東方十能力   作:nite

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筆が乗りまくったので五千文字あります(しかも予約投稿


二百八話 思わぬ援軍

突如俺たちの後ろの軍の一部が爆発した。どうやら撃っていた弾が破裂したようだ。それと同時に下から出てきたのは吸血鬼の妹。片手には炎の剣であるレヴァティーンを持っている。

 

「フラン!?」

「フラン、何してるんだぜ!」

 

俺が最初フランを連れて紅魔館を出たときは照っていた太陽もいつの間にやら雲の中に隠れていたので地上に日光が届いていなくてよかった。ただあの時、フランは狂気に吞まれていたのでフランの頼みもあって置いていったのだが…

 

「あれ、おかしいなぁ。彼女は特に僕と共鳴して戦力になってくれると思ったのに」

 

不動がそんなことを言う。やはりあの突然の発狂は不動の仕業だったか。不動の狂気にあてられて戻ったのか…それとも俺が狂気を完全には消せておらずそれがまた増幅されて目覚めたのだろうか。だとしたらフランやレミリアたちに申し訳ないな。

 

「サダハルハ憎いけど…先にアナタヲコワシテアゲル」

 

どうやら不動の影響もあるがそれ以上に不動への憎悪の方が強いようである。なにがあったのか分からないがこれは好都合だ。ただここでフランと共闘っていうのは少し無理があるな。フランの中に俺への憎悪も確かにあるようなので攻撃に巻き込まれる可能性がある。敵の敵は味方なんてのもあるが基本的には敵の敵は新たな敵であることが多い。

 

「うーん、まあいいや。君も死んでもらおう」

 

不動はやはり妖怪の上に乗ったまま余裕を崩さずに命令を下す。するとその軍の中から複数の影が出てきてフランを守るように立ちふさがった。

 

「フランを攻撃するのなら事情は変わるわよ?」

「妹様には手を出させません」

 

紅魔館の面々だ。俺への憎しみを植え付けることはできたようだがさすがにフランへの憎しみは無理だったようである。というかそもそも不動はフランに対しては憎悪を持っていない。不動がどういう術を使ってみんなを洗脳しているのかは分からないが、不動が持っていない感情を植え付けることはできないだろう。

 

「仕方ない。まとめてやっちゃって」

 

不動が再度命令を下す。しかし動きは先ほどに比べて格段に遅い。やはり俺以外にはヘイトを向けることができないのだろう。むしろ何がそこまで俺に憎しみを生んでいるのか未だに俺は分かっていないのだけどな。

 

「今のうちに迷いの竹林に逃げちゃわない?」

「確かにそうだな。行こう」

 

フランたちを盾にするのはこの際致し方ないものとして割り切ることにする。距離をとってしまえばこちらのものだし不動に追いつかれることもないだろう。追撃してくるやつらくらいならば俺たちだけでも撃墜できるし、フランたちが大半を受け持ってくれて助かった。フランの目的が不動なので不動自身が追ってくることもない。

一つ懸念事項となるのがフランたちが殺されてしまう可能性だ。吸血鬼は体がタフなわけだしそう易々とやられないとは思うが…不安ではある。

それでもなんとか俺たちは迷いの竹林に到着する。しかしここで別の問題が発生した。

 

「いなばたちはどこに行ったのよ」

 

霊夢が言う通り本来俺たちを案内してくれるはずのいなばがいないのだ。なおてゐのことではなく一般うさぎだが、永遠亭までの道のりを案内してくれるように永琳が常駐させてくれていたのだが…

 

「おーい!うさぎー!出てこないとウサギ鍋にするわよー!」

「霊夢、逆に出てこなくなるぜ」

 

まずいな…少しではあるが追ってはいるし、フランたちだけで不動がなんとかなるとは思えない。なんとか早めに永遠亭に到着して永琳の助力を乞いたいのだが…仕方ないか。

 

「お前ら、少し離れてくれ」

「何するのよ」

 

霊夢の声は無視して竹林に向かって手を伸ばす。流石に標準なしではきついな…目標、竹林。対象、概念:迷い。簡易化…無効化実行。

俺がきちんと狙いをつけて無効化を発動した。すれば竹林の中の霧は消滅し、迷いという概念を感じなくなった。これで今ならばまっすぐ飛ぶだけで永遠亭に到着できるはずだ。

 

「おいおい、なんだよそれ。何をしたんだ?」

「迷いを無くしただけだ。魔理沙、これは結構裏技だから他の人に言うなよ?そもそもこれも後で永琳に術をかけなおしてもらわないと不動が入ってきちゃうしな」

 

