今日は大晦日、年越し三時間前だ。
幻想郷のやつらは何かあれば理由をつけて騒ぎたがるので、今日も今日とて宴会だ。本日の宴会は始まってから既に三時間が経過していた。
年越ししても宴会は続くだろうから今回は九時間くらいの長さになることが予想される。
「定晴、飲まないの?」
「幽香は飲みすぎじゃないか?」
俺は今幽香と飲んでいた。
目の前には俺が作ってきた宴会料理が置かれており、幽香のそばには既にビール瓶が三本ほど転がっている。全部幽香一人で飲んだものだ。俺はまだ一本分も飲んでいない。
「幻想郷に慣れるとね、自然と飲む量は増えるものよ。定晴もたくさんの酒に慣れなさいよね」
「いやそれは慣れてはいけないやつだろう…」
幽香の戯言(酔っているのか真面目なのかいまいち分からない)に付き合いつつ自分のペースで酒を飲んでいた。
宴会のピークは勿論年越しのタイミングだ。だがこの時間でも結構人がいて、空き瓶も増えてきている。果たして最後までこの熱は持つのだろうか。
「んだと!」
「やんのか!」
とまあこのように酔った妖怪同士が急に弾幕ごっこを始めることもある。俺も流石にこれには慣れたので流れ弾には当たらないが、料理に弾が当たるのは勘弁してほしい。俺の周囲に結界を張り防いでいるが、何度もあると鬱陶しくなってくる。
「イライラしないの、これが幻想郷流よ」
「俺はこの風潮を作ったやつを張っ倒したいよ」
まあ本当にイライラしているのは俺よりも俺の中の狂気なわけだが。
「ほら、酒を飲めば気にならなくなるわ」
幽香がやたらと酒をおしてくる。こんなに酒が好きなやつだっただろうか。
「そうだー!飲め飲めー!」
「飲むんだよ!」
いつもの鬼、萃香と地底から上がってきた勇儀も酒をおしてきた。この二人はいつも通りだ。萃香なんて宴会じゃなくとも酒を飲むことをおしてくるのだ。気が弱い人であればすぐに酔いつぶれてしまうだろう。
「なあ幽香ってもう酔ってるだろ?」
「そうねぇ…ふふ、どうかしらね?」
絶対こいつ酔ってる。
まあ今はふわふわしてるだけっぽいし放置でいいだろう。寝てくれたりしてくれれば楽だが、まあ暴れたら気絶させるなりなんなり出来ることもある。
「定晴も酔いなさいよ〜そしていつも言わないことも言っちゃえ〜」
「お前そんなキャラじゃないだろ!」
「ふふふ〜知らないわよ〜」
段々キャラが崩壊してきた。今までの宴会でもここまで酔ってる姿は見たことがない。年越しということではしゃぎ過ぎたのだろうか。
「…」
「幽香?」
なにやらボーッとしだした。眠たいのだろうか。
と思ったら急に真剣な顔になって話しだした。
「今から真剣な話をするわよ」
酔っているやつに真剣もなにもないとは思うのだが。
「定晴は…妖怪と人間の恋愛が成就することがあると思う?」
幽香がその質問を口にした瞬間、周囲にいた妖怪たちが反応した。やはり妖怪としては気になる…意識せざるをえない問題なのだろう。例え色恋沙汰に興味がなくとも、人間と妖怪の人間関係について興味を持っている妖怪も多いのではないだろうか。
人間と妖怪の恋愛…成就しないということはないだろう。霖之助だったり慧音だったり…生まれは分からないが、なにかしらあって人間と妖怪のハーフとなっている。であれば人間と妖怪がどこかで交じったことに他ならない。
だがそれを見て成就すると決めつけるのは早計だろう。だって大多数の人間にとって妖怪は恐怖の対象だ。むしろそうでなくては妖怪もその姿を保てないように思える。なぜなら妖怪は人間に恐れられて生まれるものだからだ。
それでも妖怪に意思はある(例外もあるが)ので人間に焦がれることもあるのだろう。さてさて、それが果たして成立するかというと…
「するんじゃないか?そういう種族を越えても想い焦がれるのなら、人間がちゃんと理解をしてくれたら、成就することもあるだろう。まあ全体の一割にもならないだろうがな」
俺がそう意見する。
結局のところ当人の問題だ。そして総数がいくらあるか知らないが、たくさんあれば実現することもあるだろう。ならば結論としては成就する、こともある、なのだと思う。
「ふーん…」
「にしても何で急に?もしかして幽香好きな人間でもできたか?」
俺がそう訊くと幽香は黙り込んだ。
流石に今のはデリカシーがなかったな。友人同士とはいえ人間関係について追求するのはよろしくないな、反省。
と、幽香が顔を上げて深呼吸を始めた。どうした急に。
「ね、ねぇ…」
「なんだ?」
そして爆弾を投げた。
「私の好きな人はあなたよ。定晴」