東方十能力   作:nite

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送れましたすみませんm(__)m


百七十話 必死の抵抗

幻空から家宝の剣も召喚し二刀流へ。結界を周囲に浮かせて攻撃が来る方向を狭める。全方位の攻撃は流石に捌けないが、一方向の攻撃ならば捌ききれる。

ミキから教わった二刀流の戦闘法。早く、ただ早く剣を振る。

弾幕ごっこの温い弾ではなく確実に殺すための攻撃。どうやら暴走状態のルーミアと似た様な状態になっているらしい。残念ながらこの量を式神にできるわけもなく、ついでに言うとあの時は藍がいたからできただけで一人でできるわけではない。

俺と魔理沙は全力で弾を回避し時に弾きながら妖怪の山の領域の外へと走る。

諏訪子と神奈子は俺を殺す気はないのだろう、なんとか弾ける範囲の攻撃しかしてこない。それが唯一の救いでもあった。今ここで二人に本気を出されていたら確実に死んでいたことだろう。

俺に便乗して魔理沙も妖怪たちへ攻撃をしたからだろうか、魔理沙にも致死性の弾幕が向かう。魔理沙とて殺し合いの戦闘には慣れていないようで俺が補助をしながら回避を重ねる。

 

「ヴァァァァ!」

「ちっ、もう妖怪というよりただの化け物だな!」

 

狂気が驚くほどの感情を持っていた奴に当てられて正気を失っている妖怪もチラホラと見受けられる。理性などない、ただ目の前の敵を屠る為の化け物。

 

「行くぞ定晴!マスタースパアアアアアアク!!」

 

魔理沙の十八番マスタースパーク。それがスペルカードルールの枠を超えた威力で放出される。流石に妖怪を消し飛ばすほどの威力ではないもののその範囲、威力共にいつものやつとは段違いだ。

相手の撃ちだした弾すらも吹きばしながら確実に妖怪の山の外への道を開いた。

諏訪子と神奈子は妖怪たちに襲われないために俺達を攻撃しているはずなので妖怪の山にまで追ってくることはない筈だ。ならばここは全力で…

 

「魔理沙!少し近付け!」

「は?まあいいけど…」

 

魔理沙が近づいたことを確認したら全力で風の力を行使。いつもは俺一人を押し出してくれる風は近くにいる魔理沙すらも押し出して妖怪の山の外へと吹き飛ばしていく。速度が上がった事を確認したら魔理沙の箒に捕まりさらに加速。

そして…

 

「「ひゃっほーう!!」」

 

こんな時でありながらそのスリリングな体験に思わず声が出る俺達。

見事妖怪達の包囲を抜けて妖怪の山を脱出したのであった。

 

「定晴、ここからどうする?」

「博麗神社に戻る。多分この様子だと文もグルだ」

 

とはいえ文くらいの相手であればルーミアは負けないだろうが。封印状態でもある程度の出力で闇を操れるようになった上、封印解除ももしもの時はしてもいいと許可を出している。封印解除をすると俺の体にそれなりの負荷がかかるのが分かるのでどうやら封印解除はしていないようだが。

 

「霊夢たちは大丈夫だと思うか?」

「さあな。ただ見た感じやはり人間にはあの洗脳は効かないみたいだから人里の奴らに襲われる、ってことはないだろう。博麗神社が集合場所のようになっているし、博麗神社に出来るだけ早く飛ばしてくれ」

「あいあいさー!」

 

そのまま風の力で魔理沙の箒を押しながら俺と魔理沙は博麗神社へと向かった。

 


 

ここは妖怪の住処、妖怪の山の中にある神社。

先程までの騒がしさはどこへ行ったのか、今は神二柱と神社の風祝を務める人間一人だけが取り残されていた。

 

「……」

「…」

「…」

 

三人の間に流れるは沈黙。

しかもどうやら風祝の少女は大層機嫌が悪いようだ。しかも自身の進行対象であるはずの神二柱に対して怒っている。

 

