東方十能力   作:nite

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二百十四話 宴会【傀儡異変】

そして数日、俺たちは後始末に動いた。基本的には負傷者と操られたという事実に憤慨して暴れている妖怪の処理だ。前者は俺が再生をかけたり永琳が治療をしたりすることでなんとかなるのだが、後者は如何せん動機に同情できてしまうので厄介だ。幻想郷のルールをちゃんと飲み込ませて対応してもらっている。

そして数日後、とうとうあのイベントが始まった。

 

「宴会だー!」

 

魔理沙が大声で叫んでいる。宴会は始まったばかりだというのに既に結構酔っているようだ。外の世界では魔理沙くらいの年齢だと飲酒などもっての外なのであるが…なんとなくその理由もわかるというもの。普通のビールの味は子供には向かないと思うのだが、幻想郷では小さいときからでも宴会に参加するようだし慣れなのだろうか。

 

「ほーら、定晴ー、労わりなさいよー」

「労わってやるからそんなにくっつくな」

 

既に酔っている紫が俺の右側から何度も軽く頭突きをしてくる。構ってほしいときの猫かお前は。いやまあ橙とかお燐に頭突きされても困るけど。

いつもなら眠っている時期なだけに疲れも多かったらしい。一応撫でつつ紫を窘める。酔っているやつに窘めなんてものが効果ないのは知っているが、そこまでくっつかれると流石に鬱陶しい。頑張ってくれたのは事実なので素っ気なくするのはできないし正直手に余ってしまう。

 

「ちょっと八雲紫。定晴にあまり迷惑をかけないでよ」

 

すると料理とお酒を持ってきたルーミアが紫に注意した。いつもなら紫を抑えてくれる藍は裏方をしているらしいし、霊夢も向こうの方で魔理沙たちと飲んでいるので対応してくれる人がいなくて困っていたのだ。とても助かる。

だが紫も酔っているので、いや酔っていなくても言うのかもしれないがルーミアに反論した。

 

「なによー。貴女はいつでも家でくっつけるんだしこういう時くらいいいじゃないー」

「な!?く、くっついてなんかないわよ!」

 

因みにルーミアが家にいるときはもっぱら読書をしているのでくっついてくることなんかしない。

うーん、素っ気なくするのは違うがこれはこれで面倒だな。ちょっと酔いを醒ましてやるか。

魔術で小さい水の弾を形成。紫の頭上に持って行って、投下。

 

「つっめた!」

 

紫が飛び起きた。成功だ。

前はこんな風に細やかな制御はできなかったのだが魔女の魂の影響で結構魔術も自由に扱えるようになってきた。そもそも魔力量が随分と増えたので今まで出来なかった複合魔術なんかもできるようになっている。もう一回パチュリーのところで適正を調べたら前とは違った結果になるかもしれないな。多分上級魔術くらいまでなら使用できるのではないだろうか。

 

「ちょっと!酷いじゃない!」

「酔いすぎてるからだ」

 

宴会が始まって一時間程度だというのに顔を真っ赤にして酔っているのが悪い。幻想郷のやつらって酒癖は悪くないんだがその分宴会のときの飲酒量が異常なのだ。常日頃からでも酒を飲んでいるのは…鬼の奴らくらいだな。萃香なんていつも酔ってるし。

 

「いつの間にそんな操作ができるようになったの?」

 

俺の魔術を見てパチュリーがやってきた。それに釣られるようにアリスと魔理沙もやってきた。魔術は魔法使いを呼ぶ、のだろうか。

 

「どうしたー?」

「定晴さんが繊細な操作もできるようになっていたから気になったのよ」

「なんだか魔力量も増えてない貴方?」

 

魔法使い三人衆。やはり魔の付く技術には興味をそそられるようである。

魔女のことを言ってもいいのだろうか。狂気という前例があるのでパチュリーは知っているが、アリスや魔理沙は魂のシステムを知らない。っていうかシステムなら俺も分からないけど。ともかく、魔女の魂を説明したときの悪影響は…

 

『そんなに気にしないでいいわよ。魔法使いなんてあまり他者に興味なんてないから』

 

と魔女が言ったので普通に説明するとしよう。

俺の話を聞いて最初に動いたのは魔理沙。どうやら霖之助に対して不満があるようだ。

 

「なんでそんなものがあるって言わなかったんだ香霖は!」

「壊されると思ったんじゃないか?」

 

霖之助曰く霊夢と魔理沙は何も買わないくせに店に損害を与えるとかなんとか。店に来ればお茶を請求し、適当な話をして帰るという…いわゆる迷惑客なのである。

パチュリーはというと魂封石に興味を持ったようである。俺の予想通りだが、残念ながら石は既に崩壊してしまったことを伝える。

 

「うーん…破片とかはないのかしら?」

「一応残してるが魔女曰く既に性質は失っているらしいぞ?」

「それでもいいわ。研究には使えるだろうし、触媒にはなるだろうから」

 