俺の無効化は概念にもその効果を及ぼすことができる。勿論「竹林を無効化しなかったことにする」なんてのはできない。それは存在への干渉だからだ。だが迷いを消すことはできる。俺は使ったことないが緊張してる人に無効化を使って緊張を消すこともできるだろう。まあわざわざそれをするほど低燃費な能力じゃないんだがな。

 

「鈴仙ー!永琳ー!」

「あ、霊夢さん。それに魔理沙さんも?無事だったんですね」

 

鈴仙が永遠亭の前で掃き掃除をしていた。永遠亭は竹林に囲まれているので笹の葉が溜まるのだ。逆に普通の木は少ないので落ち葉が溜まることはあまりない。

鈴仙に話を通して永琳の元へ。そしてそこで事情を説明していると奥から輝夜が歩いてきた。

 

「ちょっと貴方、その謎の能力連発したでしょ。いくつもの世界線が発生、消滅して気持ち悪いんですけどー」

「姫様の体調が優れなかったのはそれが原因ですか?」

 

どうやら俺の能力の副作用が輝夜に現れていたようだ。外の世界でも何度か使ったのだが、その時も輝夜は体調を崩したのだろうか。まあ俺じゃなくとも紫やミキが時空に干渉したという可能性もあるので俺以外の要因もありそうだが。

 

「消滅って?」

「あー…また今度な」

 

ルーミアに疑問をぶつけられて問題を先送りする。俺の能力簡単に語れるものではなく、それでいてあまり人に知られるわけにはいかない。ルーミアにはいつかミキや紫を交ぜて話すとするか。

 

「それで霊夢、私たちに何をしてほしいのかしら?」

「貴女のことだから例の薬をもっと作ってるんでしょ?それを寄越しなさい」

 

霊夢は永琳に迫る。俺たちがここを発ってからそれなりの時間が経過している。それに既に時間は夕方。永琳が一日中研究していたと仮定するとそれが進展している可能性は高い。

 

「それはあなたの勘かしら?」

「いいえ確信よ。貴女ならあの程度の薬で満足なんてしないでしょう?」

 

俺も今持っているが、これをあ「あの程度」と言うのか。確かに永琳の今までの功績にしてみれば簡易的なものだが、事件発生が今日の昼頃だったことを考えると全然早い。ウイルスとは違って実体を持たないわけだしそれに対する薬を作るのであれば難易度はとても高いはずだ。もしかして彼女なら鬱病にしっかりと効く特効薬なんてのも作れたりするのだろうか。

 

「さ、どうぞ。かけるだけでいいわ」

 

永琳が持ってきたのは前回の奴よりも幾分か濃い色をした薬。なんと飲ませる必要がないときた。これで結構状況は好転するのではないだろうか。

 

「皆さーん!なんか来ましたよー!」

「不動か…」

 

永遠亭の外に出てみると妖怪たちがわらわらと竹林から出てきていた。永琳に術のかけなおしを頼んだわけだが、あまり意味はなかったようである。

ただなんだかやたらとボロボロだな。フランたちとの戦闘をした怪我ではなくまるで穴に落とされたような…

 

「むふー、私主導でいなばたち総出のトラップ作戦を結構したのです!」

「てゐ?」

「洗脳されているからか注意力が散漫になっていて罠に嵌めやすかったウサ」

 

どうやら妖怪たちの体に付いている土やらなんやらはてゐによる罠の産物だったようである。そもそもてゐの罠は他人を気絶させるほどのものではないから数が減るとかはないだろうが、時間稼ぎとまとまって来ることはなくなった。いたずら好きに助けられるとはよくわからんものだ。

 

「しかもしかも!一つだけ落とし穴の底にうどんげのパンツが!」

「ちょっと!?」

 

鈴仙が悲鳴をああげる。そして一部の男性妖怪が竹林へと戻っていった。おい、それでいいのか。

鈴仙の尊い犠牲によりさらに数が減ったので俺たちは薬を妖怪たちにかけていく。かけられた妖怪はそのまま気絶するのでそこらへんに転がしておく。一々永遠亭に運び込んでいたらキリがないからな。

 

「あー、くそっ。だからここは嫌いなんだ」

「不動」

 

遅れて出てきたのは不動だ。水那はまだ竹林の中にいるのだろうか。

不動も不動で若干土が服に付着している。何気にここまでダメージを与えたのはてゐが初めてではないだろうか。やはり初歩的なトラップがこういうときは有効なのだろうか。いや、多分落ちるだけとか引っかかるだけみたいな罠のせいで危機察知能力があまり役に立たなかったのだろう。多分穴の底に針だとか炎だとか設置すれば察知されてしまう。

 