「なあ早苗…」

「…」

「神奈子、ちょっと待って。ねえ早苗、私達も定晴が悪いとは思ってないさ。あの状況で定晴が何かしてああなったとは思えない。でもあそこで定晴に加勢していたら私達だって危なかったかもしれない。最悪神社が壊される可能性もあったんだ。だから…」

「…」

 

洩矢諏訪子が弁明を重ねてもなお東風谷早苗は目を合わせない。完全にお怒りの様子であった。

早苗とて妖怪たちと敵対しないようにしたことは悪いと思っていない。むしろそうすべきであったとも思っている。想いを本人に伝えてはいないにせよ好意を抱いている定晴の助けをすることができなかったのは心苦しいが、流石にあの状況で大一番をする気にはなれなかった。なれなかったのだが…

 

「…じゃあ何で定晴さんたちを攻撃したんですか。あのまま引き下がればよかったじゃないですか。神社の中にいればよかったじゃないですか」

 

如何にも「私怒っています」という声色で話す早苗。お怒りの様子であることは態度で一目瞭然なのだが、声に出すほどに不機嫌である証拠であろう。

早苗は定晴を助けなかったことに怒っているのではない。定晴、そして魔理沙を攻撃したことを怒っているのだ。

早苗は一切攻撃に参加はしなかった。助けられないのが嫌でしかたがなかったがずっと攻防を傍から見ていた。しかしそれでも攻撃はされなかった。定晴たちにも妖怪達にも。

戦闘が始まる前に神奈子たちは言っていた。妖怪を攻撃するのと定晴を攻撃するの、どちらが安全なのかと。二柱の中にどちらにも関与しない中立であるという選択肢が無かったのは明確だ。

なんとも血気盛んな神様たちだろうと早苗は思う。本来闘いの神ではないのに戦神なんて呼ばれたこともある神奈子と鉄を使った武器を用意している諏訪子。確かに血気盛んである。

 

「…ええ、まあ、お二人にとっては定晴さんはたかが人間の一人のなんでしょう。咄嗟に攻撃対象にするのもまあ分かります。でもですね、あの状況で攻撃して、もし定晴さんが、魔理沙さんが倒れていたらどうするつもりだったんですか?」

「どうって…」

「私の奇跡でも人の蘇生、なんて大事はできないのは知っているでしょう」

 

三人ともわかっていた。いや、戦っている途中で、見ている途中で分からされた。あそこで定晴たちが倒れていたら、確実に妖怪に殺されていただろうということは。というより倒れた時がそれこそ死んだ時だ。

そう確信できるほどの威力と密度があの妖怪たちの攻撃にはあった。流石にまずいと思ったか神二柱でも途中から攻撃の威力と間隔、範囲を弱めたほどだ。知り合いの、しかも自分たちのかわいい風祝の想い人を目の前で殺されるのは…二柱以上に早苗にとって最悪のトラウマとなるだろう。それだけは避けなければいけなかった。

 

「…いいです。お二方は神社で休んでてください。定晴さんは優しいのでお二人にも、更には妖怪達にもあまり強い打撃は加えていないようです。きっと再起不能になった妖怪はただの一人もいないでしょう。あの攻撃の中それを実行するなんて本当に凄いことです…ですがあの人は今仲間を欲しています。あの様子では仲間は魔理沙さん、霊夢さん、それに博麗神社に新しく来た水那ちゃんくらいのことでしょう」

「あんたまさか…」

 

神奈子が狼狽えるように早苗を見る。

しかし早苗の目はもう既に決意で固まっていた。

 

「私は定晴さんの助けに行きます。すぐに追えば博麗神社で会えるでしょうし。それでは行ってきます」

 

いつもの平和な雰囲気と優しい声はどこへ行ったのか。神二柱に別れを告げて早苗は博麗神社へと飛び立った。

私達の努力はなんだったのか。二柱は早苗を思う。しかしその努力が早苗の決意を固めたのは言うまでもない。二柱は自らの社で、ただ茫然とするしかなかった。

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