東方十能力   作:nite

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二百二十四話 油揚げ愛好家

「む?油揚げが枯渇してきたか…」

 

ここは世界の隙間、幻想郷に限りなく近い幻想郷ではないどこか。紫様が住んでいる屋敷である。

今日の昼ご飯にきつねうどんを食べたら油揚げの在庫が少なくなってしまった。昔から狐の好物として油揚げが例に挙がるものだが、私もその例に漏れず油揚げが好きなのである。

 

「少し出かけてまいりますね」

 

寝ている紫様に一応の声掛けをしてから家を出る。

紫様はその強大な力を保持するためか一日に眠る時間が異様に長い。そして冬眠もする。二月になっても紫様はずっと眠っている。本来はこの時期になればそれなりに活動的になるものだが、やはり定晴さんが巻き込まれた異変の後始末で隠岐奈様と一緒に色々と能力を使ったのがきいているのかもしれない。

 

「ちぇーん!」

「はい、藍様!」

 

人里に行く途中でマヨイガに寄って橙を呼ぶ。ここは幻想郷内のいわば猫の溜まり場である。橙はそこで猫のリーダー的な役割をして日々式神としての力をつけさせているのだが…まだまだ精進が必要そうだな。

とはいえ橙のことを私は大切に扱っているので急かす理由はない。今のところ猫の手も借りたいような状況にはなってないので橙にはゆっくり成長してもらいたい。

 

「今日は一緒に夜ご飯を食べようか」

「やったー!」

 

油揚げを買うついでに夜ご飯の材料も買うべきか。冬眠中の紫様が起きるのは三日に一度くらいなもので、それ以外は基本的に私一人でご飯を食べている。私とて九尾の狐なので数日食べずとも活動は可能だが、私が倒れるわけにもいかない。

さて、人里に到着したらまずは油揚げ。嵩張るものでもないので先に買ってしまう。

 

「いつもの量だけ、油揚げを頼む」

「はいよ」

 

人里でも油揚げを売っている店はいくつかあるが、その全てを食べ比べした結果ここの油揚げが一番私の口に合っていた。それ以来ずっとここで油揚げを買っている。

 

「はいお待ちどう」

 

お金を渡して油揚げを受け取る。

先程嵩張るものではないと言ったが、実のところ私が一度に買う量はそれなりに多いため全く邪魔にならないというわけでもない。まあ気にする量でもないだろう。

 

「ん?藍と橙か?」

「定晴さん、なんだか久しぶりですね」

 

ふと声をかけられた方を見るとそこにはルーミアと定晴さんがいた。私の主である紫様のご友人であり、本人は謙遜するもののそれなりの力の持ち主。

また隣りにいるルーミアもそれなりの力を持つ妖怪だった。それは昔の異変で明らかになり、その後は一緒に住んでいるというが…毎日ではなくともよく橙と一緒にご飯を食べたり寝泊まりをしたりするのでちょっとだけ親近感がわく。定晴さんとルーミアの関係は私達と同じく主と式神だから尚更私達は似ている。

 

「うお、なんだその油揚げの量」

「家のストックが減ってきたので買い出しです。定晴さんもお一ついかが?」

 

油揚げが好きな人が増えるのは喜ばしいことなので定晴さんにも一つ御裾分けしようかと提案する。しかし定晴さんは首を横に振り拒否をした。どうやら昨日既に油揚げを味わったらしい。

 

「そちらも買い出しですか?」

「ああ。食材じゃなくて布だけどな」

 

定晴さんは家事全般をこなす。そして家事以外のことも大体できる。外の世界で様々な仕事を経験し、またなんでも屋としての活動での経験もあってかどれもプロレベルの成果を出す。料理に関しては前に私も食べさせてもらったが、外の世界の現代料理においては私も負けを認めざるを得ない味だったのを覚えている。

 

「そういえば定晴さんは動物霊というのをご存知ですか?」

「動物霊?」

「はい。最近増えているようなのです」

 

紫様が眠っている間は幻想郷の管理を私がしているのだが、その中でよく動物霊を見るようになった。基本的には死んだ動物たちが成仏せずにふよふよ浮かんでいるもののことだ。

幻想郷には彼岸が繋がっており、三途の川も直結している。そのため幽霊がよく幻想郷を浮いているのが確認されている。幽々子様が冥界の管理をしているはずなのだが、春雪異変のあとはなぜか紫様が結界を放置しており冥界の方から流れてくるものもたまにいる。

動物霊も人魂もその多くは私達に害はなく、その力の矮小さ故に物に取り憑くなんてこともできないはず。しかし量が多いのも困るのでなんとかしたいところ…

 

「原因は分かってるのか?」

「どうやら地獄の向こうから流れてきているとだけ…私とてあまり向こうには行きたくないので…」

 

ただもしこれ以上に増えるのであれば霊夢を遣わせる必要もあるのではないかと考えている。もしくは定晴さんでもいいが…先日酷い戦闘もあったばかりだし今回は休んでもらいたいところ。

 

「おにいちゃーん!」

 

そんなことを話していたら寺子屋から出てきた子供たちが定晴さんに集まりだした。どうやらたまに寺子屋の先生をしているらしく子供たちも定晴さんのことを信頼しているのが見て取れる。

そういえばと定晴さんが子供たちに意識を向けているうちにルーミアに話しかける。

 

「ルーミアはバレンタインに何かするのか?」

「へ!?あっ…えっと…まあ、一応…ね?」

 

どうやら定晴さんは全く気付いていないようだが、ルーミアは多分定晴さんのことが好きである。

幻想郷ではそこまで主流のイベントではないので知名度はあまりないが、バレンタインでチョコを渡すという人もいる。かくいう私も紫様のために当日はチョコケーキを作る予定だ。

ルーミアが料理をできるのかわからないが、どうやら計画中らしい。なんというか…ふむ…ああ、外の世界でいう青春というものか。ルーミア自身はそれなりに長く生きているらしいのだが、こういうところで初々しいものが見れて少し楽しい。

 

「っとすまない藍。話の途中だったな」

「いやいや、こちらこそ邪魔をしてしまって悪かったな」

 

定晴さんたちと別れて買い出しの続き。

まだまだ寒いし、今日は鍋料理にしようか。

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