東方十能力   作:nite

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二百三十話 現地獄

約六十体。俺が霊夢と久侘歌の戦闘中に調伏した動物霊の数である。上空にいる霊夢たちに影響しないように戦う必要があったため実のところ地上に逃げた動物霊が全くいないというわけではないのだが…誰かが向こうでやってくれるだろう。妖夢もいたしな。

 

「さ、これで通っていいでしょ?」

「地上の人間たちってみんな強いんですかぁ…?」

 

なんだかやけにボロボロとなっている久侘歌が地に足をつけた。俺は戦闘を見れていなかったが、もしかして結構ド派手なことをしていたのだろうか。

 

「心配しなくていいわ。私がスペルカードを使っただけだから。夢想封印を回避できなかったこいつが悪いのよ」

 

霊夢の夢想封印はホーミングだから回避できないのではと思うが、まあ久侘歌も納得しているようだし言わぬが花か。

霊夢はどんどん進んでいくが、俺は久侘歌に少し気になったことを訊いた。出会ってからずっと気になっていたことだ。

 

「もしかして俺たち以外にも来たのか?どうも別に一回戦っているような口ぶりだから…」

「数十分くらいまえに白黒の魔法使いがここを通りましたよ」

 

つまり俺たちよりも先に魔理沙がいるのか。魔理沙も異変解決のプロフェッショナルなわけだし、霊夢が黒幕に辿り着くのが先か、魔理沙が先かといったところ。魔理沙は魔理沙で探索をしているのですぐに黒幕のところまで行けるわけではないだろうが、それは俺たちも変わらないわけで…

 

「聞いたか霊夢」

「ええ、なんとなく予想していたわ。別に先に倒したからどうというわけではないけど、魔理沙に負けるのは癪ね。定晴さん、急ぎましょ」

 

そう言うと霊夢は速度を上げた。それに合わせて俺も風を強くして速度をあげる。

久侘歌がいた関所を過ぎれば一気に様相は変わってくる。どこに何があるのかは分からないが、意外と開けているのでなんとかなるかもしれない。

 

「まずどこから行く?」

「そうねぇ…」

 

霊夢が周囲を見渡す。色んなところに動物霊がいるうえ、それを全部浄化していてはキリがないので今はどうしようもないが…と、少し違和感を覚えた。なんというか、知らない場所ではあるものの決定的におかしいと思えるような…

 

「ねえ定晴さん、人間の霊を見なかった?」

「…いや見てないな」

 

違和感の原因はそれだ。ここは地獄であり、人間の魂が罪を償うためにある場所である。動物霊がいっぱいいるので妙な気分になったが、本来は動物霊ではなく人間の霊がいるはずなのである。

 

「たしか動物霊は幻想郷を支配するために動いてるんだよな?霊って他の霊に攻撃できるのか?」

「私達にすら攻撃してくるんだからそりゃできるわよ。ただここまでいないとなると変ね。もしかして黒幕が動物霊の侵略の邪魔にならないように捕まえてるのかしら」

「そんなことして閻魔たちは動かないのか?」

「さあ?」

 

閻魔たちは魂の管理者ともいえる存在なので人間の霊がいなくなればすぐに気付くと思うのだが…もしかして内部犯だろうか。どちらにせよ人間の魂がある場所に黒幕がいる可能性も高いというわけだ。

 

「目星はついたな」

「そうね。ちょっと私のこと守ってくれないかしら。術を使ってどこか探るから」

 

そう言うとお祓い棒を構えた霊夢の体から濃い霊力が溢れ出した。それに反応したのか先程までふよふよしていただけの同たちが霊夢に集まってきている。

何の返事も聞かずに術を行使するのは霊夢らしいが…すぐさま俺は戦闘態勢をとる。霊夢の邪魔をしないように今回も派手な技はなしだ。徹底的に調伏させてもらう。

 


 

地獄に来てから約数十分。私、霧雨魔理沙は未だに地獄を彷徨っていた。

 

「ここ、広すぎるぜ…」

 

そんなことをぼやいてしまう。

妖怪の山から行ける旧地獄の広さもとんでもないものであったし、そもそも旧都だけで相当な広さを持っていた。現在の地獄がそれよりも狭いはずがあるわけもなく、広い空間を彷徨うことになるだろうとは予想していたものの、体感では旧地獄の二倍以上は広さがあるように思える。

 

「きっと霊夢が動き出す頃だ。さくっと異変解決してやるぜ」

 

最近は定晴にばかり功績が行ってしまい私も霊夢もメンツがない。ここらで一つどかんと実績を積み上げてやろうと思っているのだが…

 

「むっ?」

 

突然私の後方から大きな霊力の波を感じた。そのせおで少しだけ体勢が崩れてしまう。

魔法使いな私は魔力を高めることばかりを注視してきたので霊力には鈍いのだが、そんな私でも感じ取れる霊力は霊夢に違いない。というか霊夢の霊力であれば間違いようもないのでこの霊力の正体は紛れもなく霊夢である。

 

「まずいな…早くしないと霊夢たちが追いついちまう…」

 

焦燥に駆られる私だが、なにか糸口を見つけられたわけでもない。この術は霊夢の探知のものだろうからちんたらしていたら本当に霊夢に先を越されてしまう。こんなところまできて霊夢に負けるのは非常に癪である。

 

「なにか…なにかないか…?」

 

必死に黒幕へと繫がる何を探す。だが見つからない。

しかしここで私は幸運に恵まれた。

 

「あれ?景色が変わった?」

 

いつの間にか暗い地獄からまた一つ世界を跨いでしまったようだ。そこには先程はほとんど見ることがなかった人間の霊が浮いており、動物霊たちは少なくなっている。

 

「もしかして大当たりじゃないか?」

 

私はニヤリとして人間の霊が集まっている方向へと向かった。

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