東方十能力   作:nite

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二百十六話 買い物道中

ユズのことはルーミアに任せて、俺は人里に来ていた。なんだかんだ言ってしばらくの間買い物をしてなくて必要なものがあまり家に残っていなかったのだ。これからは食材なんかは三人分となるので備蓄も多めに買っておく必要があるな。因みにユズが必要そうなものは別の日にユズと一緒に買いに来る予定だ。

 

「おお定晴さん。どうだい、このカブは。今なら安くしとくよ?」

「そもそもの値段が高くないか?」

 

幻想郷における物価は外の世界の物価と大きく異なる。農作の規模も効率も外の世界に比べて断然良くないので当然ではあるが、そもそも使う硬貨からして外の世界で一般に使われているものではないのだから考え方もちょっと変わってくる。

幻想郷で外の世界のような造幣局はない。実際には違うが、寛永通宝のようなものを使っていると思ってくれて問題ない。そのため物価の違いを厳密に比べることはできないのだが…お金を作ること、そして管理することが外の世界よりも大変だというところからある程度推し量るべし。

 

「実は今年はあまり野菜の出来は良くなくてね…」

「不良だったのか?」

「純粋に収穫量が少なかったんだよ。前の騒動で畑が一部荒れちまってねぇ」

 

うーむ、前の騒動となると不動の一件だろう。不動は幻想郷の住人の負の感情を開放し暴走させていた。そのせいで俺とは関係ない場所にいるやつはただただ暴走していたらしい。その影響で畑が荒れたとしてもなんら不思議ではない。

原因の発端は俺なので申し訳ないし買わせてもらうか。

 

「まいどー!」

 

勝った野菜はすぐさま幻空の中に放り込む。たくさんの野菜を買おうとも俺が荷物に苦しむことはないのだ。

さらにしばらく歩いていたら人里においては珍しい姿を見つけた。

 

「さとり?」

「あ、定晴さん」

 

地霊殿の主、古明地さとりだ。なぜか一人で地上の人里歩いている。さとりは能力のこともあるし、地霊殿の主として堂々と不可侵の条約を破るわけにはいかないと思うのだが…

 

「ええ、その通りですよ」

 

ああそうだ。口に出さなくてもさとりには筒抜けとなってしまうんだったな。あまりさとりと話す機会がないので忘れてしまっていた。心の声を聴くかはさとり自身で決めることができないと言うし、人里なんて場所ではうるさくて仕方ないと思うのだがどうしてこんなところにいるんだろうか。

 

「ふふっ、貴方のその考えてしまう癖、まだ治ってないんですね。実はこいしを探しに来たんです」

「こいしを?」

 

こいしと言えば数日前の宴会に来ていたはずだ。俺は姿を見ていないがお燐やお空とも一緒だと言っていた。さとりの許可は取ってないだろうと思っていたが、そのあとどうなったかは分からないな。

 

「ああ、やはり地上には来ていたんですね。実はその数日前からこいしが帰ってきていないのです。地獄の管理があるからとお空は戻ってきたのですがお燐も戻ってきていなくて…」

 

なるほど。それでこいし探し要員もいなくなったからさとり自らが地上まで探しに来たということか。だが地霊殿にはお燐たち以外にもたくさんのペットたちがいたと思うんだが…

 

「あの子たちはあまり地上に慣れていないんです。それに話すことができない子も多いですし、仕方ないんです」

 

地霊殿の主も大変だな。

それにしてもこいしか…流石に寝る必要もあるし変な森の中にいることもないと思うが…可能性としては紅魔館とかだろうか。紅魔館にいなかったとしてもフランが何かを知っているかもしれないしな。

 

「実はもう行ってきたところでして。フランさんは何も知らないようでしたよ。実際宴会が終わってからは一回遊んだきりで、そのあとは会っていないようでしたし」

 

さとりが事情聴取をすると嘘に惑わされることなく確実で正確な情報だけを得ることができるからその点においては能力も便利だな。もし外の世界で警察になったら超敏腕として名を馳せることになるだろう。覚り妖怪の本質として相手を惑わすことも得意そうだしな。

 

「その警察の仕事は随分と大変そうですね。というか貴方本当に様々な仕事をやっていたんですね…」

「資格とかは色々持っていたからな。しかし、こいしはどこに行ったのか…」

 

こいしとよく遊んでいるイメージがあるのはやはりフラン。それ以外となると魔理沙とか、もしくは…そういえば昔、宴会でこいしとフランの他にもう一人いたことがあったな。確か名前は…封獣ぬえ。どこにいるかは分からないが彼女が知っている可能性もあるか。

 

「彼女は今は命蓮寺にいるはずですよ。彼女は仏門に入っていますから」

「え、そうなのか」

 

前に聖と会った時にぬえとは会わなかったが、まさかあそこにいたとは思わなかった。鵺という妖怪の本質は正体が分からず、人間を惑わせることだと思うのだが何がどうなって仏門に入るのだろうか。

 

「聖さんの教えに感動して仏門に入る妖怪も幻想郷では少なくないんです」

「へぇ…」

 

幻想郷の妖怪はやはり外の世界の妖怪とはちょっと違うようである。もしかしたらここと同じようにある程度人間と共存できる妖怪もいるのかもしれないが、少なくとも俺は出会ったことがない。いや、だがチヌのような例も存在するか…

 

「昔そんなことが…」

「勝手に納得しないでくれ」

「ふふっ、聞こえてしまったものですから」

 

さとりの前であまり過去のことを思い返すのはやめた方がいいんだよな…

 

「貴方はその考え事をする癖を治した方がいいと思いますよ?今も会話しながら頭の中で別のことを考えているみたいですし、コストパフォーマンスがあまり良くないかと」

 

さとりがコストパフォーマンスという言葉を知っていたことに驚きながらも同意する。考え込んでしまってルーミアに注意されたことも一度や二度ではない。

 

「ふぅ、少し話し込んでしまいましたね。私はこれから命蓮寺に行ってみようと思います。こいしを見つけたら捕まえておいてくれませんか?」

「了解」

 

さとりは命蓮寺の方へ歩いて行った。

こいしのストッパー役としてお燐もいるはずなのだが、今のところお燐がしっかりとストッパーとして機能しているのを見たことがない。というか多分ペットという立場上こいしに強く言えないから人選ミスなんだと思う。ペットの中でももっとこいしにも強く言える人がお目付け役になった方がいいと思うのだが…いや、お燐がそういう性格だからこそこいしは言い訳のために連れて行っているのだろう。

 

「大変だな…」

 

俺はさとりを労うように呟いた。

 


 

買い物を終えて家に帰ると来客がいた。

 

「やっほー定晴ー!」

 

こいしと話しつつこっそり紙の式神を飛ばしさとりに連絡。そのまま連れて帰ってもらった。

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