俺はフランを手放し直ぐ様後ろにステップする。
すると突然正面に弾幕が展開される。それを避けてフランの顔を見ると、俺の方をじっと見つめていた。
「ハハハ、モットアソビマショ!」
「ちょっと待て!」
「イヤーダ、ハハハ!」
吹き飛ばされた腕を拾って再生する。
完全に消し飛ばされると時間が掛かるのだが、残っているのなら少し無理すれば一瞬で治る。回復ではなく再生であるということが重要だ。身体欠損程度なら十分に再生可能なのである。
「レミリア!説明しろ!」
「フランの中には元々狂気が住み着いているの。最近は落ち着いてきていたのだけど、遊びで負けるとたまにこうなるのよ!」
そう言ってレミリアは大きな槍を構える。レミリアもフランも専用の武器を持っているのか。俺の輝剣も俺専用なわけだが…槍というのはリーチが長くて場合によっては剣よりも使いやすそうだ。
「神槍【スピア・ザ・グングニル】!」
とても強い妖力が込められた槍だ。やはりレミリアの趣味なのか紅いが、その威力は侮ることができない。当たればただの怪我では済まないだろう。
レミリアはその槍をフランに投げるが、フランはレーヴァテインを取り出して槍を弾き飛ばした。あの槍を吹き飛ばすなど相当なことだ。その証拠に、グングニルが刺さった場所には少々大きな穴が開いてしまっていた。
それにしても狂気か…懐かしい響きだな。まあフランのはとてつもなく質の悪いものだが。しかし…もしかしたらあれができるかも知れない。フランが妖怪なので少し難易度が高いが…
フランが近づいてきたので思考を打ち切り俺も応戦させてもらう。どういう原理かは分からないが、また腕を吹き飛ばされてしまっては大変だ。
「剣術【辻斬り】!」
流石のフランもバックステップで距離をとった。。俺はその隙を見て追撃。
「魔術【火と水の乱舞】!」
魔術というのは火と水、雷と土など相性の悪い組み合わせが存在する。そのおかげで防御魔術も生まれたわけだが、基本的にこういった組み合わせは同時に発動すると相殺されてしまう。
だが俺の魔術はちょっと違う。こういった相反する属性であっても交じりあって混合魔術となるのだ。レーヴァテインで振り払おうとしたようだが、レーヴァテインが纏っていた炎は水の魔術によって威力が弱められそのまま火の魔術がフランに直撃した。
「アウッ!コノオオオオッ!」
ダメージを与えるも束の間いきなりフランが目の前に現れた。怒りでいつも以上の力が出ているのか、それともこれが本来のスペックか。
それは分からないが俺は輝剣を振る間もなく吹き飛ばされた。
「ぐはっ」
ただし輝剣は浮いているので俺は吹き飛ばされながらもフランに輝剣を振った。しかし狙いも定まらないまま振った剣はそのまま虚空を斬り裂いた。
「妹様!どうか落ち着いてください!」
「サクヤ?シズカニシテテネ?」
「きゃっ!」
フランが咲夜の前に移動する。
咲夜とて人間だ。時を止めようとしても、その前にやられては意味がない。耐久力という意味では人間と妖怪には天地ほどの差があるのはこういうときに痛感する。実際に痛いわけだけど。
「咲夜!」
俺は咲夜を突飛ばし、フランの前に出る。
なんとか結界を張ったことでで直接攻撃に当たりはしなかったが、攻撃が重すぎてまたもや吹き飛ばされる。
このままではフランに勝つことなど出来そうにない…
やられてるなんて珍しいな。
たまには手伝ってやろうか?
俺もお前も同じなんだから。
たまには暴れさせろよ。
魂装【狂気】
……はは。
「?」
俺の気配が変わったことでフランドールが首をかしげる。
俺も出てきたのは久しぶりだから、力が弱くなってるかもな。だがまああまり問題ではない。
「さあフランドール。楽しもうぜ?」
フランドールの目の前に移動。そして一気に剣で叩く。いつもの俺ならしないであろう乱雑な攻撃。しかし狂気相手ならこっちの方が手っ取り早い。
「おらおらっ!剣術【乱れ打ち】」
フランドールが倒れる。身体強化も同時に使用して輝剣で何度も叩きつけたのだ。フランドールのような華奢な体では耐えられるものではない。
正直止めを刺したいところだが、俺に怒られるからしないでおく。まだ暴れたりないが今日のところはこれくらいにしておいてやろう。
「解除…」
……俺もやりすぎだよな。フランが複数の傷を負って倒れている。
さて、ここからが執念場だ。少しでもミスったら、フランが消えかねない。妖怪としての力と狂気という感情の境目を意識しながら…
「感情血清…」
外の世界でもたまにしていた俺の秘術。感情の中にある不安定なものを取り除ききれいな状態にする浄化の力の応用術。
フランから黒い何かが出ているのが俺には見えた。きっと他者には見えていないだろうけど。
「あ…れ…?」
「大丈夫か?フラン」
再生も掛けてあげたことでフランの目が覚めた。
キョロキョロと周りを見渡して不思議そうな顔をしている。
「うん。確か定晴と戦って…そうだ!狂気!狂気は?」
「俺が消しといた。これで多分大丈夫だ」
「そう、なの?」
「ああ」
妖怪相手に浄化の力を使うということで少し大変ではあったが無事助けることが出来た。
あとはそこで口を開けているレミリアと疑問顔の咲夜に説明しないとな。
まだもう少し時間がかかりそうだ。