東方十能力   作:nite

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十二章 幻想郷包囲網
百九十三話 堕ちていく


今日はお兄様が紅魔館に来てくれた。今日はルーミアちゃんは一緒じゃないみたい。事情を聞いてみると、どうやら式神としての繋がり云々で八雲さんのところに行っているみたい。

こいしちゃんも来てないし、今日はお兄様を独り占めできる!最近ルーミアちゃんが一緒にいることが多いのでちょっと嬉しい。ルーミアちゃんはあれかな、私に睨みでもきかせてるのかな。別にお兄様を異性として意識したりしないって。

まあそんなわけでお兄様一人なので今回は私の部屋に招いた。地下の方じゃなくて地上の方の普通の部屋だ。わざわざ地下の方にお兄様を連れて行きたくないっていうのが本音。

 

「んで、何するんだ?てっきりまた弾幕ごっこかと思ったんだが」

「最近咲夜が買ってきてくれたボードゲームがあるの。一緒にやりましょ?」

 

咲夜が香霖堂で見つけてきたボードゲームは双六みたいなやつ。外の世界のものが流れ着いたらしく、お兄様は懐かしそうにしていた。

本当はもっと大人数でしたいんだけど…なんだかお姉様や咲夜たちの様子が変なのだ。お兄様が来ても作り笑いみたいな顔で、抑揚もない声で話す。私には普通なんだけどお兄様に対してだけ変なのだ。咲夜なんていつもはお兄様が来る度にソワソワしてるのに…

怖いから今日は咲夜でもこの部屋にいれないようにしてる。先月もお兄様は事件に巻き込まれたばかりだし、妙な気を使わせたくない。

 

「妹様、定晴様、お飲み物をご用意しました。クッキーもありますよ」

「扉の所に置いておいてー!」

 

やっぱりお兄様のことを呼ぶときは突然感情が抜け落ちたような声をしている。お兄様もそれに気が付いたのか怪訝そうにしているけど…あまり気にしないことにしたようだ。

私は扉を開けておぼんに乗った飲み物とおやつを部屋の中に運び込んだ。私は分からないけど毒とか入ってたりしないよね?まあお兄様には毒は効かないみたいだし、そんな小細工はしてこないか。

怖いなぁ…

 

「どうしたフラン?」

「な、なんでもないよお兄様!」

 

気を遣わせちゃった。自分のことはあまり関心がないのに人のそういう部分にはすぐに気が付いてくれる。そんなところに少しドキドキしてみたり?なんかそんなのがパチュリーの持ってた本に書いてあった気がする。意外と彼女は小説好きであったりもする。

受け取ったクッキーはなんの変哲もない普通のクッキーだった。味もいつも通りだし毒もない。私の気にし過ぎなのかな…でもなんとなく嫌な予感というのを私は感じていた。

ボードゲームはお兄様の勝ち。やはり元々ルールを全て把握していることが勝敗を分けた。今思えば私、あまりお兄様に勝てた記憶がないな…弾幕ごっこでは私を満足させるためか負けず勝たずの戦いをしてくれてるし…いつか本気で勝ってみたい。そんな思いが湧いてきた。

 

「それじゃあお兄様、次は…」

 

っ…!

今私は何を感じた。なんだか嫌な予感を、悪い部分だけをぶつけられたような感覚が私を襲う。そしてそれはお兄様にも感じられるものだったらしい。

 

「…フラン、一度扉を開けてみようか」

「…うん」

 

私は扉に近付いて動かそうとした。しかし動かない。どうやら外から固定されているようである。でも…なぜ?やはりお姉様たちの様子がおかしかったのが原因なのだろうか。

 

「…ごめんねお兄様」

「なんでフランが謝るんだ」

「また事件に巻き込んじゃったみたい」

 

そもそも今日の来訪は私が求めたもので、私が我慢してたらこんなことにならなかったのに。お兄様がまた傷付くかもと思うと心がキュッとなってしまう。そのままドカンとはできないけど。私も流石に実体のない概念的な部分をドカンはできない。

なので実体のあるものをドカンとさせてもらう。

 

「ドッカーン!」

 

私の部屋の扉を粉砕した。私を閉じ込めたいなら素材に一切の目がない壊れないものを用意することね。

扉が吹き飛ぶと同時に妖精メイドたちが弾幕を放ってきた。しかも妖精ができるような密度ではない。強化魔法…?

 

「フラン!」

 

お兄様が結界を張ってくれて全て凌いでくれた。でも扉から外に出るのは大変そう。むむむ…仕方ないよね。咲夜も変だったしあとで許してもらえるはず!

 

「ドッッカーン!」

 

窓を粉砕。お兄様でも通れるような大きさの穴が開いた。

外はまだまだ陽射しが照っていて私には危ないんだけどお兄様が結界でなんとか陽射しを遮ってくれるらしい。日傘は玄関ホールに置いてあるし今はお兄様に甘えよう。

 

「行くぞフラン」

「うん」

 

離れないようにお兄様が私のことも運んでくれるみたい。でもここでお姫様抱っこを選択するのってこれお兄様の素なのかな。わざとならそれはそれで恥ずかしいけど素ならもうこれは天然の女誑しだ。ああ、色んな人がお兄様に惚れている理由が何となくわかった気がする。

お兄様に抱きかかえられたまま森を抜けて霧の湖に出た。そして一瞬、誰かの姿が木の後ろに見えたと思った瞬間…メザメタ。

 

「あっ…ううう…」

「フラン?大丈夫か!」

 

っ…フフフ…なにこれ。お兄様に浄化して消してもらった狂気の残留思念みたいなのが凄い活発になって…テンションが変にナル。体の奥底から変なキブンにナッテきて段々とタノシクなって…

 

「だめっ!」

「フラン。落ち着け、どうした!」

 

私は…モウ…っ!!!

サダハルが…ニクイ…うっあ…お兄様は大切な人だから…コロシタク…違う。私のじゃない誰かの狂気が混じって…アハハ、ハハハハ!

 

「コロシチャウ!」

「なっ」

『定晴!狂気だ!離れろ!』

 

サダハルヲ……オニイサマ、を…殺す…なんで…?

 

「うっ…!」

「フラン!」

「私は…オイテッテ…このままじゃお兄様に迷惑を…カケチャウから…」

 

苦し紛れになんとか声を出す。既に自分を保つのも限界だ。

お兄様が苦しそうに、私を置いて行ってくれた。もう私は………ダレ?ワタシノイシキに入ってきてるのは?

 

「…サダハルよりも、先にアナタよ」

 

もうモドレナイところまで堕ちた思考と、最後の本当の想いが混じり…ワタシハコノキョウキノモトヲサガス。

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