東方十能力   作:nite

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二百三十五話 知らない運命

結界を展開。妖夢と袿姫に被害が及ばないようにしてから輝剣で岩石を全力で切り裂く。身体強化を併用してなんとか破壊し、安全を確保。ただ未だに地響きは続いておりここにいるのは危険かもしれない。

 

「妖夢、安全な場所はどこだ?」

 

俺はここの地理に疎い。一応映姫の案内でここまで来たという妖夢なら何か知っているかもしれないと声をかけてみるが…

 

「すみません、私もここに来るのは初めてで…」

 

どうやら妖夢は存在こそ知っていたものの実際にここまで来たのは初めてらしい。ここは妖夢たちが管理している冥界とは完全に別の区画らしく、同じ人間の霊魂であろうとも地獄側の人間霊に関わることは少ないらしい。なぜそんな複雑な管理になっているのかは甚だ疑問ではあるものの、今はそれどころではない。

 

「こっち!入って!」

 

袿姫が俺たちを呼んでいる。罠である可能性も考え…一蹴。ここまで案内してきた人々が言っていた犯人とやらは袿姫らしいのだが、話を聞く限り袿姫は動物霊の保護を目的としていたようである。先ほど見かけたハニワの少女は袿姫の部下だと言うし…ふむ、どれが嘘かは分からないがまあなんとかなるだろう。

俺たちは袿姫に導かれるままに横穴へと入った。勿論人間霊も保護しつつだったが、頑張って結界を広げて道を確保することができたのでなんとかこちら側には被害なく逃げることができた。

しかしまだ問題は何も解決していない。

 

「袿姫、原因はわかるか?」

「そうねぇ…ここは地獄から繋がっているとは言っても完全に地続きというわけではないし、地上とも格別された空間だからただの地震ではないことは確かよ。ただそれ以上は分からないわ」

 

現在の状況については分からなかったが、一応袿姫自身に動物霊の問題についても質問しておく。

袿姫は今回俺たちを案内してくれた八千慧とは敵対関係らしい。というのも八千慧は動物霊たちの上司にあたるらしい。ではなぜ今回俺たちをここまで案内したのかと言うと、俺たちに代わりに袿姫を倒させる目論見だったそうだ。勿論これは袿姫から聞いた話なのでどっちが本当なのかは分からないが…なんとなく勘ではあるが、袿姫の言ってることが正しいような気がする。

 

『多分正しい。そいつから負の感情はあまり感じないからな。嘘はついてないだろう』

『私も正しいと思うわ。私のは経験からね。嘘をついているような反応ではないから。これで嘘をついているなら…流石神様ってところかしら』

 

狂気と魔女の両方からお墨付きももらえたし、今のところは袿姫が本当のことを言っていると仮定して話をすすめよう。もし違ったときは俺が責任をもって袿姫を打ち負かせばいいだけだしな。

 

「定晴さん。霊夢たちと合流した方がよいのではないですか?」

「そうだな…実は言うと魔理沙もいるんだ。ただそっちは結構前に別れたから合流できるかは半々ってところだな。取り敢えず霊夢がいるところに行ってみよう。ハニワの少女の場所だ」

「それなら私が分かるわ。ついてきて」

 

俺がここに来るまでとは違うルートで霊夢のところへ向かう。移動している最中も揺れが収まる気配はなく、この道も崩壊する可能性があるのでできる限り急いで移動。やはりここは複雑な迷路になっているらしく、袿姫はどうやっているのか分からないが迷うことなく進んでいく。

 

「それとずっとあなたが言っているハニワの子は杖刀偶磨弓っていう名前よ」

 

移動中にしれっとハニワの少女の名前を袿姫が教えてくれた。ハニワを使役して戦うなんて不思議な戦い方をするものだと思ったが、脳裏にちらつく人形遣いの少女…アリスだって人形を操って戦うのだからあまり不思議なものでもないかもしれない。

アリスの夢は自立人形を作ることらしいのだが…あのハニワって自立しているのではなかろうか。磨弓がハニワたちに攻撃を指示していた様子はなかったし、磨弓から離れた後もハニワたちは攻撃してきていた。あれがどういう原理で動いているかは計り知れないが、アリスといい感じに仲良くなれるかもしれないな。

 

「この先です!」

 

袿姫に案内されるまま道が開ける場所に出た。そこは確かに先ほどまで霊夢と一緒にいた空間。未だにハニワは何体も残っているものの、結構な数が消えているのは戦闘による消耗だろうか。しかし…

 

「霊夢ー!いないのかー!」

 

そこにはハニワの少女…磨弓も、霊夢も姿がなかった。

霊力の反応…妖力の反応…神力の反応…すべて無し。遠くで争っているのだろうか。弾幕ごっこはその性質上大きく移動することが必要となる。この空間も広くなってはいるものの弾幕ごっこに十分な広さがあるとは言い難い。なので別の場所に移動しながら戦っている可能性もあるが…

 

「定晴さん、本当にここで霊夢と別れたんですよね?」

「ああ、その通りだ」

「ではなぜ…ここに霊力の反応がないんですか?」

 

そう、そうなのだ。霊夢の霊力は人間の中でも極上のもの。その霊夢が少なからず戦闘をしているのであれば確実のその跡が残る。ここで戦闘があったのはハニワの状況からしても確実だろうが、霊力がない理由がまったく分からない。

 

「袿姫、何かわかるか」

「分からない…分からないわ!こういうのは初めてよ!」

 

少しパニックになっているのか先ほどよりも声を荒げている。

なぜ霊夢の力を感じないのか。残っているはずのものがないという時、基本的には二つのパターンしかない。元々なかったか、誰かに持ち去られたか。前者の場合は話は簡単だが…あの雰囲気の霊夢が戦闘をしていないはずがないので却下。となると後者の可能性だが…はたしてそういうことができる人物はいるのだろうか。

 

「定晴さん…」

「…妖夢、どうにかして映姫と連絡は取れるか?」

「え?そうですね…この畜生界の入口までいけばなんとかなるかもしれません。ただ私は裏道を通ったのでどこが入口か分からなくて…」

「じゃあ私が案内する」

 

袿姫がすぐさま反応した。パニック状態からすぐに落ち着いたのはさすが神様ということだろうか。

 

「定晴さんは?」

「俺はこのまま捜索をする。映姫が来てくれればなんとかなるかもしれないが、魔理沙もいるしな。案はあるからなんとかする」

 

妖夢には軽く説明して映姫と連絡してもらう。人間霊は途中で安全なところに置いておくらしい。人間霊を支配するような立場であるものの、人間霊を守るという約束で召喚されたのだからその契りを破ることはできないらしい。

 

「じゃあ頼んだぞ妖夢、袿姫」

「はい!定晴さんもご武運を」

「道案内は任せてちょうだい。私もあの子のことは心配だし、異変が早く終わる分には損はないわ」

 

人間霊を引き連れた妖夢と袿姫が畜生界の入口に向けて飛んで行った。未だに揺れは収まっていないが妖夢なら大丈夫だろう。袿姫の実力がどれほどのものかは知らないが、神様と呼ばれているくらいだしこれくらいは大丈夫であると信じたい。

対する俺はというと…

 

「本当は使いたくなかったんだが…」

 

幻空の中から一枚の紙を取り出した。仰々しい…とまではいかないものの特殊な文字が書かれた紙。そこに霊力を込めて、念じる。

 

『すまないが、手伝ってくれ』

『ええもちろん。私はあなたの…式神よ?』

 

一気に霊力を開放。そして妖力も使い力の流れ、繋がりを意識する。

 

「来い、ルーミア!」

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