ifの方にあった話は削除しました
季節外れですけど仕方ないよね
もう十二月も終わりかけ、クリスマスの季節だ。
「おー、寒いな…空を飛ぶのもこの季節は嫌だぜ…」
「そりゃ冬だからな、諦めろ」
俺は今魔理沙と共に幻想郷の空を紅魔館に向かって飛んでいる。理由は簡単、今日の夜そこでクリスマスパーティをするから俺達に手伝ってもらいたいと咲夜たちに言われた。魔理沙は嫌々だったが、手伝わないと参加させないと霊夢と咲夜に言われたため付いて来ている。
パーティをするにあたってその準備の手伝いをするのは当然だと思っているので、魔理沙には諦めて素直に手伝ってもらうとする。
「何で私が手伝いなんか…私は皆を盛り上げる役で全然十分じゃないか。私がいるだけでパーティは楽しいものになるんだぜ?」
「だぜ?じゃねえよ。確かに魔理沙は盛り上げるのが上手かもしれないが、パーティが始まらなければ意味ないだろ?早く準備を終わらせて始めた方が魔理沙だって楽しいだろ」
魔理沙が俺の言葉にムムムと唸っている。
そもそもクリスマスなんて何もしなくても皆気分が上がるものだ。魔理沙が盛り上げなくても、勝手に進んでいくので魔理沙が無理やりに盛り上げる必要はないのだ。それに今日は魔理沙以外にも盛り上げ役に適している人材は多い。魔理沙一人楽するわけにはいかない。
「ほら、見えてきたぞ」
「うへー」
門番をしていた美鈴(今日は珍しく起きていた。やはり幻想郷の低い温度の中で眠るのは危険らしい)と挨拶をして俺は厨房、魔理沙は会場である大部屋に向かう。魔理沙はキノコ料理しか上手く出来ないので、俺が厨房で咲夜、妖夢と共にケーキや肉料理などのパーティ料理を作ることとなった。
なぜあそこまでキノコ料理が上手に作ることができるのだろうか。咲夜たち料理上手組ですらキノコ料理に関して言えば魔理沙に及ばないと言う。謎だ。
「あ、こんにちは!定晴さん」
「いらっしゃいませ、定晴様」
俺が厨病に到着すると既に咲夜たちは下準備を進めていた。流石に本格的に料理を作りだしてはいないようだが、今すぐにでも始められそうな気配だ。
確認のためにも一応二人の進捗を聞いてみる。
「よう、二人とも。どんくらい進んだ?」
「材料、道具、全て揃っています。今すぐにでも始められますがどうします?」
咲夜の手元には今夜使う予定の食材が並んでいた。
パーティということで大人数で食べることができるパーティ料理だ。立食形式で自由に食べれるようにということでそんな料理を作ることになった。
幻想郷の宴会は皆が自由な場所で好きなように食べたり飲んだりするのが主流なので、コースみたいなものよりもこちらの方が好まれるらしい。紅魔館でやる理由は、冬に外でやるのは流石に寒いからとのこと。寒いのが得意なのはチルノとかレティとかそこらへんの冬好きの妖怪くらいだろう。
俺は時計を確認した。パーティ開始予定まで一時間…
「早い事に越したことはない。早速取り掛かろうか。早く完成しても咲夜の能力でどうにでもなるだろ?」
「ええ。じゃあ始めましょうか」
こうして三人の料理が始まった。
妖夢が食材を剥いたり切ったりし、咲夜が煮たり焼いたり…そして俺が仕上げの部分をしながら二人のサポート。正直に言おう、ものすごく大変であった。
実際料理が終わったのはパーティを始める十分前だった。後はこれを会場に運ぶだけなのだが、ここで俺の幻空が役に立つ。あら不思議一回運ぶだけで全て持っていけるのです。咲夜の時止めを使った配膳は周囲から見れば一度に全てを持ってきたように見えるが、実際のところは咲夜が何度も往復をしている。俺の幻空に入れて持ち運ぶ方法の方が負担が少ないのは見るからに明らかだ。
俺は料理を全て幻空に詰め込んで会場に向かう。会場の扉を開けると最初に飛び込んできたのはやや大きめのクリスマスツリーだった。葉の部分には多くの装飾が施されていてとても眩い。ツリーの頂点には一際大きな星が輝いている。
「おーい、机はこっちよー!」
俺がツリーを見ていたら横から霊夢の声がかかった。
「よう、霊夢」
「さあ、早く美味しい料理を出しなさい!」
「はいはい」
用意されていた大きめの机の上に料理を並べていく。ケーキ、七面鳥、サラダ、ピザなどなど。出すごとに美味しそうな匂いが周囲に広がりお腹が空いてくる。匂いに釣られたのかどこからともなくフランとレミリアがやって来た。それに幽々子も。妖夢は先にこちらに来ており幽々子を抑えていたのだが、どうやら料理の匂いに負けたようである。
