないが、自分の意志でやっているのか否かくらいの判断は付けることができる。

狂気の感情に対してはとても敏感であるこいつは暴れている妖怪の狂気がどこから来ているのかを判断できるのでそれに頼ったというわけだが、さて結果は…?

 

『単刀直入に言うとありゃ外部からの干渉だな。だがその狂気を自らの不満だとかの悪感情に結び付けたことで自分の意志で暴れているようなもんだ』

『つまり…外部からの悪感情を自分のものとして感じてるってことか?』

『そういうことだ』

 

外部からの感情を自分のものとする…催眠術とかの一種だろうか。

しかし催眠術だとしてかけた方法が分からない。なんせ今の妖怪の山は厳重な警備体制がしかれている。守矢神社の参道や敷地内以外に侵入する何者かがいた場合はすぐに通報される。

それとも妖怪の山内部の犯行なのだろうか。それならば妖怪の山の犯行も人里にいるのも分かる…が霊夢たちが人里近くで見たと言う男は人間にしか見えなかったという。妖怪の山に住んでいる人間は早苗くらいなもので、普通妖怪の山で生活などできない。

この謎を解くためにも取り敢えず暴れている妖怪を鎮圧するとしよう。

剣を取り出し魔理沙が戦っている相手とは違う相手に攻撃をしかける…

 


 

ご主人様や霊夢たちが飛び立ったので私は文を境内の中に連れて行く。文も暴走する可能性もあるが、その時はある程度出力を上げて気絶させよう。何か様子がおかしかったら速攻昏倒させればいいだろう。寝ていた方が回復も早まることだろうし。

 

「うう、すみませんね」

「寝とくといいのだー」

 

文を中に残したままもう一度外に出る。

ここからでは角度的に妖怪の山を見る事はできない。だがそこでは妖怪が暴れご主人様と魔理沙、そして大丈夫な妖怪たちがその鎮圧をしているはずだ。

 

「それにしても妙よね…」

 

ボソっと呟く。

今回の犯人が私の封印を解いてご主人様の腕を吹き飛ばしたあいつと同一であった場合、妖怪を暴れさせて終わり。なんてことはないだろう。

奴は確実に何らかの理由でご主人様を恨んでいる。それが何かは分からないし、ご主人様も思い当たることがないので憶測を立てることもできないのだけど。いじめている側はいじめている意識もないし記憶にも残らないとは言うけど、そういうことなのだろうか。ご主人様が彼をいじめていたとは思えないけど。

 

「でも最終目標は多分ご主人様を殺すこと。でも妖怪が数匹暴れたところで…数匹…じゃなくて…大量に…だったら…?」

 

ご主人様は一対一だと正直最強だと思っている。ミキとかいうふざけている神様は人間じゃないわけだし、純粋な人間という意味ではご主人様が最強だろう。

でも、対軍となると話は変わってくる。だってご主人様には広範囲の高火力攻撃がないから。模倣の能力を使ってもコピーできるのは三つまで。剣で戦うご主人様に大軍相手では分が悪い。

では今行っている妖怪の山は…?妖怪のたまり場だけど別に全員が敵というわけでは…なんだろう凄い嫌な予感がする。

その時後ろから確実に殺すための弾が飛んできた。

 

「…なるほどね。これは…まずいわね…」

「…後ろからの攻撃を躱すなんて普通の子供妖怪はできないわ。いつまでフリを続けているつもり?」

 

殺気を纏っている文。

この感じは、私が暴走させられた時と同じあの感覚。

 

「…まあここまできたら仕方ないわね。相手してあげる」

 

不敵に笑う天狗の妖怪。

治ったっていうのも、はたまた[かかっていない]のも嘘。どうやらご主人様は…私達は敵の罠にはめられたようである。

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