東方十能力   作:nite

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百八十九話 縛られない人生

年越しを終えた俺とルーミアは家に戻っていた。一部妖怪はこのまま朝まで飲むらしいが、俺はそんなつもりもなく家に帰った。年越しとはいえ朝までオールナイトはしない。体力的には問題ないが、気分的にあのテンションを続けるのはハードなのだ。

 

「ふぅ…やっぱり多めに飲んじゃったな。ルーミア、大丈夫か?」

「…」

「ルーミア?」

「へ!?大丈夫よ」

ルーミアも酔っているようだし眠くなったのだろうか。

さっさと風呂に入って俺も眠ることにしよう。

 


 

ご主人様が風呂場に向かった。酒を飲んだばかりで風呂というのはどうなのかとも思うけど、鬼たちは風呂酒なんてこともしているようだし妖怪とかはするのかもしれない。

私の酔いはとっくに覚めている。どれだけ酔おうともあんな告白を耳にすれば酔いなどどこかに行ってしまう。

幽香は途中私をチラッと見ていた。あと早苗とか数人を。いつの間に気がついたのだろう。私なんてほとんど会っていないというのに。早苗にも言われたけど私って分かりやすいのかなぁ…

 

「…どうしようかしらね」

 

まあ別にご主人様が誰と結ばれようが構わないし、私は式神を続けるだけだし…

あーあー、もう、私はいつからここまで惚れ込んでいたのか。ご主人様が誰か他の女性と一緒に生活してるところなんて、不快だ。

 

「他の人の動きも見てみないと分からないわね…」

 

そうボソッと呟く。

ありがたいことに私はご主人様と一緒に住まわせてもらってるのでチャンスは他の人の何倍もある。少なくとも一回は顔を合わせて話をする事ができるのだ。時間は多い。

これを期に他の女性の動きをチェックするのもいいかもしれない、私はそう考えて風呂の準備を始めた。

 


 

「ふぅ…」

 

風呂に入り声が漏れる。

だがあまりリラックスできているようには思えない。幽香からの告白で頭がいっぱいだ。

俺は恋愛が出来ない。誰かとずっと一緒にいるというのが出来ない。

原因は…性格だろうか?俺は昔から一人が好きだった。そして能力を得て一人でも十分に生きていけるようになったらすぐに親元を離れた。それが大体高校の三年くらいだろうか。ちょっとだけ無理やりに高校を卒業という形で中退し、一人で生活し始めた。

最初は楽しかった…と思う。誰にも縛られない生活というのは子供なら、大人でも誰もが夢見るものだろう。俺の場合は能力を上手く扱えるようになるまで練習しつつバイトなんかをして生活をした。俺が持っている様々な知識や技能はそこで身につけたものだ。

能力を上手く扱えるようになり、お金にも余裕が出てきたらネットを使って仕事を始めた。それがいわゆるなんでも屋である。

さて、高校を無理やり卒業してから起業するまで俺はずっと一人であった。するとどうなるか…誰かと合わせることが出来なくなる。恋人、いやそうでなくとも親しくなった人と一緒に生きるなんてのが難しくなった。ルーミアはというと特に俺が合わせなくてもよく、本当にただの居候のようなポジションなので困らないが…

 

「つかまあ俺に完全に合わせることが、俺が追いかける必要がある人はミキだけだよなぁ…」

 

あいつは特例だ。紫もそうだ。

二人とも次元移動くらいなら簡単にできてしまう規格外であり、ミキに関しては本気で戦っても一度も勝てたことが無い。

だがそのぶんあいつらは自由だ。何にも縛られないとは言え現代社会で生きるならお金や信頼など様々なことに制約がつく。それがはっきりと分かったのは起業してからだが、一度始めたことをやめることもできず続けていた。まあ幻想郷に来るにあたってホームページに営業終了の文字をいれてきたがな。

 

『なあ定晴』

『どうした狂気』

『お前…なんか変な魂取り込んでないよな?』

 

何を言っているんだこいつは。魂を取り込むなんてことすら俺は知らない。

そういえば狂気のやつはいつの間にかいた。俺が仕事をやってイライラし始めた時、こいつがいつの間にか現れていて俺はその後イライラしなくなった。どうやらこいつが俺の狂気的な部分を肩代わりしているらしい。

 

『ああそうだ。しかし取り込んでいないとしたらあいつは…』

『どうしたんだ、珍しい』

『…今はいい。何かあったらお前にも伝える』

 

狂気がこうも焦っているのは珍しい。俺の魂に何かあったのだろうか。

そういえば、俺は他人にあまり過度な好意を抱かない。そして過度な好意に気付けない、らしい。

俺は一人が好きで、これまでの事情があったからなのだと思っていたのだが、狂気曰くそれでもある程度は持つようになるから流石に異常だとのこと。

もしその原因が分かって、俺も好意を抱くようになれば、もしかしたら告白を受けていい返事もできるのかもしれない。

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