東方十能力   作:nite

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予約投稿間違えました

土日にちゃんともう一本出します




二百五話 正しき道は

既に戦闘を始めて十分ほどは経過しただろうか。俺とルーミア、霊夢による即席チームで目の前の妖怪と戦っているものの未だに致命傷らしい致命傷を与えられないでいた。

彼女のことはうっすらとしか分からない。分かるのは、妖怪の山というこの場所で俺は彼女に何度も敗北し殺されているということだ。俺の能力は俺に痛みを伝える。痛みを通してその経験を繋ぐのだ。動物を調教するときにムチで叩いて従えるという方法があるが、あれは痛みが記憶の保持に役立つからだ。痛みというものから逃れるために痛みを与えられないことを覚えていく。俺の能力はそうやって別の世界から記憶の一部を引き継ぐ…こともできる。

 

「鬱陶しいですね!」

 

致死性の弾幕を展開する奴の動きを阻害しているのはルーミアの闇と霊夢の結界だ。二人ともがいることで初めて奴の動きを阻害できるというのは何とも言えない気分になるが、そもそも奴は今現在もバックアップを受けている、らしい。これもまた別の世界での記憶だ。

だがそろそろ奴に殺されるのも限界だ。そもそも一撃必殺的なもので死ぬことができないので痛みがじくじくと体を蝕むのだ。慣れている俺とてずっと耐えることはできない。ここらへんで、この世界で奴を仕留めさせてもらう。

 

「ふぅ……」

 

輝剣を構えて息を整える。一点集中。奴は霊夢たちによって大きく動くことはできない。

これは殺し合いだ。弾幕ごっこではない。だから俺は本気でこの剣を振るう。宣言もなく、一撃で。

 

「疾!」

 

攻撃の中にある小さな隙間。何度も経験したからこそ見つけることができる隙を突いて奴の体を裂く。

そのまま俺は反対側まで切り抜ける。不用意に追撃はしない。そのタイミングは逆に俺の隙となるからだ。俺が警戒しながら振り向くと血を流す奴の姿。しかし今なお空を浮かび攻撃を続けている。

 

「残念でしたね、これで…!」

 

大きく力を溜めている。妖怪の格で言うなら普通レベルだというのに大妖怪並の攻撃ができるのも不動がバックアップをしているからだろうか。まずい、ここから先は知らないぞ。そもそも奴に輝剣を直接当てることができたのも初めてなのだ。

結界を張り二振りを構える…がそれで防げるとは思えなかった。そして奴の力が溜まりきり、またもや記憶を継承するかと思われたとき…

 

「どっせええええええい!!!」

 

空から何かが降ってきた。これは…石?その上に乗っていたのは俺が協力をしてくれるように頼んだ天子だ。一体今までどこにいたのだろうかという答えは妖怪の山の空だったようである。

ふと下を見てみるとその大きな石に潰されて墜落していく例の妖怪。どうやら衝撃は相当なものだったようで、この石が一撃必殺となり気絶してしまったようだ。ルーミアに回収を頼んだあとに俺は天子に視線を移した。

 

「天子、何してたんだ?」

「あら、あの妖怪がやばそうな感じしたから戦いの準備をしていただけよ。まあ準備が終わるころにはあなたたちが戦っていたからついでとばかりにこの要石で降ってきただけだけど」

 

どうやらこの石は要石らしい。要石とはその場所を支える大切な石などの総称で、地震を抑えるとかなんとか言われている。どうやら天子の一族はそういった地面に関する力があるようで今回はその石で攻撃をしたらしい。実態はただの石とはいえその大きさ、重さは相当なものでありこれで降ってきたらそりゃ気絶するだろう。

 

「うーん、すっきりしたわ」

「そりゃよかったよ」

 

結構ピンチだったから天子の一撃はとても助かった。初めての展開ではあったがどうも良い選択がなされたようである。

待っていたらルーミアが例の妖怪を闇で縛りながら浮上してきた。未だに気絶しているようでちょっとだけかわいそうに思える。まあこちらとしてはありがたいのだがな。

 

「そいつは永遠亭に連れて行こう」

「大丈夫なの?」

 

霊夢が心配そうに声を上げる。まだ直接戦ったことはないが永琳は強者だ。それにあいつらは不老不死でもある。霊夢が結界を張ってこいつの力を抑えておけば大事にはならないだろう。そう説明すれば霊夢も納得したのか頷いて永遠亭の方向へ飛び始めた。

 

「で、私はあとはどうすればいい?」

「ああ、そうだな…」

 

一応の目的である『問題の妖怪の退治』は達成した。となればあとは不動の捜索となるわけだが…俺の記憶の中に不動との遭遇記録がない。つまりこの時点まででどの世界線でも俺は不動と会っていない。どこかに全力で隠形でもしているのだろうか。うーむ、あの妖怪を尋問すれば情報が手に入るだろうか…

 

「一度永遠亭に来てくれ。もしそこで黒幕の居場所が分かればすぐにでも突撃する」

「了解よ」

 


