「…犯人探しをするのがいいでしょう。今現在貴方達に協力してくれる者を捜すのは一苦労します」
映姫にそう言われ俺たちは妖怪の山にやってきた。やはり奴が隠れているとするならこの場所が最も怪しい。
俺達は哨戒している天狗に見つからないように慎重に山を登る。多分不動に近付くことが出来れば狂気が不動の存在を感知することが出来るだろうと踏んでいる。そのため天狗たち他の妖怪にバレないように妖怪の山をぐるっと回ることができればここに不動かいるのかいないのかがはっきりする…と思う。
『俺は万能レーダーじゃないからな』
『分かってるって』
まあ今回ばかりはレーダーとして働いてもらおう。
先日魔女が新しく来たので俺も出来ることが増やせるのではないかとパチュリーから借りている魔術書を再度読んで手数を増やしてきた。とはいえ火力の面では今尚不安が残るので補助系統を多く覚えたのだが。その中に探知魔法があり、対象のことを知っていれば基本的に分かるとのことなので怪しい場所では使っていくことにしよう。
「隠れろルーミア」
目の前を河童の一団が通った。それなりに大きい装置を何人かで運んでいる。表情から察するにこれから試験運用といったところか。
ハンマーのような形をしていて、純粋な妖力が込められているようだ。誰の妖力でもない、言うなれば真っ白な妖力である。ああいう妖力は乱れた妖力を落ち着かせたり出来るのだが、はてさて何に使うのやら。
「行くぞ」
河童たちが通り過ぎて、周囲には誰も残っていないことを確認して道なき道を進む。
大体は茂みの中を進んでいるのだが、山という地形上川や山道といったものが存在する。幻想郷では飛べる者が大半なので山道の方は少ないのだが、川の方は結構あってしかもそこには河童などの妖怪がいることが多い。
「ルーミア、こっちだ」
面倒なことになりそうな場所、開けた場所を避けつつ妖怪の山を進む。今のところ狂気も俺の探知魔術も反応を示さない。もしかして妖怪の山にはいない…?
「っ!」
と思った瞬間、狂気が騒いだ。俺も感じる。場所は…背後!
「しっ!」
輝剣を召喚し攻撃を弾く。結界を出す暇もないとは殺気高いな。
そこにいたのは鉈を持った女性。長くて白い髪をしており、見たことないような服をしている。まあ幻想郷でごく普通の服装をしている存在の方が稀有なのだが。
目は淀んでいて洗脳済みなのが分かる。
「あんた人間だべな?」
「そうだ」
いつもはここで名乗ることもあるのだが、今はもう大体の妖怪は信用できないので名乗ることはしない。これ以上やつに情報の一つも渡したくはない。
「坂田ネムノっていうだ」
「なぜ急に襲ってきた?」
輝剣を構えたまま警戒しつつ尋ねる。咲夜と比べてまだ話もできそうな雰囲気なので会話を試みる。もしかしたら何か不動に繋がるヒントがあるかもしれない。
「なんかそういう気分になっちまっただよ。普段は人間を襲うのもあまり無いんだけども…」
洗脳の深度は人によって違う、ということなのだろうか。
見ればネムノの手は少しばかり震えている。もしかして抑えつけている…?しかし一体何を…
「はぁっ!」
ルーミアが突然真上に攻撃。
見るといつの間にやら上に見知らぬ女性の妖怪が。天狗…ではないようだな。翼は生えておらず、幻想郷では見たことのない妖怪だ。
「不動さんのために、あなたには死んでもらいます!」
「ちっ!」
鋭い攻撃。
目が淀んでいるわけではなく、不動の存在を認知している。つまりこいつは協力者ということか。あいつ一人にできることにも限度はあるだろうから協力者もいるだろうとは思っていたが…まあ今はそれどころではない。
「ルーミア!山降りるぞ!」
一度離脱するしかない。ネムノは一応攻撃しようとする素振りはないので上空の妖怪に注意しておけば天狗くらいなら撒けるだろう。
「せい!」
ルーミアが上空の妖怪と撃ち合っている。どっちも見るからに致死性のある攻撃であり、気を抜けば死にかねない。
なんとか攻撃を掻い潜りながら山を降りる。開けたところまで出ることが出来ればあとはルーミアを抱えて身体強化と風の併用で高速ダッシュができる。ただ飛ぶよりも断然早く移動できるのだ。
「ふふふっ…」
「…?………っ!ご主人様!」
上を注視しすぎたせいで足元の穴に気が付かなかった。いつの間に…罠、か…
バランスを崩し妖怪の攻撃を弾くことにも失敗、急所には当たらなかったが足に直撃。そのまま穴に落ちてしまう。
ルーミアの声を聞きながら、俺は穴を落ちていき…
「っ!」
「姫様?」
「……今のは…」