東方十能力   作:nite

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百七十四話 爆発と逃亡

戦闘時間は僅かの十分程度であっただろう。

疲労が蓄積してきたが周囲の妖怪は粗方対処した。その時に数体は絶命させてしまったが、まあ人間が妖怪を殺してしまうのはありがちなことだと自分を納得させておく。

 

「いやまさか、堀内また強くなったのかい?これは…僕もまた頑張らないといけないようだね」

「次はねえよ。これで終わりだ」

「いや、今日はもう退かせてもらう。きっとそろそろ…時間だ」

 

俺たちの背後から爆発音が響いた。

方向は博麗神社。奴に警戒しつつ後ろを一瞬振り返る。悪い予感に駆られながら見れば、博麗神社があった場所から黒煙が上がっている。

 

「てめえ!」

「ご主人様…逃げられた…」

 

見れば奴がいたところには妖怪が放出した煙が充満していた。

 

『狂気、何か感じられるか?』

『いや…どういうわけか突然負の感情を感じなくなった。あんだけの感情があるのにゼロにしたなんて考えられないが…』

 

どうやら狂気ですら見失ってしまったらしい。あの煙には感情をかき消す力でもあるのだろうか。

ここで追ってもいいが、場所が分からなくなってしまったのであれば仕方がない。一度博麗神社に戻る。出来る限り急いで。

紫をはじめ幻想郷でも中々の強者が集まっているのだ。きっと大丈夫だろう。そう自分に暗示をかける。

だが少なくともあの爆発から守っていないなら神社の建物は倒壊してしまっているだろう。紫が怒り狂ってなければいいのだが…

博麗神社についた俺達。神社は…無事だ。それに皆も…大妖精達がいない?

周囲を見渡せば鳥居の近くでまとまって休んでいた。妖怪の山の妖怪たち相手によく頑張ってくれたと労いつつ紫に話しかける。

 

「爆発が見えたが何があった?」

「…ある妖怪が爆弾を持ってたの。しかも素人が作ったやつじゃない、戦争で使うようなやつよ」

 

外の世界で買ったのだろうか。日本ではそんな爆弾買えないが、何らかの方法で持ち込んだのだろう。警察に追われたとて幻想郷の中に入ってしまえば追いつかれないし、そもそも幻想郷に入った時点で警察は記録や記憶があやふやになるだろう。幻想郷とはそういう場所なのだ。

 

「撤収したのか?」

「いえ、気絶させてるだけよ…」

 

幽香にも疲労の色が見える。あの量の妖怪を相手にしていたのだ。疲れも中々のものだろう。

 

「それにしても何で定晴は狙われてるのかしら?」

「どうやら犯人は俺に恨みがあるらしい。どんな恨みなのか教えてくれなかったけどな」

 

もし俺と深い関わりがあるのなら顔を見れば分かると思ったのだが、残念ながら見知らぬ人物であった。なんでも屋時代の依頼主の顔なら思い出せる自信があるので、それより前に会ったのか奴が俺のことを一方的に知っているかのどちらかだろう。

 

「紫、取り敢えず邪魔な妖怪たちはスキマでどっか適当に置いてきてくれ」

「妖怪の山にでも送っとくわ。また来られたら困るから深い催眠と一緒にね」

 

紫がそう言うとスキマが開き妖怪たちが強制送還された。

紫のスキマの性質上大きく開くと俺達も巻き込んでしまうので妖怪一人一人に対してスキマが開かれている。視野外であろうにも関わらずスキマを展開できているところを見ると、どうやら紫はここらへんの妖怪の把握は完璧なようである。

 

「なんとも煮え切らないけど、敵襲はおしまい。でも犯人は未だに逃亡中だし黒病が治ったわけでもないわ」

「つっても霊夢、どうすんだ?」

 

奴は現在も幻想郷の内部にいる。強力な能力があっても幻想郷を覆う大結界を越えるのは簡単ではないのだ。基本的には紫のように外に直接出口を作るか、俺のように結界自体を無効化するかどちらかになる。

奴はスキマのような能力や瞬間移動、無効化系の能力は持っていないようだった。あの妖怪を使役している方法や俺に内部から攻撃を与えている方法は分かっていないので、絶対とは言い切れないが。

 

「そうねぇ…っ!?回避!」

 

霊夢が結界を張りながら横っ飛びで回避した。霊夢が声を上げた時には皆も回避行動を取っていた。その直後に俺達に向かって放出される極太レーザー。先程幽香が相殺したレーザーの比ではない。

 

「なんなのよ!」

 

俺達が視線を上に向ける。

そこにはなんとも奇怪な黒い影が浮いていた。

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