そういえば宝石魔術なんていう種類の魔術もあると聞いた。パチュリーも使えるのだろうか…ちなみに俺が初めてその魔術を知ったのはミキ経由なのだがあいつは宝石魔術を見せてくれなかった。触媒となる宝石が貴重だからそう簡単に使えるわけではないらしい。

閑話休題

 

「パチェが宴会で本を読んでないのは珍しいと思ったら定晴のところにいたのね」

「あ、レミィ。ちょっと興味がわいちゃって」

 

後ろから歩いてきたのはレミリア。片手には優雅にワイングラスを持っている。

 

「あら、フランはいないのかしら?」

「ん?来てないが?」

「私たちのところにいなかったからこっちにいるのかと思ったのだけど…どこにいるかしら」

 

どうやらフランが行方不明のようである。まあどこかにはいるのだろう。ああ見えてフランは友達を増やしているのでどこかで集まっているに違いない。

とそこで水で目を覚ませた後俺に無視されて泣いていた紫がやっと起き上がった。

 

「もう定晴なんか知らないもん!霊夢のとこに行っちゃうから!」

 

大妖怪だとは思えないような、というか普段の様子からは思えないような語尾をつけて紫は行ってしまった。霊夢たちに迷惑をかけなければいいが…水、口の中に突っ込んでやる方がよかったかな。

 

『れーいーむー!』

『げっ、なんでこっちくるのよスキマ!』

 

うん、仲良くやれているから良しとしよう。例え紫が霊夢の弾幕によって吹き飛んでいたとしてもそれは全然問題のない平和な光景なのである。

 

「定晴の平和は少しずれてるように思えるのだけど…」

 

魔法使い三人衆がいなくなったそう呟くのはルーミア。ふむ、幻想郷に限っていえばあれは全然平和な光景になると思うのだが…まあ感じ方は人それぞれか。今日は疲れてるので宴会場の端っこの方で飲んでいるので喧噪に巻き込まれることもなくゆっくり酒を飲むことができている。

 

「ルーミアはどこかに行ってきていいんだぞ?」

「別に気にしないで頂戴。疲れてるのは私も一緒よ」

 

ルーミアも俺の隣で酒を飲んでいる。元々俺もルーミアも酒をがぶがぶ飲むような性格ではないので減る量もゆっくりだ。ルーミアが持ってくる料理が俺の好みなものばかりなのはルーミアが気を利かせているのだろうか。そういえば最近物の好みが俺に似てきたとか言っていたような気もするな…

 

「なんじゃお前さんはここで飲んでるのか」

「ん?」

 

俺の後ろからチヌと不動が現れた。なぜ後ろから…今来たのだろうか。

 

「なあ定晴よ、少し手伝ってほしいことがあるのだが」

「なんだ?」

「不動が気まずくて出ていけぬと言っていてなぁ…」

 

どうやら不動はこの中に交じって酒を飲むのが気まずいらしい。まあ異変の首謀者が宴会に参加するときは結構起こりうることだ。いつもはそういうとき霊夢が主導して誘うのだけど…今回の異変は完全に俺に関することだったわけだししょうがないから手伝うか。

 

「こっち来い不動」

「すまないね堀内」

 

そう言いながらついてくる不動。チヌと過ごして随分と丸くなったな。いや、こっちが不動の本来の性格か。元々喋り方が丁寧のやつなわけだしあの感情的なやつは本当にチヌのことを想っていたからこそのものだったのだろう。

 

「おーい、お前ら!」

「「「なーにー!」」」

 

俺が不動を連れているのを見て今から何をしようとしているのか察してくれたようでノッてくれる参加者たち。

 

「こいつが寂しいっていうんで酒を飲ませてやってくれー」

「な、おい堀内!」

 

これが幻想郷流だ不動よ。俺の声で一番最初に立ち上がったのは萃香。よしきたと言って勇儀も後ろから酒を持ってきた。それに釣られるように何人も立ち上がり…

 

「んじゃあとは楽しめ不動」

「あ、おい!」

 

人々に流されるように消えていった不動を見送る。宴会参加者に捕まれば宴会が終わるまで離してはくれない。どうせここにいるほとんどの奴に不動は謝りに行っただろうし蟠りを無くすのならこれが一番手っ取り早い。不動のことは奴らに任せるとしよう。いい感じに揉まれてくるに違いない。

 

「あれが幻想郷流なのか?」

「少なくとも不動には合ってるだろうな」

 

チヌの手元には小さい酒瓶が一本だけ。見た目だけ見れば美麗なチヌはあまり酒を飲まないようだ。そういうところは見た目通りなんだな。

 

「なんかちょっと失礼なこと考えてないか?」

「そんなことない」

 

めっちゃ鋭い目つきで睨まれた。なんかあれだな、綺麗な人を怒らせると無性に怖く感じるあれだな。

 

