東方十能力   作:nite

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二百三十一話 案内人

「分かったか?」

「ええ、こっちに沢山の霊力の反応があったわ」

 

霊夢に示されたのは地獄のさらに奥。なぜそんな場所に集まっているのかは全くもって分からないが、行けばわかることもあるだろう。霊夢に導かれるままに地獄の空を飛び始めた。

 

「にしても今回の黒幕っているのか?動物霊全員が意思疎通してっていう可能性は?」

「それはないわ。だって言うて霊だもの。誰か霊に命令することができる人物が何かを企んで幻想郷に送り込んでこない限り動物霊があんな動きをしないわ。そもそもそれがあり得るなら今の今まで発生しなかったほうが変よ」

 

霊夢の言葉は俺を納得するのに十分だった。

それにしても動物霊を送り出した人物は何を考えているのか…ああ、幻想郷の支配という目的はあるようだが…動物霊だけで幻想郷を支配することができるなら既に誰かが支配しているに決まっている。そもそも紫を動物霊だけで倒すなんていうのは不可能である。

 

「ま、怪しきものは罰する。邪魔するやつを全員ぶっ倒せばいつか解決するわ」

 

外の世界の法律の真逆をいく霊夢の行動指針はある意味で分かりやすい。

近づいてくる動物霊の悉くを浄化しながら飛んでいたら俺たちが向かっている方向から大きめの力を感じた。この魔力は…魔理沙だろう。どうやら俺たちの先客である魔理沙は先に誰かと戦闘をしているらしい。

 

「地獄ってそんなに人がいるのか?」

「そうねぇ…取り敢えず地獄の管理者がいるのは確実。ついでに閻魔もいるかもしれないわね。ただこの状況だしまともなやつがいるとは限らないわよ」

 

入口には久侘歌がいたものの、今の地獄の警備管理は緩くなっているらしい。どうやら動物霊がいろんな悪さをしているようである。

 

「ま、行ってみれば分かるでしょ」

「だな。急ぐか」

 


 

到着してみるとそこにはボロボロの様子の魔理沙がいた。

 

「大丈夫か魔理沙!?」

「定晴?なんでここにいるんだ?霊夢は相変わらず動きが遅いな!」

「うるさいわね。それで?もしかしてあんた負けたの?」

 

霊夢の視線の先には何やら角やら尻尾やらがついている女性が浮いている。そしてその奥には人間の魂。更に奥に向かって集団で移動しているようである。ということは更に向こう側ということか…

 

「少しの腕試しだったのですが…」

 

女性は思案顔。一体こんなところで何をしているのだろうか。

 

「あなたたちは動物霊の討伐にしたのですよね?」

「ええそうよ。あんたは誰?敵?」

 

相手の返事を待たずして霊夢が臨戦態勢。お祓い棒の先を女性へと向けていつでも勝負ができる状態だ。

 

「私は吉弔八千慧。畜生界への案内をしようと思ったのですが…」

 

どうやら俺たちの案内役らしい。ではなぜ魔理沙がここまでボロボロなのかというといつもの『怪しき者は罰する』の理論で魔理沙が八千慧に勝負を挑んだからだそうだ。普通に案内してもらえばいいのに…

 

「罠かもしれないし結構よ。どいて」

「えぇ…」

 

霊夢の言葉でうっかり声を漏らしてしまう俺。その声でやっと気付いたのか八千慧が俺の方を向いた。

 

「博麗の巫女は分かりますが…あなたは誰でしょう?」

「補助だよ。霊夢の」

 

なんか面倒なことになりそうな気配がしたので名乗らずに霊夢の補助ということにする。間違ったことは言ってない。

さて、そんな風にしていたら八千慧は俺への興味をなくしたのか霊夢へと向き直った。どうやらこのまま弾幕勝負になりそうな雰囲気である。

 

「魔理沙、回復してやるからちょっと端っこに寄ろう」

「あ、ああ。分かったぜ」

 

霊夢たちに巻き込まれない位置に移動した瞬間、霊夢たちの弾幕が始まった。先程から霊夢は連戦のはずだがよくバテないものである。

その隙に俺は魔理沙に再生をかける。

 

「ふぅ…助かったぜ定晴」

「それはいいが…魔理沙があそこまで負けるのは珍しいな。どうしたんだ?」

「なんか集中できなくて…戦ってる最中ずっと逆らう気が起きなくてあまり高火力を撃てなかったんだぜ」

 

いつもは傍若無人の魔理沙が他人に対して気迫で負けるとは…それともそういう能力でもあるのだろうか。もしそうなら霊夢も危ういと思うが…

 

「まあでも霊夢なら大丈夫だと思うぜ」

「なんでだ?」

「能力だろうがなんだろうが他人に縛られないのが売りだからな。霊夢をずっと束縛するなんてのは無理な話だし、もし私と同じ状態になってもしばらくすれば慣れると思うぜ」

 

霊夢のことを見ながら誇らしげに、そして悔しそうに話す魔理沙。ライバルとしては色々と思うところがあるのだろう。

確かに霊夢は縛られたりするタイプではないことがよくわかる。長い間博麗の巫女としての立場を維持しているのは霊夢の性格を考えると珍しいことのような気もしてくる。霊夢は博麗の仕事にある程度の誇りを持っているそうなので中途半端に投げ出したりすることはないだろうが。

 

「まっ、しばらく私たちは観戦ってことで」

「そうだな」

 

一応流れ弾による被害がないように俺と魔理沙の周囲を結界で囲んでおく。ここらへんは動物霊もあまりいないので久侘歌のときのようなことはしなくてもいいだろう。

俺と魔理沙は霊夢と八千慧の勝負を解析しながら弾幕ごっこの観戦をしていた。数分後、霊夢は一発被弾してしまったものの魔理沙のようにボロボロになることなく勝負に勝ったのであった。

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