東方十能力   作:nite

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百八十三話 封印リボン

しばらくしたらルーミアを連れて早苗が戻ってきた。何を話していたのか…

 

「…これからもよろしくおねがいしますね、定晴さん!」

 

突然早苗から挨拶をされた。謎だ。

 

「ま、定晴はいつも通りしてればいいわよ」

 

そしてルーミアが通常の口調になってる。本当に一体全体何を話していたんだろう。女性同士の会話内容を尋ねるのは流石に遠慮するが。

 

「ルーミアと話しにわざわざ来たのか?」

「あ、いえ!実は霊夢さんに呼ばれてルーミアさんの封印リボンを作りに来たんですよ」

「封印リボン?」

 

封印リボンというのは、今のルーミアが付けている式神リボンではなくて前に付けていたリボンのことだろう。

今のリボンは式神の力を抑えるという効果を付与して俺が作ったリボンだ。元々のやつはルーミア自身が触れなかったので(妖怪の封印という意味では全く変ではないが)ルーミアが自分で外せるようにもなっている。リボンがなくとも俺が無理やり抑えればいいのでそういう設計となっている。

にしても封印リボンか…

 

「もしもの時のために持っときなさいって霊夢に言われたの」

「そうだったのか」

「はい!なので私も手伝うんですよ。ルーミアさんをきちんと封印するのって結構大変なんですねぇ…最初に封印した人は相当な手練だったんでしょうね」

 

早苗がそんな感想を呟く。

ルーミアに訊いても憶えてないと言われたのでどうしようもないが、きっと何百年も前の人物だろう。少なくとも霊夢が産まれる前なのでスペルカードルールがなかった時代。その当時に妖怪と渡り合える人物となると相当なものだ。日本で有名な存在として挙げるならば安倍晴明などだろうか。

 

「私は定晴の式神辞めるつもりはないからね?」

 

念押しするかのようにルーミアがそう言った。つい先日本契約をしたばかりだというのにここで辞めると言われたら驚くほかない。

 

「そうだ。定晴さんも来ます?結界の力が使えるんですよね」

「俺の結界は戦闘用に使う障壁のやつで、普通の封印術とかは出来ないぞ?」

 

俺の結界は結界とは名ばかりで、実際のところただの壁だ。結界=壁と言い切ってしまうとあまりよろしくないので俺の結界はモドキと言えるかもしれない。

勿論その壁で囲って中に浄化の力を流す…なんてことも出来ないことも無いが、霊夢や早苗が使うような結界とは少し変わってくる。俺はそう説明したのだが…

 

「うーん…」

「何か不満か?」

「いえ、不満というより…本当にそれだけなんですか?そもそも壁のように結界を張るというのも立派な使い方の一つです。それにそもそもそれだけしか出来ないはずがないんです。だって定晴さんは例の黒い影を倒すときに使った術があったじゃないですか」

 

影のあいつ…となると俺の固有結界である三千世界のことだろう。

確かにあれは結界の力を元にして展開している。なんせ固有結界という名前の通りそんな風に展開しなければ発動すらしないのだ。

だがあれは言わば無理やりしているに過ぎない。固有結界ではない術であのように結界の力を使おうとしても安定しない。固有結界という術に俺の力の殆どを注ぎ込んでこそ展開できるものなのだ。

 

「あれはちょっと特殊だからな…期待しないでくれ」

「そうですか…でもまあ今のルーミアさんの主として立ち会ってください!」

 

早苗が先程から妙に俺が一緒にいることを推してくる。まあ今日は昼から霖之助のところに行くくらいで、この時間に予定は一切ないから別に構わないのだが。

 

「んじゃルーミア、行くか」

「…分かったわ」

 

俺は財布と鍵だけ持ち、ルーミアは何も持たずに家を出る。俺の持ち出す、は幻空の中に入れるだけなのだが。何も持たずと書いたがルーミアも家の鍵は持っていることだろう。そも幻想郷で生活する上で常に持ち歩く必要があるものもない。ルーミアが化粧をするのであればもう少し必要な物も多かったのだろうか。

 

「では出発です!」

 

