東方十能力   作:nite

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百八十五話 年越しに、片付けを

「ご主人様、これはー?」

「…ダンボールにいれてくれ」

 

今日は大晦日前日。

家の中を掃除していた。幻想郷に来てあと数ヶ月で二年が経つ。一年目に比べて二年目は中々にハードというか濃密というか…ずっと一人暮らしだったのが、ルーミアが来て二人になったのが一番の変化だろうか。

 

「ご主人様、これも剣?」

「まあそうだな。それは模造刀だ、こっちに置いておいてくれ」

 

幻想郷に来てからもちらほら、外の世界から持ってきたもの多数…去年は億劫で出来なかったが、今年はルーミアに言われて重い腰をあげた。

ルーミア自身の私物は、この家に住むようになってから多少増えはしたものの少なくすぐに終わらせ俺の手伝いをしてくれている。幻想郷に来たときにある程度は片づけたのだが、倉庫の奥からまたもや未開封のダンボール箱が出てきた時は驚いた。

ルーミアが大きな布を広げて首を傾げた。

 

「…?」

「ああ、それは裁縫用の布だ。あとで持っていくからそこに置いてくれ」

 

俺は手芸も出来る。今ルーミアが付けているリボンだって俺が作ったものだし、頑張れば服なんかも縫える。昔仕事で裁縫をすることになって必要になった布が今頃出てきたのだろう。

 

「…ふふっ」

「どうした?」

「何でもないわ」

 

何かルーミアが俺から見えない位置に隠した。何やら気になるところだが、ルーミアのことを信じることにしよう。うん、なんか凄い嫌な予感がするけど。

この時ルーミアは俺の幼い頃の写真を隠していた。それを俺が知るのはもう少し後になる。

 

「ふぅ…で?ご主人様はいつ永遠亭に行くのかしら?」

「うっ…」

 

…精算しなければと思いながらも放置してきた問題。

どうにも俺は月の民と関わるのが苦手なようで、どうしても後回しにしてしまう。ルーミアに言われなければまだまだ放置していたに違いない。

最近俺が嫌だと思ってることや後回しにしていることをルーミアに言われることが増えた。おかげで俺は今掃除をしている。

 

「はぁ…ご主人様は外の世界で交渉人みたいな仕事も掃除屋もしてたんでしょ?なんで今更嫌がるのかしら」

「仕事なら責任と信頼があるからだ。私事と仕事は別なんだよ…」

 

俺が外の世界でやっていたなんでも屋みたいな仕事は、信頼がなければやっていけない。勿論それはどの仕事でも言えるのだが、なんでも屋というアバウトな職業だと近寄ってきてすらくれないのだ。基本どんな依頼も受けて達成しなければ続かない。

 

「もう…私も付いていくから、今から行くわよ」

「えっ、ちょっ…」

「ほーら!早く準備してきなさい!」

 


 

掃除も中程で永遠亭に行くことを強要された。

今は迷いの竹林を歩いている。今日の案内役はてゐである。

 

「いやー、まさかあの月の人達と険悪になる人がいるなんてねー。賢者様でも姫様たちと比較的いい感じに付き合えてるのに」

 

紫は過去に月へ侵攻をしたことがあるらしい。そのため紫自身は月に対してあまり良い印象を持っていないだろうと思っていたが、案外仲良くやっているようだ。

 

「今日は悪戯はなしか?」

「今日は忙しいのでな〜し。本当は案内をする暇もないんだけど仕方なくね〜」

 

飄々としながら質問に答えるてゐ。てゐはこの竹林にいる沢山のイナバたちの管理などもしているらしく、今日はイナバ全員に渡すものがあるらしい。何を渡すかは知らないが、この竹林で自由に生活しているイナバ一匹一匹を見つけて渡すのはさぞ大変だろう。

妹紅の所にいったのだが、貼り紙に人里へ行っている旨が書かれており、こちらとしても仕方なくてゐに頼んでいる。道を覚えることが出来ればいいのだろうが…

 

『どうだ狂気、覚えられそうか?』

『…広いし分からん』

 

とのことなので少々難しそうである。

てゐと雑談をしながら歩くこと数分、永遠亭までやってきた。

 

「んじゃ私は面倒事になるまえに退散するからねー、帰りは鈴仙にでも頼んでねー」

 

そう言うとてゐは竹林の中に消えてしまった。

俺達が竹林に入るときはたまたま外にいたから良いものの、竹林の中にいるてゐを探すのは難易度が高すぎる。

 

「っ…」

「ほーら、行くわよ定晴」

 

俺の背中を押すルーミア。

どうやら誰が聞いてるかも分からないから周囲に人影がなくとも名前で呼ぶという風にルーミアは決めたらしい。そのおかげで今は家の中でのみご主人様と呼ばれている。

 

「あー…失礼しまーす…」

「はぁ…」

 

くそ…気が動転していたとはいえ初対面で剣を突き付けた過去の俺を殴りたい。依姫や豊姫のような人もいるのは分かっているが、どうしても月の民に対して過剰に反応してしまうのだ。

 

「あら、珍しいわね。もう来ないと思っていたわ」

「よう、永琳」

 

何かしらの液体が入った瓶を手に持ったまま歩いてきた永琳。その後ろには永琳の弟子である鈴仙もいる。

 

「えっと…」

「まあ貴方が気まずくなるのは分かるわ。だって初対面で斬りかかられたのだもの。でも話を整理してある程度は理解したし、そもそもあれもう一年以上前の話よ?そんなに気にしてられると困るんだけど」

 

永琳にそう言われて申し訳なく頭を下げる。

幻想郷で一番の診療所はここだと聞くし、そこの医者と険悪なのはいけないと思っていつつも放置してきたが、俺が考えているよりきちんと情報整理をしてくれていたようである。

 

「それでね、今日は貴方に会ってほしい人が丁度来ているの」

「え?」

「相手にはずっと秘密にしていたのだけど、折角だから今日合わせてあげようと思って」

 

それだけ言って永琳は廊下を歩いていく。鈴仙が手招きしているので俺とルーミアも付いていく。

 

「ちょっとここで待っててちょうだい」

 

永琳にそう言われて立ち止まる。永琳はすぐ横の部屋へと入っていった。この部屋の中に俺に会わせたい人がいるのだろう。

 

『貴女たちに会わせたい人がいるわ』

『私たちに?』

『そうなのよ。入ってきていいわよー』

 

永琳に呼ばれたので部屋へと入る。

永琳は二人の女性の前に座り笑っていた。その二人の女性と言うのは…

 

「嘘っ…」

「さ、さだ…はるさん?」

「依姫、豊姫!」

 

月のお姫様だった。

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