東方十能力   作:nite

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百八十二話 それでも私は勇気が出ない

「どうしたんだ。こんな朝早くに」

 

チャイムが鳴ったので扉を開けると早苗が立っていた。いつもの巫女服…風祝の服を着ていて、特に変わった様子も見られない。

ただ若干そわそわしているようにも思える。なんとなくだから気のせいかもしれないが。

 

「えっと…」

「早苗?」

 

一瞬顔を赤らめたと思ったらバッと離れて俺と距離を取った。

 

『勢いで来ちゃったけどどうしよう…』

「早苗ー?」

「はい!?はい!」

 

なんか凄い慌ててるように見えるなぁ…大丈夫かなぁ…

何はともあれ用件を聞くとする。

 

「早苗がこっちに来るなんて何か用があるんだろ?」

「え、えっとぉ…ル、ルーミアさんに!用事が!」

 

凄い強調された。ルーミアに用があるのも珍しいものだが、まあ俺がわざわざ尋ねることでもないだろう。ルーミアを呼んで早苗が用があると伝えた。

 


 

事の始まりは数日前。黒病異変の宴会にて。

まさか定晴さんが式神を作っていたなんて思わなかった。それにその式神がルーミアさんだなんて。前にルーミアさん関連で事件があったのは知っていたが、私が動く前に異変は定晴さんが解決してしまっていた。まさかその時に式神にしていただなんて。

でも問題はそこじゃない。まさかルーミアさんが定晴さんと同居してるなんて!

白状しよう…こんなものは私の嫉妬だ。やっと会えた憧れの人、なのにあまり関われなくて…ただ嫌だった。

一目惚れだろうと何だろうと好きになってしまったのだ。ずっと会えなくて、とうとう見つけたのだ。この幻想郷はどういうわけか女子率がやたらと高いので奥手ではいけないと分かっている…のに…

 

「ル、ルーミアさんに!用事が!」

 

結局私は定晴さんにではなく同居しているルーミアさんを呼び出した。でも無駄というわけではない、これも重要なプロセスだ。

宴会の時の距離感と雰囲気、定晴さんは気付いていないようだけどこれはまさかと思い確認をしようとは思っていた。

 

「…なんなのだー?」

「えっと…少しだけ家から離れて話しましょう。多分あなたにとってもそれがいいです」

 

ルーミアさんが疑問を浮かべながら私に付いてくる。定晴さんの家は博麗神社と人里の間の参道に隣接してはいるが、そもそこの参道はあまりきれいにされていないので人通りはない。今回の話をするには丁度いい。

守矢神社は妖怪の山という立地や妖怪相手の信仰活動ということもあって舗装されていないが、ここまでではない。人間相手の商売をしている博麗神社がいつまで経っても繁盛しないのはここらへんが原因であるのは明白だ。

閑話休題

私が立ち止まるとルーミアさんが苛立った声でもう一度尋ねてきた。

 

「で、なんなのだー?」

 

ここでクッションを挟むべきか一瞬考えたが、正直私のこれは確信に近い。ここは一度一気に踏み込むべきだろう。

 

「……単刀直入に聞きますけど…ルーミアさんって定晴さんのこと好きですよね?」

「っ…それはご主人様だからなー…」

「そうではなくて、異性として。あと喋り方も普段通りで大丈夫ですよ。どうも無理をしているようですし。封印関係は私達の得意分野ですよ」

 

こんなところに呼び出してわざわざこんな事を聞くなんて私も好きであることを言っているようなものだ。なんだかこういうシチュエーションが学校とかでもあったような…いや、あれは小説の中だけか。

折角なので言いたいことを全部言っておく。ルーミアさんの封印が変わったおかげで私にもなんとなくルーミアさんが相当強い妖怪であると分かった。そして幽香さんみたいに昔からいる妖怪であることも。

 

「ねえ…私ってそんなに分かりやすいかしら?」

 

ルーミアさんがそう不安そうに質問してきた。

分かりやすいかと言われると…多分分かりにくくはある。ただし私みたいに定晴さんのことが好きで定晴さんの周りの女性のことを気に掛けていると普通に気付けるようなものだ。

そのことを包み隠さずに伝える。

 

「そう…そうなのね…」

 

先程で否定しなかったということはルーミアさんは定晴さんの事が好きなのだろう。よくもまあそれで同じ家に住んでいて通常通りに過ごせるものだ。

 

「もしかして既に気持ちを…」

「なっ、まだよ!いえ…私は気持ちを伝える気はないわ。だって私は妖怪で、式神だもの。定晴だって私に対してそんな気持ちになるとは思えないし」

 

なんとなく言わんとすることは分かる。幻想郷には半人半妖とかもいるし、人間と妖怪が共存する世界だからあまり意識することがないが…いや、だからこそ意識する必要があるのかもしれないが、妖怪が人間とか人間が妖怪にとかそんな風に想いを抱くこともある。

別に変ではない。妖怪とはいえ女の子なわけだし恋心など持つことになんの罪があるだろうか。

ただルーミアさんはそこに関して少し距離を取ろうとしている。自分の気持ちを自覚しつつ、そしてそれが冷めることもなく定晴さんに仕えようとしている。私には真似できない。

 

「でもまあ私が定晴のことを好きなのは否定しないし、貴女のことを応援はしないわよ。言うならばライバルなわけだし…」

「それは分かってます!さっと定晴さんを惚れさせて落としちゃいます」

 

なんて言葉にしたところで勇気は出ないけど。

 

「…他の人に取られるくらいなら…」

「ルーミアさん?」

「…ふふ、やっぱり定晴はモテるわねぇ…」

 

つまり私とルーミアさん以外にもいるということか。定晴さんのことが好きな人が。妖怪なのか、人間なのかは分からないけども。

皆、恋敵だ。

 

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