早苗が声たかだかに宣言する。出発と言っても俺の家から博麗神社はぶっちゃけ近い。空を飛べば一分もかからないくらいだ。

三人ほぼ同じタイミングで飛びあがる。前は乱れて飛びにくいと言われた風も今では一切の漏れもなく扱えるようになった。幻想郷に来てからも何故か戦闘がやたらと多いのである程度日頃から訓練しておかなければ非常時に使う事ができないと思い妖夢の剣術修行の途中で俺も自分自身の特訓をしていたりする。

 

「ふふーん♪」

 

早苗は上機嫌だ。鼻歌すら歌っている。

幻想郷に来てから結構な数の女の子に会ったが、未だに乙女心というのは分からない。男性には一生分かるものではないのだろう。ある意味では男性にとっての幻想なのかもしれないが。

ふとルーミアを見てみると何やら思い悩んだような顔をしている。

 

「どうしたルーミア?」

「へっ!?な、何でもないわ。気にしないでちょうだい」

 

絶対何かあると思うが、本人が気にするなと言っているのだから俺からは何も言わないでおこう。女性の悩みを追及しすぎると嫌悪感しか抱かれない。

 

「本当に定晴さんの家と博麗神社は近いですねー」

 

早苗がそう呟く。確かにもう俺たちの正面に博麗神社が見えていた。

霊夢が境内の掃き掃除をしていて、あうんがそれを眺めている。

 

「よう霊夢」

「あら、定晴さんもいらっしゃい。早苗、さっさと準備しなさい。向こうに置いてあるから」

 

早苗が霊夢にそう言われて神社の裏へと走っていった。

俺はそれを眺めた後に境内を見渡す。ここでは黒病異変の時にそれなりに激しい戦闘があったはずなのだが、それの痕跡は一切見当たらない。戦闘終了時点で既にあまり傷は無かったのだが、わずかにあった傷すらも無くなっている。きっと紫が修繕したのだろう。紫にとってこの神社は大切なものなのだ。

 

「定晴さんも手伝ってくれるのかしら?」

「いや、俺に手伝えることはないんだ。早苗に立ち会ってくれと頼まれてな」

「ふーん?ま、いいけど」

 

そう言うと霊夢は集めた落ち葉を回収し箒を置いて早苗の向かった場所へと歩いて行った。

俺とルーミアもそれについていく。早苗が待っていたところには前にルーミアが着けていたリボンとよく似たものが置かれていた。同じものではない。

 

「懐かしいわね…一年も経ってないはずなんだけど」

 

ルーミアの暴走は今年の夏の少し前。去年は結構気楽な生活を幻想郷で送ったが、今年は一年の内容が濃すぎて確かに懐かしい。

 

「それじゃ始めるわよ」

 

霊夢がそういうと霊力の流れを感じることができる。早苗と霊夢の両方から強い霊力が放出され、リボンの周囲を囲っていく。

二人掛かりでの作業だが、それでも若干苦しそうに見える。

 

「…霊力のサポートは必要か?」

「ちょうだい!」

 

霊夢がそう言うので俺も霊力を放出しリボンの周囲を囲う。

すると霊夢が一気に力を込めた。リボンに封印術を施したのだろう。数秒もすればあれだけ溢れていた霊力が収まり、リボンだけが残っていた。

 

「はい、一応これは渡しておくわね」

「ルーミアが触っても大丈夫なのか?」

 

たしか前のリボンはルーミア自身では触ることができず、だからこそルーミア自身では解くことができなかったのだが…

 

「触れるわよ。というか私達二人でもそこまでの強い封印は出来なかったわ。定晴さんの式神ではなくても封印ができるというだけよ」

 

霊夢がそういうのでルーミアもリボンを受け取った。今ルーミアが着けているリボンは俺が作った物で、デザインも違う。ルーミアはどちらの方がお気に入りなのだろうか。

俺の視線に気が付いたのかルーミアが少し恥ずかしそうにボソっと言った。

 

「ご主人様のに、決まってるでしょ…」

 

霊夢と早苗には聞こえていなかったようだ。

ルーミアの可愛らしいところを見て俺も少し嬉しくなるのであった。

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