東方十能力   作:nite

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久しぶりの水曜投稿です


百七十七話 三千世界

俺を中心として光が溢れる。そしてその光は巨人の影も、奴も飲み込んで博麗神社を覆い尽くしていく。ギリギリのラインではあったがルーミアは範囲外に投げ飛ばせたようだ。

 

「なっ、まさか!」

 

奴が狼狽えるかの如く声を出した。

土壇場での発動、そして範囲強化、そのために詠唱が少し伸びてしまったが致し方ない。成功しただけでも良しとしよう。

ミキが好んでいるその長い人生をフルに使える模倣技の無限剣製というものは、魔術のジャンル分けをした時固有結界というものになると言っていた。

固有結界とはその個人が使える秘術の一つ、世界を塗り替えて自らの世界に染めあげる。大規模な魔術なので消費する魔力は多いし、継続時間も短い。それが固有結界の決まりである。俺は魔力の代わりに霊力で発動しているのでまだ活動限界ではない。魔力の何倍も霊力は持っているのである。

この固有結界の効果は簡単、範囲内の異物の力の抑制である。異物というのは俺、つまり人間以外のものの事を指すので人間のエゴの塊とも言えよう。俺の浄化の力は別に妖力だけを払うのではなく毒とかそういう色々なものを消し飛ばすのでどうしても固有結界にしても人間以外への効果にしかならなかったのだ。捕まったのが霊夢と魔理沙であって良かった。幽香とかが捕まっていたら少々面倒なことになっていたのだ。

 

「クソ!堀内、まだ奥の手を!」

「知った事か。まあお前は人間のようだから効果は薄い…と思うなよ?」

 

力の抑制というのは実は固有結界のサブ効果に過ぎない。

この固有結界には俺の能力で適するものを全てつぎ込んでいるのだ。この結界、この空間には無効化も働いている。この結界内では…俺は指定した奴の能力は一切発動できなくなる。能力を無効化しているのだ。

なぜ今までこれを使わなかったかというと、本当に奥の手だからだ。なんせこの結界、使用後は俺が動けなくなる。ルーミアは今頃結界の外側で待機しているはずだから戦いが終わったら運んでもらうしかあるまい。紫もいるのでスキマ運送を頼ることもできそうだ。

 

「っ!力が…」

「残念だったな!おら!」

 

素早く接近し輝剣で奴を斬る。そのまま跳躍し妖怪の腕も切断。対妖怪として強いこの結界内では腕よりも短い斬撃でも切ることができた。それに伴い霊夢と魔理沙も解放される。

 

「ありがと定晴さん」

「助かったぜ!」

 

俺の指定した能力以外は普通に使えるので霊夢や魔理沙は通常通り戦う事ができる。人間の仲間と共に妖怪と戦うというシチュエーションでは最高のコンディションを作り出す結界だ。式神と戦えないのが残念ではあるが、ミキに相談してなんとか改良できないか試してみるとしよう。

 

「くそ!…くそ!!なんでだ!お前はやはり妖怪というものを理解しない!人間贔屓のくそ野郎だ!なんでお前が幻想郷にいるのかさっぱり理解ができない!」

 

初めて奴が声を荒げた。それほどまでに癪だったのだろうか。奴の気持ちはよく分からない。

さて、霊夢と魔理沙は解放できたわけだし、この妖怪には退場してもらう。紫たちが誰も分からなかったということは外部から持ち込んだ妖怪なのだろう。全てを受け入れるという幻想郷なので紫はこの妖怪も受け入れるのだろうけど、俺は許さん。殺すまでは行かなくとも相当な弱体化はしてもらう。

 

「ふん!」

 

浄化発動。妖怪の体のほとんどを吹き飛ばし小さいボールみたいな形にまで縮小した。これで当分は問題ないだろう。剣でも普通に向こう側まで剣先が届くまでに小さくなったのだ。結界外でも問題なく対処できる。しかし浄化で吹き飛ばしても声を出さないし、そもそも巨人の姿になっても顔とかが無かったので本当に謎の妖怪である。

この固有結界は世界を上から塗り替えているので今ここは外部と直接繋がっていない。紫ならば入って来れるだろうが、入らなければ外から中の様子は分からないだろう。勿論中から外の様子も分からないし、後できちんと報告する必要があるだろう。

 

「さて、んでお前はどうするんだ?ここで動けなくなるまで切り刻んでもいいわけだが…?」

「……ああ、堀内。君はそうやって…いや、今はやめておこう。次だ、また次に会う時に…」

「次はねえよ。ここで決めるんだ」

「いや、あるさ。僕の力を甘く見ないでくれ」

 

異変が起きた。こいつの体の中に変な力の移動を感じる。

まさか能力を使用したというのか、この固有結界の中で。そんなことができるはずはないが…

 

「次に会う時は君を確実に殺す。仕方ないけど君の周囲の奴らも全員皆殺しだ」

 

憎悪に染まった声を出す。

 

「僕は不動。憶えておきなよ。もしかしたら君が犯した罪も思い出せるかもね?」

 

その瞬間、不動の姿が掻き消えた。この現象は知っている、萃香が霧になった時と同じ現象だ。しかし萃香の霧と違って完全に消えたように思える。なんせ霊力を全く感じることができないからだ。

 

「…消えたみたいね。定晴さん、結界を解除して頂戴」

「…あいよ」

 

固有結界を解除する。

世界が歪み、それが戻った時にはいつもの博麗神社だった。

 

「おかえりなさい定晴、それで?奴は?」

「逃げられた。どういうわけか萃香のように掻き消えたんだ。どこに行ったかは不明だが、幻想郷内にいるだろう」

 

しかし奴が残した黒病異変はまだ残っている。未だにあいつらが襲ってくるとなると面倒ではあるのだが…

 

「あややや…んー?なんか変な気分ですねー」

「あら、起きたの?それで?弁明はあるかしら?」

「なぜ霊夢さんそんなに怒っているのですか!?…ん?私何か変なことした気がしますね…んー…なぜ私はルーミアさんを襲ったのでしょうか?」

 

どうも記憶はありながらも混濁が見れるよう…しかし催眠状態が解けている。他の妖怪も同じように解けているかは分からないが、文が解けたのだから解ける事だろう。

 

「はぁ…なんかよく分からないけど異変解決でいいのかしら?」

「むむ、私は何も活躍できていない気がするぜ」

 

霊夢と魔理沙が困ったような顔をする。

だが霊夢の言った通り一応の解決ではいいのではないだろうか。異変の経緯も、原因も不明だし、何より犯人は逃亡してしまったが。

 

「定晴ー!」

「おわっ!幽香、どうした!」

「何よ。折角助けてあげたのだから私の要求くらい呑みなさい」

 

何故か幽香に抱き着かれた。よく分からないがまあ今は放置でいいか。

 

「なんで貴方はここまでして顔色を変えないのかしら?」

 

幽香が不満そうである。

ともかくこれで異変は解決でいいだろう。この小さいボールとなってしまった妖怪は幻想郷内に逃がすとしよう。

 

「よーし!鬱憤晴らしも兼ねて、異変解決の宴会だぜ!」

 

魔理沙がいつもの調子で宴会開催を宣言した。

俺も助けに来てくれた幽香達にお礼をする必要があるだろう。不動がどこに行ったのかは不明だが、取り敢えず犠牲もなく日常を取り戻したのであった。

 


 

幻想郷の()()()

足を引きずりながら歩く一人の青年の姿があった。

 

「くそ!また失敗だ!」

「大丈夫ですか?」

「…ああ、次は君にも出てもらう。いいね?」

「はい」

 

その隣には一人の妖怪の姿があった。

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