東方十能力   作:nite

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一話 到着

「ふー、意外にあの中は気持ち悪いな」

 

周囲よりも少しだけ丘だった地面の上に降り立った彼は、空間の中の情景について文句を呟く。

 

「あれは他の奴らに力を示すためなのよ」

 

その横には空間(スキマ)を開いて頬杖をつく少女。見る人によってはなんでこんなところにいるんだと言いたくなるような存在である少女は、しかし、男に対してとても気さくだ。

そんな彼らの眼前には、現代日本じゃ考えられないような大自然が広がっていた。木々が生い茂る山々や、霧がかっている大きな湖。そしてなにより、まったく人の手が入っていない森。

 

「にしても凄い眺めだなこりゃ。まず家の場所でも探すのか?」

「いいえ、まず神社に向かうわ」

 

青年の質問に、否定で返す少女。

男は眉をあげつつ、その意図を問う。

 

「何で神社なんだ?家の方がいい気がするんだが」

「ここに来たら最初に行くべき場所なのよ」

「ふーむ…まあ、俺はここについて分からんしお前が言うなら行くか」

 

女性はただこの場所を見せたかっただけとばかりに、すぐに空間の裂け目を開く。

そうして二人はもう一度スキマに入っていく。

 


 

二人は大きな山の麓に来た。青年は降り立った目の前にとても長く、若干木々がはみ出してきているような階段があることに気付く。その上には神社の象徴とも言える鳥居が立っている。

 

「あれが神社なのか?」

「ええそうよ」

「なら何であそこに開かないんだ?」

 

当然のごとき質問をする青年。鳥居に向かうまでの参道も大切だとは思うけれど、ただ神社に行くだけなら階段の上に繋げた方が楽だ。そして、それは目の前の少女には簡単なことのはずだった。

少女は若干困った顔をしつつも弁明を行う。

 

「巫女と少し話をしないといけないの。だから先に行ってるわね」

「時間稼ぎのための階段かよ…じゃあ早めに終わらせてくれよ、紫」

 

ええ、と返事して紫と呼ばれた少女はスキマの中に戻っていく。今度は階段のうえに繋がっているスキマだろう。

さて、じゃあ歩いて登ろうかと青年が階段の方を向き、そして軽い絶望をした。

歩いて登ると何分もかかりそうな階段がそこにはある。登れば筋肉痛も視野に入ってしまう階段からは圧すらも感じる。

 

「…登らずに紫が戻ってくるのを待ってもいいかもなぁ…」

 

そして彼は疲れた顔をしながらもこの長い階段を登り出した。

 


 

見た目よりも何倍も長く感じた階段を登り切ったところでは、二つの声が聞こえてきていた。

どうやらまだ話は終わっていないらしいと結論づけて、青年は賽銭箱のほうへと歩く。

 

「ここ参拝客来るのかよ…一応神社だし参拝しとくか」

 

青年は文句を言いながら、ポケットの中の財布を取り出した。

 

「紫に両替して貰ったけど何がどんくらいの価値なのか分らんな。教科書とかに書いてある昔の日本と同じなのか?」

 

本来そこに入っているはずのお札やカードの類は一切なく、代わりに古めかしい銭が入っていた。現代的な財布とのミスマッチ感は否めないが、この場所ではこれが共通貨幣なのである。

青年は頭の中から頑張ってレートを引っ張り出して、銭を何枚か取り出した。

 

「確か一文二十円だっけか…まあいいや、あまり考える必要もないだろう」

 

そして賽銭箱に十文(二百円)入れた。そして本坪鈴を鳴らしたその瞬間、神社の奥の方から凄い勢いで突っ込んで来る人影が…

 

「やっと参拝客が来たのね!」

「うわっ吃驚した」

「ちょっと霊夢待ちなさい!」

 

赤い巫女服に、頭の大きさと同じくらい大きな赤いリボンが特徴的な少女だ。霊夢と呼ばれた彼女は、境内にいるのが青年だけであることを確認すると、彼の手を掴んだ。

 

「貴方ね!」

「え?まあお金入れたのは俺だけど」

「やっぱり参拝するならお金を入れるべきよね!あなたわかってるわねー」

 

鬼気迫る様子の霊夢が青年のことを褒めたたえるが、神社なら当然のことをしただけに、青年は困惑の表情だ。

困り顔をしつつ、青年は霊夢を声で宥めた。

 

「全然状況が分からないんだが」

「あら、定晴早かったわね」

 

神社の奥から姿を現した紫。彼女に定晴と呼ばれた青年は、引っ張るかのように手を掴んでいる霊夢を必死に止める。

 

「とりあえず説明してくれ!」

「ちょっと待ってて…霊夢、彼がさっき言った人よ」

 

紫が声をかけると、霊夢は今までのハイテンションを抑えて、定晴のことを眺める。

 

「ふーん貴方がねぇ」

 

胡乱な目で見てくる霊夢に若干の気まずさを覚える定晴だったが、そこに紫が声をかける。

 

「定晴、奥まで来てちょうだい」

 

霊夢に連れられ、神社の裏手まで回る。そこには、いかにも居住スペースといえる空間があった。どうやら、霊夢はここで寝泊まりしているらしい。

三人は畳の上に座ると、紫が定晴に声をかけた。

 

「ひとまず自己紹介ね」

「俺は堀内定晴だ」

 

いかにも日本人といった風貌だが、しかし、霊夢はその目線を緩めることはしない。

 

「まあ賽銭を入れてくれたからいい人だと思うんだけど、それにしたって感じる力が…「霊夢ー!遊びに来たぞー!」…はぁ」

 

霊夢がため息をついた原因は、空の向こうから飛んできた少女にある。跳んだのではなく、飛んでいるのだ。

いかにも魔女らしい服装に、帽子。トレードマークのごとく箒にまたがった少女は、霊夢に大声で声をかけている。その後ろには、箒に横座りしているこれまた洋風な服装を着た少女。

 

「本当に魔理沙はタイミング悪いわねー」

 

霊夢が不機嫌そうに呟く。

魔女の女の子…魔理沙が降りて霊夢に弄るような口調で問いかける。

 

「お?誰だぜそいつは、恋人か?」

「何でそうなるのよ!外来人に決まってるでしょ!」

 

魔理沙がシシシと笑うと、箒に乗ってきたもう一人の少女が霊夢のことを宥める。

 

「まあまあ霊夢、魔理沙だって冗談で言ったんだしそんな怒らなくても…」

「まったく、いっつも魔理沙は間が悪いわ」

 

魔理沙は定晴のほうを向きなおすと、どこからか取り出した小さい道具…八卦炉を向ける。

 

「外来人ならあれも知らないってことだな!」

「あれとは?」

「それはもちろん…」

 

知らないことについて「もちろん」と言われても定晴にはなんのことだかまったくわからないが、魔理沙は小さくためを作ってから宣言した。

 

「弾幕ごっこだぜ!」






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