「美味しそうな料理!まだ食べちゃだめなの?」
「まだよ、フラン。もうそろそろで全ての準備が終わるからもうちょっと待ちましょう?」
「はーやーくー!」
レミリアが窘めているが、フランはもう我慢の限界らしくその場でぴょんぴょん跳び出した。外の世界の子供達となんら変わらない反応をしていてとても面白い。幽々子も似た反応なのは解せない。紫が言うには幽々子は紫と古くからの付き合いというので相当な年を生きてきているはずなのだが…
「お疲れ様、定晴」
「ルーミアもここで皆の手伝いをしてたんだろ?お疲れさん」
ルーミアが横に来て俺を労ってくれた。
ルーミアを含むチルノ筆頭の子供たちも来たいと言っていたのでその対応をルーミアに任せていた。チルノたち…というかチルノは大人から指示をされるより大妖精のように同じ子供たちから言われたことの方が話を聞いてくれる。そのため大妖精はストッパー役になれているわけだが、それはともかくルーミアも(見た目は)同じ子供としてチルノたちと一緒に手伝ってもらった。チルノたちは今は準備を終えて余った飾りつけなどで遊んでいる。
「頼まれてた箱だよー」
「それはそこに置いておいてくれ」
早苗と諏訪子、神奈子が大きな箱を持ってきていた。藍が三人に指示をしているのだが、そんな四人を興味深そうに見ているのはフランたち子供だ。
実はあの箱にはプレゼントを入れる予定なのだ。今は何も入っていないのでフランたちが開けたところで何も手に入れることができないが、いざプレゼント開封の時間になったら紫がスキマを使ってプレゼント箱の中に物が送られるという算段だ。その箱のラッピングを三人はしていたようである。
ふと部屋の端を見ると霊夢と水那が話していた。
「…」
「ほら水那、あんたも楽しみなさいよ」
「えっ、いえ、その…こういうのは初めてなので…」
話の内容は聞きとれないが、どうやら終始無言の水那に霊夢が楽しむように言っているようだ。宴会にも何度か参加したが、未だに水那はそういった騒ぐという場面に慣れない。落ち着いた性格というのは元からのようだが、やはり楽しむという行為に中々馴染めないようである。外の世界でずっと楽しむとは離れたことをしていたので当然ではあるが、幻想郷流の楽しむ方にも博麗の巫女として慣れる必要があるだろう。
「それじゃ皆さん、始めますよ〜」
妖夢の緩い掛け声と共に、全員の手元に小さなクラッカーが現れた。
「ほら、皆このクラッカーを持って」
「紫?いつからいた?」
準備の間は知らないが、紫は俺が来たタイミングではいなかったように思える。だが紫はどこからともなく現れるのでそんな情報は無意味なのだが。
「あら、失礼ね。ツリーの木の準備とかしてて忙しかっただけよ」
「おっと、そりゃ失敬」
やはり紫はいつの間にか来ていたようだ。因みに従者の藍はというと、俺達は料理の方に回ってほしかったが、それではこちらの無邪気組を抑えられないと判断しこちらで会場の準備を手伝ってもらっていた。フランの様子を見るとそれが正解だったように思える。
紫からクラッカーを受け取り前方に構える。皆も同じように構えて…
「掛け声は定晴がして?」
「え、俺かよ!えーと、皆は別に宗教とか気にして無いだろうし、今日は取り敢えず盛り上がろう!それじゃあ…ハッピークリスマス!」
「「「いえーい!」」」
クラッカーが一斉になり、パーティが始まる。
「ん〜美味しいわ〜」
そして誰よりも早く料理に動いたのは幽々子。
食に関して言えば子供よりも子供っぽい彼女は妖夢を振り切って既にピザを食べていた。
「お姉様、プレゼントは?」
「まだよフラン。もう少し待ってなさい」
日本の場合は寝ている間に枕元…というのが主流だが、海外の場合は寝ている間にツリーの下に…が主流だ。ただ今回はそのどちらでもなく、パーティの間にプレゼントをあげる時間を設けている。それまではお預けだ。
五歳しか変わらないはずだが、レミリアには無くてフランにはプレゼントがある。レミリア自身特に欲しいものはないし、大人っぽくいきたいのだそうだ。
「騒がしいわね…」
ルーミアが呟く。
ただ俺はこの騒がしさが幻想郷の美点であると、そう思うのであった。