「不動はこのあとどうするかねぇ」

「チヌと一緒に住むんじゃないのか?」

 

俺がそう言うとチヌはなんだか微妙な顔をする。どうやら不動の今後について思うところがあるようだ。事情を聴いてみると幻想郷に住むのは如何なものかと。というのも一応不動は大学に在学中になっているらしい。ただもう一年以上休学しているし扱いがどうなっているかは分からないな。

チヌからすれば不動にはまず普通の生活を送ってほしいと思っているようである。外の世界で聖職者を食らっていた妖怪とは思えない発言に少し笑みが零れてしまう。

 

「なんか変か?」

「いんや、妖怪としては妙ではあるけど変とは思わん」

 

やはりチヌは不動に少し甘いところがあるな。というか優しい。

チヌの言いたいことはとてもよくわかるし俺も普通に大学生活はしたほうがいいと思う…が不動は多分もう戻る気ないんだろうなぁ…

 

「ま、宴会終わったら存分に話し合うといいだろ。多分だけど不動は戻らんが」

「はぁ、私もそんな気がするよ」

 

まあこればかりは当人たちの問題だし気にしないでいいだろう。

と俺とチヌが話していたら後ろから何かに激突された。

 

「お兄様ー!」

「定晴ー!」

「フラン!それになんでこいし!?」

 

レミリアが探していたフランとそれに加えて何故かこいしがいる。どうやらこそこそと俺の後ろに二人で回り込んだらしいが今はそれはどうでもいい。

 

「またこいし抜け出してきたのか?」

「違うよー、今日はお燐とお空も一緒だよー」

 

…さとりは?

これ絶対こいしが二人に無理を言って連れてきてもらってるやつだ。二人ともペットという立場上こいしに対して強く出ることができない。そのためこうやって二人に連れてきてもらったという名目で無理やり外に出てくることがあるとかなんとか…今までその作戦でさとりが「それなら仕方ないか」となったことがないと聞いたのだがなぜ何度も繰り返すのか。

 

「むむむ…フランちゃん!定晴が信じてくれない!」

「信じるとかじゃなくて日頃の行いのせいだと思うけど」

 

フランがずばりと言い切った。それに対しこいしはヨヨヨと泣き崩れている。なんともまあ演技力が高いことよ。

 

「…なんだか定晴、また変なのに巻き込まれたんだね」

 

妙に神妙な顔で話し始めるこいし。

 

「私はあまり定晴に無理をしてほしくないんだけど…」

「今回のは俺にも若干責任があるし仕方ない」

 

チヌも一応それは認識しているのか若干苦笑いだ。誰もあの森での事件のあとに不動に連絡をしなかったので俺もチヌもある程度の責任はある。やはり放置するのはよくないな。

 

「でも…私は…」

 

こいしが何かを言いかけた時。

 

「くっ…堀内!チヌ!こいつらをなんとかしてくれ!気絶するまで飲まされる!」

 

奥の方で不動の悲鳴が聞こえた。幻想郷の住人、特に鬼に大量の、しかも度が強い酒を飲まされているらしい。ここから見えるだけでも既に不動の顔は結構赤い。あのままいけば二日酔い確定の今なら頭痛と酩酊のおまけつきになるのは間違いないだろう。

 

「チヌ、助けてやったらどうだ?」

「ここから不動が情けないところを見るのも悪くないが…ま、いいだろう」

 

チヌが笑いながら不動のところへ移動した。

 

「すまんな。こいし、なんだ?」

「え?あ、いや!全然気にしないで!」

 

こいしは取り繕ったような表情を浮かべて手を横にパタパタと振った。話の途中で中断されたときほど気まずいことはない。申し訳ないことをしたな。

 

「お兄様って、そういうところ本当に悪い男よね」

「はい?」

 

なんかフランに罵倒された。まあ反論できないことを今まさに証明してしまったわけだが。

 

「ねえ定晴、もう事件に巻き込まれたりしないよね?」

「今までの異変も大体は不動の仕業だったみたいだししばらくは大丈夫だろう」

 

驚いたことに地底でのあれこれなんかも不動の仕業だという。地底の妖怪たちの地上への憎しみを開放してやったというが…開放する能力って本当に厄介だな。

 

「…それならいいんだけど」

 

なんか今日のこいしはいつにもまして妙だ。こいしにしては心配しすぎな気もするし何が気になるというのだろうか。

こいしとフランはそのあとそのまま人込みの中へ消えてしまった。言いたいことだけ言って去っていったみたいな感じで後味は悪いが、何かあれば向こうから話してくれるだろう。

俺は幻想郷の住人たちと早くも馴染めそうなチヌと不動のやり取りを遠めに見つつ宴会の夜は更けていった。




ここで一段落…なのですが、物語全体の大体四割くらいって言ったら、どうします?
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