 

永遠亭に戻った俺たちは、気絶したままのこいつを借りた部屋の中にいれて霊夢に結界を張ってもらった。実はここまでの道中で一度目覚めそうになったのでもう一回天子が要石で頭を打ったのである。ルーミアの闇で縛っているとはいえ暴れられても面倒だから致し方なかったのである。

一応永琳にも控えてもらいつつ俺は妖怪に再生をかけた。傷を治さず意識だけ、なんていう高度なことはできないので普通に再生させる。数秒もすれば妖怪の意識が戻ったので再生は終了。傷は残っているものの会話は十分にできそうだ。暴れようとも現在進行形で闇で縛っている。ルーミアのこういう部分はすごく便利そうだなぁ…

暴れても無駄だと判断したか彼女は動きを止めた。しかし何も話すつもりはないように口は堅く閉ざされ声をかけても返事一つくれない。うーん、情報を引き出すのは難しいだろうか。

 

「自白剤も用意しているわよ?」

「一般的に使われる自白剤って…」

「あら、私にかかれば妖怪に正真正銘自白させるための薬だって調合可能よ」

 

これは驚いた。俺は永琳にそれを持ってくるように頼んで、ついでに霊夢の結界を補強しておく。

外の世界で自白剤として使われているのはドラマに出てくるような何でも自分の意思とは別に正直に話してしまうようなものではない。基本的には判断能力を低下させるとかそういう類の薬であり、自白を促す効果でしかない。しかし永琳はちゃんとした自白剤を用意しているらしい。やはり月の頭脳は伊達ではないということか…

 

「な、なんだ!?」

 

しばらく待っていたら永琳が来る前に妖怪は震えだした。しかもとても顔色が悪い。咄嗟に再生の力を行使してみるが顔色がよくなる気配はない。身体的なものではない何かが原因となっているということか。霊夢も結界を使っているがやはり何かが変わるような気はしない。

そのまま数十秒、その後妖怪はまるで糸が切れたかのように脱力をして動かなくなった。震えは止まっている。その様子に霊夢は目を見張っている。何か気が付いたのだろうか。

 

「この子、式神だったのね」

 

式神というフレーズにルーミアが反応する。だがそれだけで終わりではないようだ。

 

「しかも強制使役…なんか媒介を埋め込まれて動かされた感じね」

「動かされていた?」

「ええそうよ。言うなればアリスの人形みたいなものよ」

 

糸が切れたように、ではなく本当に糸が切れたらしい。どうやらさきほどのタイミングで体の中に埋め込まれた媒介を破壊したようだ。核が壊れてしまっては自白させるどころかそもそも一人で行動することも難しいだろうとのこと。少し遅れてきた永琳にも同じように説明する。

 

「せっかく実験体になってもらおうと思ったのに」

「臨床実験してねえのかよ!」

「いなばたちで実験はしているから効果は確かよ?」

 

ちょっと残念そうにそう言う永琳。まあどこかで妖怪に直接使う必要があるのは分かっているが…まさかここでそれを使おうとしていたとは少々、いや結構驚きだ。

目が覚めたのか妖怪は顔を上げてきょろきょろしている。

 

「…」

「大…丈夫…か?」

 

声を出さずに頷く彼女。どうやら意思を喪失してしまったわけではないようである。

だが言葉を発することができなくなっているようで式神化の後遺症が現れている。これで情報調査はできなくなったな…自白剤を使われる前に切り捨てた、ということだろうか。不動はどこまで罪を重ねるつもりなのだろうか。

 

「水那…」

「霊夢?」

「その、実は…」

 

霊夢から今朝がたに出て行った水那が戻ってきていないことを聞いた。確かに不安だ。しかし水那は純粋な人間なわけだし式神化させられているということはないのではないのだろうか?と聞いてみると案外そうでもないらしい。どうやら人間を式神として使役することも可能なのだそうだ。だがそれには専門の知識が必要らしいが…

 

「もしかして、不動は陰陽師、なのか…?」

 

今までも式神やら妖怪を操るやらしてきたあいつが陰陽師だとすれば何かと辻褄が合う部分もある。だがもしそうだとしたら水那は危険らしい。博麗の巫女が式神化、なんてそんなことがあれば幻想郷のバランスが崩れることになる。できる限り早く助け出さなければいけないが…肝心の不動の居場所が分からない。

 

「どうするのよ。ここで待ちぼうけなんてのは御免よ」

 

天子が不満を募らせる。

まあ俺もここにずっといるつもりはない。行動はしなければいけないが…

 

「その子はしばらくここで預かっておくわ。もしかしたら私の薬で治せるかもしれないし」

「そうか。なら頼む」

 

永琳に名前も分からないこの妖怪を預ける。

 

「式神化したとしてもそこまで遠くで操れるわけじゃないわ」

「じゃあ妖怪の山にいる可能性が高いということか…」

 

ルーミア、霊夢、天子、そして俺の四人で妖怪の山に向かうことにした。どうかそろそろ不動が見つかりますように。

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