東方十能力   作:nite

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誤字脱字報告感謝です。

活動報告にも書きましたが、現在初期の方に投稿した話を推敲しなおしてます。設定などは変わらず、平均文字数が二千文字程度増えるくらいしか変わりません


百八十話 本契約

式神の本契約をするために紫の家にやってきた。既に藍は準備を始めているらしく出迎えは紫と橙がしてくれた。

紫の家は幻想郷内にはあるものの直接赴くことができないので紫のスキマを通る必要がある。紫がスキマを開けてくれないとここに来ることも出来ないので陸の孤島とも言えるかもしれない。

 

「来ましたね。定晴さん」

「おう藍、今日はよろしく頼む」

 

式神契約において藍の存在は欠かせない。なんせ俺もルーミアも式神について何も知らないからな。紫が藍を式神にしているところを見ると紫も式神のノウハウを知ってはいるんだろうが、式神の能力を使う藍の方が適任かと思い今回依頼した。

それにルーミアの契約したときも藍に手伝ってもらっているので、本契約もそれに合わせたほうがいいだろうという気持ちもある。

 

「じゃあ定晴さん、ルーミア、そこに座ってください」

 

俺達が座ると藍は何かが書かれている紙と瓶を取り出した。俺には何が書いてあるのかよく分からないが、前にルーミアと契約した時に藍に渡された紙に似ている。

あの時のやつは仮契約用と言っていたので今回のものは本契約のものということだろう。仮契約のもので本契約並みの契約方法をしたので今こうして複雑なことになっているのだ。

 

「それでは二人とも、向かい合ってください。そしたらこの瓶に入ってるやつを一口ずつ飲んでください」

 

俺は藍に言われたとおり実行していく。

普通に本契約というのであれば実はここまでする必要はない。俺とルーミアの契約がおかしいのでまずはそこを正す必要があると事前に聞いている。

仮契約から本契約にするよりも一回で本契約にする方が簡単だなんて変な話だ。まあこれは全部、全部俺のせいなんだけど。

 

「では定晴さん、これを読んでください。そして読んだらルーミアにまたキスしてください」

 

ん?

 

「き、ききき…キス!?なんで!?」

「ルーミア、落ち着きなさい。それは契約の時にキスをしたからです。あれと同等以上の方法でもしないと書き換えれないんですよ」

 

俺のせいですね。本当に申し訳ありません。

 

「因みにキスが嫌だとなるとそれ以上は…」

「わ、分かってるわよ!…定晴…」

 

ルーミアがこちらを向いて目を閉じた。

非常に罪悪感があるし、さっと終わらせよう。でなければ俺もこの空気に耐えられない。

藍に渡された紙に書かれていた文字を読み上げてルーミアに向かい合う。藍は気を利かせてくれたのか後ろを向いてくれている。ルーミアは緊張と羞恥心から顔を赤くして待っている。そこに俺は顔を近づけて…

 

「んっ…」

 

軽くキス。これでも大丈夫なはずだ。あの時もディープキスというわけではなかったからこれでも同等以上と見なせるはず。

 

「どうだ、藍」

「…はい、大丈夫そうです。繋がりを確認してみてください」

 

藍に言われてルーミアとの妖力の繋がりを確認する。確かに先程までとは違い多くの量の妖力が俺とルーミアの間を行き来しているようだ。ルーミアにも霊力が多めに流れているらしく、双方共に力全体の容量が増えたようである。

 

「お疲れ様でした。一応定晴さんは式神に対して多少強引に命令を聞かせることができるので何かあったら活用してください」

 

ルーミアに無理やり命令するときはルーミアが暴走した時以外はないだろう。そして今のルーミアなら滅多に暴走することはない。俺が式神主権限を使う事は今後もないだろうと思う。

俺とルーミアは藍たちに感謝を述べて家へと帰った。お礼としてまたご飯を作って欲しいと紫が言っていたのでまたここにご飯を作りに来ることだろう。

 


 

「ふぅ…」

 

式神の契約は結構緊張した。でも無事に終わって良かったと私は思う。これで暴走する危険はさらになくなったわけだし…うん、まあそれくらいよ。またキスすることになるなんて思わなかったけど…あれで恥ずかしくなったり焦ったりするくらいには乙女ということなのだろうか。恋しちゃってる時点で乙女か。

 

「そういえばルーミア、契約が安定したから無意識に俺のことを名前ではなく呼ぶ現象はなくなったらしいぞ。藍が言うにはこれからは好きなように呼べばいいってさ」

 

…確かに意識せずとも今なら名前で呼べる気がする。最近は他の人の前では名前で呼んで二人の時だけはご主人様と呼ぶ習慣に慣れてしまっていたのであまり意識していなかった。

これで私は他の人に聞かれると少し恥ずかしいご主人様呼びから解放されたわけだけど…なんだかなぁ、この気分。

呼び方は自由であり、わざわざ変える必要もない。何で私が定晴のことをご主人様と呼ぶことに何の抵抗もなくなっているのかは謎だけど…

 

「二人の時は普通にご主人様って呼ぶわよ。いい?」

「ん?別にいいが…いいのか?」

 

要はこいしの時みたいに事故で呼んじゃうことがなくなったということだ。とはいえ私が定晴の式神であるということは既に天狗に知られているわけだし、情報が伝わっていないのは地底くらいだろう。如何に天狗と言えど勝手に地底に入ることは許されていないようだし、かくいうご主人様も勝手には入れない。こいしが口を滑らせるか、何かしらの原因で地上の情報が地底に伝わるまでは私が式神であることも知られないままだろう。

 

「いいのよ。私がそう呼びたいんだから」

「ふーん、まあ勝手だから俺は何も言わないが。んじゃ俺は昼ごはんの買い出しに行くが、何がいい?」

「あ、私も行く」

 

私が本契約しても、そもそも式神になったときだってご主人様は対応を変えない。普通の日常で、普通の日々。

ずっと一人で、はっきりとした家もなく、人間を喰らって生きてきた私にとって人間である彼がそんな風にしてくれることがこのうえなく嬉しいのだ。

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