プリズムリバー達とくそ長い階段を飛ぶこと五分ほど。
「やっと着いた…」
「お疲れ~」
此処がそんないい所じゃ無かったらもう来る気はない。こんな長い階段を何度も登るのは御免だ。空を飛ぶというのも疲労を伴うものなのだ。永遠に飛び続けられるわけではないのだ。
ざっと周囲を見渡してみる。綺麗な場所ではあると思う。人があまり来ないから然程荒れないのだろう。所々置いてある灯籠が幻想的に光っていて、その光を受けた霊魂達も淡く光っている。いや、もともと霊魂たちは光っているのかもしれない。
何より目を引くのが前にある大きな木である。幹の時点でとても太く、枝先は遠くまで伸びている。そしてその前にあるのは教科書に出てきそうな和風の屋敷だ。
「なかなか良い所じゃないか」
「定晴さん、こっちー」
リリカが呼んでいる。この大きな屋敷に入ろうとしているみたいだ。となると、ここに紫の友達がいるのだろう。見渡す限り他に家っぽい建物は見る事ができないので、紫の友人は一人暮らしだろうか。
「失礼しまーす」
門を開けて中に入る。プリズムリバー達は皆先に入って行ってしまったようだ。
俺も追いつこうと走りだそうとした瞬間…殺気を感じて回避行動。綺麗な枯山水を荒らさないようにその場から飛び退く。
俺が先程までいた場所には剣筋が伸びていた。
「外しましたか…」
いつの間にいたのか、塀の上にいた少女突然斬りかかられた。
外の世界ではそれなりに平和とは遠い生活をしていたこともあって殺気に敏感になっていてよかった。もし遅れていたら背中を斬られていた。再生能力もあるので死にはしないが、動けなくなることは必須だろう。
「貴方は誰ですか。ここは生きているものは来てはいけない場所。それにその霊力…怪しいです」
またもや俺の霊力が原因で疑われた。
美鈴にもこの霊力のせいで疑われたのだが、そんなに俺怪しいだろうか。ちょっと悲しい。だが霊力がちょっと特殊なのは自覚があるので言い返せない。いい加減に霊力をコントロールの術を学ぶか。
「よう、俺は堀内定晴だ。いきなり背中を斬るなんて流石に酷いんじゃないか?」
「私は魂魄妖夢です。幽々子様の従者をしています。すみません、どう見てもプリズムリバーさんたちに着いてきた不審者にしか思えなくてですね」
軽く挨拶を交わす。しかし、妖夢と名乗った少女は構えを解かない。俺の輝剣と違って軽くしなっている刀を俺に向けたまま警戒の態勢だ。
「なあ、通してくれないか?」
「いいえそれは出来ません。お帰り頂けませんか?後追いはしませんので」
どうやら妖夢は俺をこの屋敷に入れる事を嫌がっているようである。
確かに何の許可もなく入れるとは思っていなかったが、プリズムリバー付き添いなら…というのは高望みだったのだろうか。
「正直階段をこれ以上往復するのは嫌なものでね」
「そうですか、では力ずくで帰ってもらいます」
それはおかしくないか。事情を訊くとかそういった段階は踏まないのか。
俺の疑問を無視して妖夢はスペルカードを宣言した。
「断命剣【冥想斬】!」
妖夢が構えていた剣に妖力が溜まり、それを振ると強力な斬撃が飛んできた。
しかしこのぐらいの腕前なら外の世界にも結構いる。中には何の気も込めてないにも関わらず空気を斬るだけで目の前の木を切り倒すなんていう技術を会得している人もいた。
「ふっ!」
そしてそれに慣れている俺はスペルを使わずとも受け止めることが出来るということだ。輝剣は壊れることがない剣なので、衝撃があっただけで完全に封殺することができた。
「なん!?」
妖夢が驚きの声をあげる。
しかし妖夢は少しの間硬直しただけで、直ぐにもう一振りを俺に向けてくる。
俺の輝剣の能力で創れるのはどうしても一つだけなので、普通なら結界を張って受け止めるしかないのだが、試したい事もあるのでちょっと試してみよう。
「おらっ!」
「へ!?」
流石の妖夢も驚く。それもそのはず…
「いつからお前は俺が剣を一つしか持っていないと錯覚していた?」
「なん、だって…」
言ってみたいセリフランキングの上位に入っている言葉を言えて満足すると共に俺は手元を見る。
そこには家の掃除の時に出てきた刀がある。調べてみると俺の一家に伝わる家宝であると分かった。それなりに頑丈に造られている上に戦闘にも使えるらしい。模造刀とは違い人を斬ることもできる本物の刀だ。
何故家の片隅にあったのかは今は言及しないでおく。そもそも俺が知らなかったのだ。先祖の誰かが変なところに片付けたに違いない。
「その剣は…いや、今はそんなことより貴方を止める事に集中しましょう」
「そろそろ諦めろ!」
「嫌です!」
うーむ。なかなか妖夢が諦めない、まあ俺がもう一度アポをとってからくれば良いだけなんだけど。
妖夢が距離をとりもう一度俺に切りかかろうとしたところで急に周囲に音が響いた。
パンッ!
手を叩く音を聞いて妖夢が動きを止めた。それと同時に女性の声がどこからともなく聞こえてくる。
「はい!おしまいよ妖夢」
「ゆ、幽々子様!」
先程の妖夢の自己紹介にあった幽々子様という女性のようだ。あの妖力量…きっとあれが紫の友人だな。
幽々子は妖夢の方を向いて話しかけた。
「彼は悪い人じゃ無いわよ。紫の友達なんだから」
「え…」
妖夢は長く溜めた後…
「えぇーー!」
冥界一番の叫び声が上がった。