東方十能力   作:nite

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百八十一話 特別な朝食

朝起きたら珍しく俺より先にルーミアが起きていた。

ルーミアはキッチンで何かをしているようである。キッチンですることなど料理以外は掃除くらいしかないのだけど。

 

「おはようルーミア。はやいな」

「…ご主人様こそ早いじゃない。折角朝ごはんを作って吃驚させてあげようかと思ったのに…」

 

俺は外の世界で生活していた時から朝が早い。というよりも睡眠時間が短い。自分からショートスリーパーだと言うつもりはないが、もしかしたら一般からすればショートスリーパーなのかもしれない。サバイバルなんてこともしたことあるので睡眠時間が長いと命の危険すらあったのである。

 

「ほらほらご主人様は座ってて。今日は全部私が作るから!」

「大丈夫なのか?」

「当たり前じゃない。どれだけ貴方の料理を手伝ってきたと思ってるのよ」

 

朝はルーミアが起きてくるのが遅いので皿を出すとかしか手伝わないが、昼食及び夕食はルーミアが料理を手伝ってくれることも多い。

そのおかげか今もルーミアの手付きは安定していてスムーズだ。なんの心配もなく見ることができる。ルーミアに拒否されたので俺は文の新聞を読む。

ルーミアの料理の音を聞きながら読むのも新鮮なものだ。文にとっては既に遅い情報ではあるが、今のトレンドはルーミアらしい。本来の力や封印についてなどを考察して新聞に乗せている天狗も多い…が、どれだけ考察しても真実が分かるわけではないしルーミアに訊いて分からないことは誰にもわからない。

俺とてルーミアの封印云々はあまり知らないのでお互い様だ。ルーミアが話したくなるまでは訊くことはない。

 


 

粗方載っていることは読んだ。外の世界の新聞が流れ着いたのかクロスワードパズルがあったのでそれを解いていたらルーミアから声がかかった。

 

「ほら完成、今日は洋食でオムレツとベーコンとロールパンよ。ソースも作ってみたから」

「へぇ…ソースなんて俺あまり作らないのにいつ覚えたんだ?」

「え?それは…秘密よ」

 

ルーミアも結構料理が上手になったものだ。見た目もきれいだし、香りもばっちり。

 

「「いただきます」」

 

うん、美味しい。そこまで本格的な料理は俺が作れないのでレパートリーこそ少ないが、見た目や味については文句なしだ。いっそルーミアの趣味の一つになるとそれもまた面白いかもしれない。

あと食事で思い出したことが一つある。

 

「なあルーミア」

「ん?何かしら?」

「人間驚かすとか食べるとか、そういう妖怪らしいことしなくていいのか?」

 

妖怪にとっての真の意味での食事は人間を喰らうことだ。実際ルーミアは隙があるなら人間を襲って食べていたらしい(面倒だったらしいが)し、食べないにせよ驚かせるなどしないと妖力が増えない。

俺の質問にルーミアは困った顔をしつつ答えた。

 

「今更?そりゃ食べたりする方が燃費はいいんだけど…今はご主人様の力もあるし、こうやって料理を食べてる方が楽しいから」

 

どうやらルーミアは味を求めるようである。人間がどんな味なのかは知らないが(勿論俺はカニバリズムではない)料理したものの方が美味しいのだろう。

もしかして妖怪の美食家は人間料理などするのだろうか。まあ人間も肉なのだし豚肉や牛肉のように…いや、この想像はよろしくない。非常に。

 

「元々人間を襲うのも面倒だったし…今はご主人様から教えてもらった料理の術もあるから」

 

ルーミアが人間料理を始めないことを祈るばかりである。少なくとも俺と暮らしている間は大丈夫だろうけど。

朝にいっぱい食べるというわけでも無いので朝食はそこまで時間がかからない。話しながらでも十数分で食べ終わった。

 

「片付けも私に任せてちょうだい」

「ん?そうか?まあそう言うなら…」

 

何故かルーミアがやる気を出している。気怠げに生活しても妖怪にとっては毒なので別に構わないのだが、ルーミアにしては珍しい。前も思ったことだが、やはり式神としての期間がルーミアに変化を及ぼしているようだ。多分今も。

後片付けをしているルーミアが鼻歌を歌っている。なんとも上機嫌だ。

 

「…ねえご主人様」

「どうしたルーミア?」

 

ふとルーミアが手を止めて俺の方を向いた。何やら言いたげな様子である。

 

「ご主人様はこれからも幻想郷にいるの?」

「そうだなぁ…まあ外の世界でやることもないし、俺の能力とかも考えてやはり幻想郷に定住するかなとは思ってる。まあ旅もしてみたいがな」

 

元々俺は便利屋してたから日本全国を巡っていたし、都会から農村まで幅広く活動していた。そのおかげで色んな場所を見て回ることができ、その影響で結構な旅好きにもなっている。

とはいえ幻想郷にはまだまだお世話になるつもりだが。

 

「なんでだ?」

「…私…」

 


 

これからもずっと一緒にいたい。なんて…

口には出せなかった。どうしても、言葉には出来なかった。先日霊夢にも言われた寿命という壁、いつどうなるかも分からないという状況、私はどうしてもあと一歩先に行けない。

 

「な、なんでもないわ!ただ、まあ旅に行くなら私もついていくからね」

 

それだけをなんとか捻り出し片付けに戻る。

告白ができればそれこそ楽なんだろうけど。私にその勇気はない。

丁度片付けを終わらせようとした時に玄関のチャイムが鳴った。

 

「誰かなぁ、っと」

 

ご主人様が玄関の扉を開ける。本来は従者の私がすべきなんだろうけど今は手が離せない。

ここからも誰が立っているのかは分かった。

緑と青を主にして、髪にはトレードマークの蛙のアクセサリー。妙に気合の入った様子で彼女は立っていた。

 

「早苗!?」

「えへへ、おはよう御座います定晴さん!」

 

これはまあ私の勘ではあるのだけど…

多分あれは私の恋敵になると思う。

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