東方十能力   作:nite

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二百二十九話 彼岸

結果で言えば当然のように霊夢が勝利した。ただの一発も当たることなく綺麗に全ての弾幕を避けた姿はやはり博麗の巫女と言ったところ。

牛鬼の名前は牛崎潤美というらしい。人を襲うわけでもなく三途の川で採れたものを売ったりして生活しているらしい。三途の川で採れるものがあることにも驚きだが、それ以上に買ってる人は誰なのだろう。

霊夢によって鎮圧された潤美を越えて(再生はしてあげた)とうとう俺たちは彼岸へとやってきた。別に特別な景色というわけではなく、幻想郷側の川辺とあまり変わらない。

 

「んでここからは?」

「こっからは降りるわよ。地獄行きってやつね」

 

それは悪いことをした人に対してのみ使う慣用句じゃなかろうか。まあ俺も悪いことを一切していないとは言うつもりはないけど。

霊夢に導かれるまま歩いていると正面に人影を見つけた。また戦闘になるのかと警戒して近付いてみると、そこにいたのは妖夢だった。

 

「あれ?なんで妖夢がここにいるんだ?」

「ん?あ、定晴さん。それに霊夢。それはこっちのセリフですよ。なぜ二人がここに?」

 

事情を聞いてみると、どうやら妖夢も俺たちと同じように動物霊絡みの異変解決に来ているらしい。確かに幽霊の問題ではあるから冥界の妖夢が動くというのも頷ける話である。

 

「私はこれから閻魔様に会おうかと思いまして」

「映姫か?」

「特に指定はありません。まあ四季さんなら他の閻魔に比べて知己なので楽ではありますが」

 

閻魔というのは一人ではない。というか映姫一人で死者を裁くことなどできはしない。ある時に映姫からヤマザナドゥという役職であることを教えてもらったが、きっとそんな感じの役職が他にも存在するのだろう。ただ閻魔であれば大体は動物霊のことも知っているはずだろうから妖夢は特に指定もしていないのだろう。

流石に彼岸に来てすぐに閻魔と会うのは難しいらしく妖夢はここで待機していたようだ。

 

「あんたねぇ、そんな面倒なことしなくても元凶をさっさと叩きに行けば解決するじゃない」

「そうは言ってもさすがに半人半霊の私が許可なく地獄に行くのは難しいんですよぉ…」

 

というか普通は許可とか関係なく地獄に飛んでいくのは難しいとは思うのだが、そこは幻想郷の感性の違いだろう。

霊夢はここで待機している妖夢のことは放置し先に進むことに決めたらしい。なにか分かったらあとから教えるようにと念を押しているのは霊夢らしい。

 

「地獄は罪人でなければそこまでではありますが、それでも地上よりは過酷な場所なのでお気をつけて」

「妖夢も、な」

 

俺たちは妖夢に別れを告げてしばらく歩いた。すると途中で不思議な場所を抜けて、気がついたら地獄の入口に立っていた。霊夢もここに来るのは初めてらしくキョロキョロしている。

地獄というと血の池だとか針山だとかが思いつくが、既に地霊殿のある旧地獄で何日も過ごしているのでさほど恐怖は感じていない。

俺たちの目の前にはちょっとした建物があり、それが門のようになっている。そしてそこには見慣れる姿の妖怪が一人…

 

「あなたたちもここから先に行くのね?」

「ええそうよ。というかあんた誰よ」

「私は庭渡久侘歌。ここからは先は動物霊たちが占拠していて危険だから引き返すことっ!」

 

黄色い髪と黄色い服。鳥の妖怪…なのだろうか。髪の中になぜかひよこらしき姿が見えるし、人形かと思ったら普通に啼いている。髪の中に動物を飼うとは珍しい飼育方法だ。

 

「それは私が博麗の巫女だっていうのが分かった上で言ってるの?だとしたらぶっとばすわよ」

 

すごい不穏な言葉だが、「(弾幕ごっこで)ぶっとばす」という意味なので実際に血みどろの闘いになることがないのが安心材料である。やはりどうしても俺の輝剣などは過度に人を傷つけてしまうから大変だ。俺からも妖夢に弟子入りして剣を使った弾幕ごっこのやり方でも教わったほうがいいだろうか。

霊夢の言葉で何かを思い出した様子の久侘歌。

 

「ああ、あなたが……閻魔様から話は聞いています。ここから先でも通用するか存分に試しなさいってね!」

「ふーん、いいわ。思う存分負かしてあげる」

 

どうやら久侘歌は一種の門番らしい。霊夢の力がここから先でも問題ないかを試すようである。さて、今回も俺は観戦かな…

 

「えっと、そちらの人は?」

「彼は堀内定晴っていう人間よ。でも腕は立つわ」

「あ、でしたら私達が戦っている間に動物霊たちが幻想郷側に行かないようにしてもらってもいいですか?」

 

それだけ言うと霊夢と久侘歌は空へと飛んでいった。どうやら今回は俺もただ観戦しているわけにはいかなそうである。

久侘歌が去ったのを見計らったのか動物霊たちが門を越えて幻想郷に飛んでいこうとする。

 

「たかが人間相手、なんて思うなよ?」

 

輝剣を召喚。ついでに結界で入口も封鎖してしまう。これで動物霊たちは俺を倒さなければ出ていくことができなくなってしまった。

 

「地獄で浄化なんて使ったらどうなるか分からないから陰陽式でいくぞ」

 

俺は純粋な浄化の力を使えるので能力だけで妖怪や霊を抑えることができるが、昔いた陰陽師などはそんな力を持っていない。それでも鬼やらなんやらと渡り合えたのはその陰陽術があったからこそだ。俺もなんでも屋としての一環で陰陽師のことを調べたので動物霊相手なら調伏くらいは可能である。

 

「取り敢えず動けなくなるくらいにやってやるよ」

 

霊夢たちが上空で綺麗な戦闘を始めたとき、地上ではお世辞にも綺麗とは言えない戦闘が始まったのだった。

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