暴走している妖怪が三途の川の水辺で人間の魂たちを襲っていた。それをいつもは船頭をしている死神たちが抑えようとしている。しかし魂を守りながらなので死神たちはじり貧そうである。
「ルーミア、加勢だ!」
「分かってるわ!」
身体強化で急接近、輝剣で何度も妖怪を切り裂いていく。だが本命は俺ではなくルーミアだ。闇が一度に何体もの妖怪を飲み込み、気絶させていく。
俺とルーミアという新しい脅威に気が付いた妖怪が最初こそルーミアに攻撃しようとしていたものの次第に逃げ出す者が現れ、最終的に全ての妖怪が気絶、もしくは逃げ出していた。
「ふぅ…大丈夫か?」
「いやー、助かったよ。あんた強いんだねぇ」
返事をしたのは死神の一人である小野塚小町。今日はサボらずにここにいたようだが、妖怪にやられたのか服が少々破れている。他の死神も同じくボロボロとなっており、それなりに激しい戦闘であったことを物語っている。
死神たちの目は正常だ。やはり只者ではない者達には不動の力も通じないということだろう。
「小町、ここらへんに俺と同じくらいの男性がいなかったか?」
「今日かい?うーん…」
どうも心当たりがなさそうだ。ここははずれか…
前回の最終局面では狂気が探知してくれたが、今は探知することができないという。どうもあいつの影響で狂気にのまれてるやつが多すぎて分からないらしい。どうせあいつは俺が幻想郷の妖怪たちに襲われて死ぬのを笑いながら待っているに違いない。奴も何かしら行動しているのは確かなのだが。
「じゃあ小町、さっきの妖怪たちの動きで不審だったことは?」
「不審?そりゃ全部不審さ。だってそもそもここには滅多に妖怪なんて来ない。なんせ妖怪は精神生命体だからね。ここみたいに魂とかなんとかが集まるところに並の妖怪が来れば体調を崩す。さっきみたいな弱い妖怪だと最悪命に関わるんだ。それでもここで魂を襲ってたってことは何かしら相当なことがあったと思うよ。ただ一つ思うのは、妖怪にとってただの人間の魂はまともなご飯にもならないってことさ」
どうやら先程の妖怪の襲撃は稀な出来事らしい。
あと小町の話の中で気になったことが、ここにいると妖怪は体調が悪くなるらしいのだが…ちらりとルーミアを見てみても特に気分が悪そうな様子はない。
ルーミアが俺の視線に気付き補足してくれた。
「私は定晴との式神の繋がりがあるから存在が結構安定しているの。それこそ八雲紫に境界を弄られるとかしない限り私が精神生命体としての部分で体調を悪くすることはないから気にしなくていいわよ」
どうも式神の繋がりというのは俺の思っていた以上にルーミア自身へのカムバックも多かったようである。俺とルーミア共にある程度地力が増えているわけだし、式神契約をして正解だったと改めて思う。ルーミアが全く嫌がっていないのも嬉しいことだ。
小町は溜まっていた魂たちを送り始めた。それに伴って他の死神たちも皆それぞれの持ち場へと散っていく。
「どうする?ご主人様」
「…不動を見つけるのと永琳のように協力してくれる人を探すのとどちらの方がいいと思うか?」
正直言って今の俺達の戦力は乏しい。永琳たちとて戦闘に参加してくれるわけではないだろうから、もし戦闘になった場合俺とルーミアしかいない。前回は霊夢たち複数の協力があったからこそあのように出来ただけであり、今回のように不動が逃げつつとなると俺達はまともに戦闘することも出来ない。
では協力者を見つけるというのはどうか。これには一つ明らかな課題がある。もし既に堕ちている場合話しかけるとそのまま戦闘になりかねないということだ。永琳の言っていた治療を施すことも出来るだろうが、その場合戦闘は避けられない。かと言って洗脳されていない者を遠目で判断するのは難しい。
「そうねぇ…正直どちらもあまり得策とは言えないわ」
「それは分かってる。だがこれ以外の選択肢なんて…」
動けない。状況は結構絶望的である。
選択肢はなく、はっきりと選ぶことも…
「お困りですか」
「ん?映姫…」
いつの間にやらそこには閻魔の映姫が立っていた。どうやら先程の襲撃騒動を聞いてこちらに見に来たらしい。
俺達が妖怪たちを鎮圧、その後の小町との会話で俺達が困っていることを察して話を聞きに来てくれたようだ。
「貴方に私の能力については話しましたっけ?」
「確か白黒はっきりつけるとかなんとか…」
初めて会った時に能力名だけは聞いたことがある。だがそれがどんなものかは分からない。
「この能力は迷いなく二つの事柄のうち一つを選択できるというものです。勿論必ず正しいものを選べるというわけではありませんが貴方の一助にはなるでしょう」
どうやら映姫はその能力を使って判断してくれるようだ。
俺は映姫に頼むと言って判断してもらうことにした。不動を探すか、協力者を探すか。
「それでは、貴方たちがこれからするべきは…」