「まあいいや。周囲の奴らは関係ない。堀内、僕と向かい合った時点でアウトだよ」

「なに?…うぐっ・・」

 

途端に俺の中から膨れてくる謎の力。しかも今までよりも断然早い。

なんとか無効化にて防ごうとするがすぐに破裂寸前まで行ってしまい動けないし、この速度で無効化を使っていては霊力が持たない。そもそも今日は既に何度も戦闘をし一度無効化も使っている。霊力はそもそも尽きかけている。

 

「何してるの、よっ!」

 

ルーミアが闇を使って攻撃する。今のルーミアの封印段階は大体元々の半分程度。威力は落ちるものの子供の姿のまま闇を自在に操れる状態だ。というか基本的にはルーミアが何も言わない限り封印状態はこの段階にしている。ルーミアから封印に対してできるのはリボンを外すか否かなので、リボンをつけた状態での封印状態はこちらから指定してあげる必要があるのだ。

 

「邪魔」

 

しかしルーミアの闇は雲散させられてしまう。魔理沙や霊夢、天子なども攻撃するがそのどれもが力を散らされてしまい不動まで攻撃が届くことはない。前回はあそこまでのことはできなかったし俺にかかる力も増えているのできっと不動も不動で何かしら特訓でもしたのだろう。

 

「おっ、らっ!」

 

なんとか幻空から薬を取り出して不動に投げつけてみる。不動はそれを躱して平然な顔をして立っている。

 

「今更それくらいのに当たると思ってるの?」

「い、いや。だが分かった、こともある…お前の能力、がな」

 

攻撃を散らすという派手な行動が逆に俺にヒントを与えた。未だに腑に落ちない部分もあるが不動の能力は多分が俺が思っている部類だろう。なんせ陰陽師とはいえ力を散らすことはできないからな。せいぜい封印とか結界で抑えるのが限界だ。

 

「【発散させる程度の能力】、とかそんな部類だろ?」

「ああそうさ。まあもっと早く気が付いてもよかったと思うけど…僕の能力は【開放する程度の能力】。対象に関係なく開放することができる。例えば憎悪の心とか、体の中の圧力とかね?」

 

つまり今俺にかかっている力の正体は、常に体の中で保たれている圧力を開放しようと外側に押し広げられている力ってことか。不動は俺の能力の詳細を知らないはずだ。そもそも無効化に関しては紫ですら全容は知らない。何を対象として何を使っているのかが分かれば…さっきも言ったが俺は概念であろうと無効化できる。

…目標、体内圧力。対象、負荷…ついでに付随している能力にかけてまとめる…無効化、実行。

俺が能力を発動すれば体内からかかる力は無効化され、また俺の体内に対する不動の能力の使用もまとめて無効化した。俺が一度に無効化できる対象は一つだが、今回の場合のように繋がるものがあればまとめて無効化できる。概念に対しては無効化をただ単に使うだけでは足りないので時間がかかるが俺の体が破裂する前に無効化することができた。

 

「ん…?堀内、何をしたんだい」

「悪役がよくする能力を自分から話すっていうやつに乗じて対抗策を打っただけだ」

 

俺はにやりと不動に笑う。

不動はそれがいたく気に入らなかったようで不動は苛立ちを分かりやすく表情に出している。

 

「…じゃあこうしよう。ここにいる奴らすべてを狂わせて君を攻撃する」

「は?」

 

その瞬間不動から異様な気配。とても気分が悪くなる。

 

『なんつう狂気だ。おい、浄化全力にしとけ』

『魔力障壁も補助しておきますね』

『了解狂気。ありがとな魔女』

 

一応言われた通りしてみるとなるほど、気分が多少マシになった。浄化で負の感情も消せるからいいよなぁ…

だがそんな俺とは対照的に霊夢たちはとても苦しそうだ。

 

「な、なにこれ…」

「ぬうう、私の魔力障壁すらも無視してくるぜ…!」

「天人の私にここまで…うう…」

 

霊夢たちを浄化するが治まらない。そもそも俺も狂気自身が負の感情を吸収してくれているから無事なだけだ。

このままでは霊夢たちも…仕方ない。

 

「せいっ!」

 

輝剣でみんなを昏倒させる。悪く思わないでくれよ。ありがたいことにやはりルーミアは平然としているのでルーミアは一緒に戦ってもらおう。

 

「いいかルーミア?」

「ええ、勿論。いつでもいいわよご主人様」

 

他の妖怪がいるのに敢えて俺をそう呼ぶルーミア。とても心強くて助かる。

俺は幻空からもう一本の剣を取り出して構える。

 

「お前は、ここで倒す不動」

「殺してあげるよ」

 

そして俺は最終決戦を始めた。

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