東方十能力   作:nite

206 / 503
二百三話 c2…失態

さて、特に攻撃をされることもなく妖怪の山に到着した。

天狗たちが騒いでいる様子はないけど天子はどこにいるんだろう。あいつのことだからこそこそと行動するのは向いていないはずだし、行動しているのなら天狗たちが騒いでいてもおかしくはないのだが…

 

「考えても仕方ないわね」

 

取り合えず守矢神社まで飛んでみることにする。あそこの神とか早苗が無事かを確認することも無益なことではないはずだ。もし襲って来れば昔のように打ち負かしてしまえばいいだけだしね。

妖怪の山の斜面に沿って山頂方面へ飛んでいく。たまーに哨戒天狗が飛んでくるのでそいつらはその都度落としながら。定晴さんたちはどこに行くにしても戦闘を避けて隠密行動をしているらしいけど、そんな面倒なこと私はしたくないし結局どこかでばれるのなら最初から攻撃して邪魔なやつを減らしておく方が楽だ、と私は思うけどね。

 

「霊夢さん!なんの用ですか。哨戒天狗をどんどん落とされると困るんですけど」

「なによ犬っころ。あいつらが攻撃してきたのが悪いんじゃない」

 

たしかこいつの名前は犬走椛とかいっただろうか。今は既に懐かしいものとなっている守矢神社が幻想郷に来た時も邪魔してきた妖怪だ。

 

「それは貴女が侵入してきているからではありませんか!それに私は狼です!」

「同じようなものよ」

 

やはり私には見ただけで彼女が洗脳されているかは分からない。聞いた話だと定晴さんとか定晴さんに積極的に協力している人物以外にはいつもと変わらない様子で接しているらしい。あれ、永琳はどうやって洗脳のことを知ったのだろう…

 

「あ、そっちは…」

「ん?」

 

喋りながらも私は構わず移動していたためいつの間にやら違うところに来ていたようだ。そして何故か椛が倦厭しているように見えるが…

 

「そっちは山姥の範囲なので私たちは…」

「あら、なら都合がいいわ。これ以上私に構わないで頂戴」

 

そのままその範囲を突っ切る。やはり天狗は入ってこれないようだ。どうもそういう侵入をしてはいけないみたいな制約でもしているのだろう。

ただ天狗の代わりにここに住んでいる妖怪が襲ってくると思っていたのだけど…いないわね。

 

「あら、この木見覚えがあるわね…ああ、ここあの山姥の領域なのね」

 

名前はあまり覚えてないわねぇ…たしかあうんが覚醒した時の異変で戦った気がする。

ただ領域内に来たら結構すぐ接触してきたような気がするのだけど…今はいないのかしら。それはそれでむしろ有難いのだけどね。さっさと頂上の方へ飛んでしまいましょう。

 


 

守矢神社の三人は不在だった。一体どこに行ったのかしら。

定晴さんが言っていた協力者の天子も姿が見えない。もしかしてもう妖怪の山にはいないのかしら。

 

「っ!霊符【夢想封印】!」

 

突然の攻撃。それを夢想封印で迎え撃つ。

私の夢想封印は攻めるための弾幕。魔理沙のマスタースパークと同じように相手の攻撃のほとんどを消し飛ばす。打てる数には制限があるしこういった攻める弾幕は使わないほうが弾幕ごっこにおいて評価が高いからあまり使わないのだけど…

 

「なっ!?きゃっ!」

 

まさか夢想封印で一つも消し飛ばすことができないとは思わなかった。ちょっとグレイズしちゃって乙女っぽい声が出てしまった。

 

「…!」

 

グレイズした部分、巫女服が破けてしまっている。

弾幕ごっこでも服は破けることはある。弾の威力は完全に均一というわけではないし、数多く打たれたら破れたりもする。そもそも頭とかに直撃すれば気絶することも多いものだからね。

ただしグレイズしただけでそこがズタズタになることはない。これは…当たると死ぬわね。

森の中から更に撃たれる弾幕。高密度というわけではないが一発一発の威力はどれも異様に高い。こいつ、弾幕ごっこを知らない妖怪かしら?

 

「隠れてないで、出てきなさい!」

 

私もちょっと威力高めで大きな弾を撃つ。ついでに左右からホーミングアミュレットも撃っておく。もし逃げても御札が追ってくれるから追跡が容易なのだ。邪魔するやつは片っ端から倒させてもらうわ。

御札が進行方向を変えた。動きからしてこちらに近付いているようだ。いいわ。その姿を収めてそれで私のために倒れてもらうわ。

飛び出てきたのは白い髪に洋服を着た女性の妖怪。天狗のような翼は生えていない。幻想郷でも洋服の文化はあるが、製造工程的な理由であまり人里では着られておらず、魔理沙たちも霖之助さんのところで洋服は仕入れていると聞いた。ただそれでも霖之助さんの作れる洋服には限界があって、外の世界で忘れ去られた洋服を参考にすることしかできない。なので幻想郷で手に入る洋服は外の世界で言う中世のものとなるのだが…

 

「貴女、あの不動の仲間ね?」

 

この妖怪が着ていたのは菫子や定晴さんが着ているような現代服で、幻想郷で手に入れたものではないように見える。十中八九不動が外から引き入れた妖怪だろう。

幻想郷はとても大きな二つの結界によって守られており、そこを越えることは基本的にはできない。それなのにこのように博麗大結界を越えてきているということは…博麗神社に帰ったら一度結界の状態を確認する必要がありそうね。水那を捜す必要もあるし大変だわ。

 

「それで?私になんの用かしら?」

 

先程の質問にも答えないまま黙り込んでいる妖怪にもう一度声をかける。

それにしてもなんだか異質な妖力ね。まるで無理やり増やしたみたいな感じだわ。足りないからと言って力の器を無理に大きくすることは、皿に粘土をくっつけて大きくしたようなもの。長くは続かないし、デメリットも大きいはずなんだけど…

 

「あなたもあの人と同じく邪魔をするのですか」

「あら。邪魔をしているのはそちらではなくて?私は幻想郷の安寧を願っているだけよ」

 

先代も、そのまた先代も…ずっと前から博麗の巫女の仕事は変わらない。博麗大結界の維持、そして幻想郷の人妖のバランス調停。妖怪側の代表が紫なのだとすれば人間側の代表は博麗の巫女だろう。

私は、まあいつも怠そうにしてるけど…幻想郷が好きだ。一応この仕事にも誇りを持っている。幻想郷を壊そうとするなら、博麗の巫女として、霊夢として止めなければならない。

 

「あなたは分かっていない。存在してはならないのはあの男の方だというのに…!」

 

なんだか酷くお冠な様子。でも関係ないわ。

 

「もしそうだとしても、異変を起こしたなら私に成敗される。それがセオリーってやつよ」

 

そして私は、この正体不明の妖怪と戦闘を開始した…

 


 

「博麗の巫女、面倒な相手でした」

 

妖怪の山に落ちている亡骸を見て呟く妖怪が一人、世界の調整に気付かぬまま主の元へ飛び立った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。