東方十能力   作:nite

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百七十六話 展開

「てめぇ…」

 

無効化で謎の力を弾きつつ対峙する。

 

「そいつが…」

 

紫が奴を睨みつける。と、最初に動いたのは幽香だった。

 

「巫山戯るんじゃないわよ!」

 

幽香の傘の尖端から放たれる極太レーザー。どういうわけか幽香は魔理沙と同じくマスタースパークを撃てるのでそれだろう。

弾幕ごっこ用のお遊びのものではなく、威力も高くみえた。だが奴は余裕で回避し、影に近付いていく。

 

「うぐっ…」

 

それと同時に幽香が胸を抑えた。俺にやっていたあの力を幽香に掛けているのだろう。幽香がどれくらい耐えることができるのか分からないので早め早めに無効化で幽香にかかっている負荷を消しつつ奴に向かって走る。

 

「おっと、それ以上近付くなら…僕を攻撃しようと言うのなら彼女たちを殺す。だが安心してくれ、君が死んでくれたら彼女たちはすぐに開放する」

「それを信用できると思うか?」

 

こいつの言うことは何も信用出来ない。相手を惑わすために嘘と本当を混ぜて喋る…ならば全て信用しなければそれまでだ。外の世界での経験、他者は信用するなの鉄則である。

 

「まあ信用は出来ないか…とはいえ元より堀内がすんなりと自殺してくれるとも思ってないし、必死に抵抗してみなよ」

 

声色が変わる。黒く、深く、闇を感じさせるはっきりとした殺意が俺を襲う。

瞬間、恐竜型の影が霊夢と魔理沙を捕えたまま形を変え始める。

 

「さあ、悲しい影の妖怪よ…その怨念、開放しなよ」

 

奴がそう呟いたのを聞いたのは俺だけだっただろう。他のみんなは視点が影に向いていた。

恐竜のような形だったものが、少しずつ小さくなって人形を形成していく。変化が収まったとき、俺達の三倍ほどの大きさの巨人へと姿を変えていた。

巨人が腕を振るう。確実に俺を狙っていることが分かったので回避行動を取ろうとする。しかしそのタイミングを見計らってから奴が俺にまたもや謎の力を与えてきた。そのせいで回避が遅れる。

 

「てや!」

 

ルーミアが闇を固めて壁にする。拮抗したのは一瞬で、すぐさま腕は壁を崩壊させて俺達へと迫ってきた。謎の力を無効化で解除、ルーミアが作ってくれた隙に結界を展開。

 

「ぐはっ」

「うぐっ」

 

俺とルーミアは仲良く吹き飛ばされ木に激突した。結界を使っていたにも関わらず中々の衝撃だ。

俺達が吹き飛ばされている間に呆けていた妖夢たちが戦闘を再開した。霊夢と魔理沙は未だに囚われている。触手に捕まっていたはずだが、今は左手の中にいる。そのせいで太さが増して妖夢の剣では長さが足りないようだ。あれでは霊夢たちを救出できない。

 

「うっあああ!」

 

魔理沙が声を荒げる。どうやら今も少しずつ手を握りしめているようだ。戦闘が長引けば長引くだけ魔理沙たちが苦しむことになる。

 

「…ルーミア」

「なに?ご主人様」

「俺の浄化能力で悪影響がある奴を連れて離れてくれ」

「っ!」

 

影の発見当初は妖怪なのかも分からず、無闇に霊力を使うことも避けたかったので実行しなかったが、奴は先程確実に妖怪であると名言した。ならば俺の浄化は効くはずである。幸いなことに捕まっているのは霊夢と魔理沙の二人、どちらも純正な人間なので浄化の能力を受けても悪影響はない。

ルーミアに指示して幽々子たちを離れたところに移動させる。紫がスキマを開いてくれたので移動は早そうである。

 

「んー?ああ、堀内の浄化かな。無駄だよ、堀内の浄化能力は影全てを覆い尽くせないだろう?君達も気付いている通りこいつはその体よりも小さい攻撃は全て吸収する」

 

聞いてもいないことをペラペラと話す。そういうのは映画とかでも三下の悪役が言うセリフなのだ。

 

「終わったわよ」

「ルーミア、お前も離れてくれ」

「…ええ、後ろで見とくわ」

 

後ろ…後ろかぁ…俺の背後、気配からすれば十メートルほどは離れているだろうか。しかし今から使う技の範囲内である。式神だから大丈夫とかあるのだろうか。

 

「俺は詠唱をするからルーミアはその間守ってくれないか?」

「っ!!ええ、任せて!」

 

いつになく張り切るルーミア。しかし小声で「ご主人様が詠唱?」と首を傾げている。

確かに俺は技の詠唱をしない。なんせ俺の戦闘スタイルは結構決着を早くつけるものだからだ。詠唱など時間がかかるものは使えないし、何より外の世界での戦闘は全て俺一人だったので詠唱をしている間に攻撃を受ける可能性があるというのなら詠唱などしない。

しかし今回使うものは詠唱が必要だ。なぜならば完全にオリジナルではないから。あのミキが俺にオススメしてきた技、それを俺流にアレンジしなおして使用する。

練習では一度だけ成功したのだが、今回は練習のときよりも範囲を広くする必要がある。成功するにせよ失敗するにせよ霊力が減るには変わりない。

 

天の衣 空駆ける剣 大地を満たすは退魔の光…」

 

巨人の腕が振るわれる。ルーミアが全力で止めてくれた。闇の壁を何枚にも重ね、自らの体すらも盾の代わりにして。やはり最近のルーミアは何かが変わったように思える。

 

「その詠唱を止めないとすぐに彼女たちを潰すぞ!」

「…我は聖典の指揮者 我は狂い沈む調停者 我は反するものの選定者…」

 

あからさまに霊夢と魔理沙の顔に苦痛の色が見える。だがここでやめるわけにはいかない。それに霊夢と魔理沙なら耐えられるはずだ。そう信じている。

 

「…流れろ力 裂けよ混沌 苦痛を払い 輪廻を巡り 異端なる者を掻き消せ!

 

光が高なる。

最後に咄嗟にルーミアの腕を掴み後ろに投げ飛ばす。

 

「ご主人様!」

 

ルーミアはどうやら昂っている時は口調などが崩れるようである。こいしの件でやらかしているのに改善されたようには見えない。

 

三千世界…」

 

そして俺を中心に博麗神社は姿を変える。

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