ルーミアが伝えてきた場所はここからそう遠くはない場所であった。俺が抱えているハニワが震えっぱなしなので磨弓は霊夢と一緒にいないということだろう。このハニワも磨弓のところに行きたいだろうから離してあげたいのは山々だが手掛かりがこれしかないのでしばらく我慢してもらう。
「あ、ごし…定晴!」
魔理沙の姿が見えた瞬間呼び方を変えるルーミア。それ疲れないか?
ルーミアの足元には霊夢が倒れていた。どうやら意識を失っているようで、それ以外に目立った異常はない。怪我をしているわけではなく、巫女装束も俺と別れた時とそこまで変わらない。弾幕ごっこをしたのならある程度服も乱れていると思うのだけど…
「ルーミア、霊夢はここにいたのか?」
「私が見つけたときは既に気を失ってて…」
ルーミアは特にめぼしい発見もなく適当に飛んでいたところ霊夢が倒れているのを見つけたそうだ。動かそうにもどこに連れていけばいいかなど分からないので式神の繋がり経由で俺に連絡してきたらしい。
「む、そういえばルーミアは定晴の式神になったんだったな。すっかり忘れてたぜ」
「えへへ、そうなのだー」
宴会のときに公表し、文が新聞で大々的に報告したこともあってルーミアが式神になっているということを知っている人は多い。しかしルーミアといえば一人で暗闇から人間を襲う妖怪という感覚が抜けきれないからかそのことを忘れてることもこれまた多かったりする。
かく言う俺も式神を持つことになるなんて思わなかったから最初の頃はルーミアが家にいるという感覚が妙な感じがしてた。流石に今は慣れたしユズだっていうからもう何とも思わないけどな。俺の家は一人暮らしするには少々大きすぎたからちょうどいいと思っている。
「れーいーむ!おーきーろー!」
魔理沙が霊夢のことを揺さぶりながら大声で声をかける。しかし霊夢は唸るばかりで目を覚ますような気配はない。
「うーん、霊力が足りないのかもな」
しばらく色々と試した結果魔理沙はそう結論を出した。俺も確認のために集中して霊夢の中にある霊力の量を確認してみると、普段は桁違いな霊力量があるにも関わらず今は一般人よりも少ないくらいの霊力しかない。人間は霊力が力の根源にあるのでこれが少なくなると霊力欠乏症となって動けなくなってしまう。霊力がなくなろうとも死ぬことはないのだが今の霊夢のように気を失ってしまうことがほとんどである。
取り敢えず俺が持っている霊力を霊夢に流しておく。ついでに再生の力もかけて回復量に拍車をかけることとする。一応いつもの霊夢の霊力量の三分の一くらいにはなったのでしばらくすれば目を覚ますことだろう。いつものように動くのは難しいかもしれないが仕方ない。
「魔理沙、霊夢をその箒に乗せてくれるか?」
「私が支えることになるから面倒なんだが…まあ仕方ないから特別だぜ」
目を覚ますまでここで休ませてもいいのだが可能ならもっと探索をしたいところだ。まだ磨弓を見つけてないし、俺が持ってるハニワは未だに震え続けている。なんというか手に持てるサイズで震える人形と言うと外の世界でたまにある安い人形を思い出す。
「このハニワが示す方向に行くぞ。その先に磨弓がいるかもしれない」
何があってもいいように…というか今はこのハニワくらいしか手掛かりがないので今度は魔理沙、ルーミアの二人とも一緒に行動する。ハニワの震えがさっきよりも大きいような気がするのは目的地に何かあったからなのか俺がやっと目的地に向かうことへの抗議か。
「霊夢には早く起きてもらって自分で飛んでもらうしかないな。邪魔だぜこいつ…太ったんじゃないか?」
霊夢の体を支えながら飛ぶ魔理沙が愚痴る。いつもアリスと一緒に博麗神社に来るときはアリスを箒に乗せているような気がするのだけど…やはり支えというのは十分な負担になるようである。このままだと魔理沙の場合どこかに放置するみたいな判断をする可能性があるので霊夢には早く起きてもらいたいものである。
「段々ハニワの震えが大きくなってきたな。もしかしたらもうすぐなのかもしれないぞ」
「そのハニワの原理が気になるなぁ…アリスの人形は解体させてくれないからそっちのハニワを解体してみようかなぁ…」
「これも人のだぞ」
パチュリーのところから本を奪う魔理沙に人のものがなんたるかを説いたところで意味がないのは知っているけども。というかこいつアリスの人形を解体しようとしたのか…アリスの人形は半自立らしいから自衛手段くらいはアリスの命令なしでもこなしそうである。同じ意味で言うとこのハニワも磨弓の指示がなくとも飛んで攻撃してくるのだけど…突っ込んできてたまに弾を撃つくらいだから魔理沙だと気にせずに解体しそうなものである。磨弓に会ったら注意してもらうように言わないといけないかもしれない。
「ここじゃないか?」
たどり着いたのは一つの大部屋。ここから繋がる道はないのでここが目的地なのだろうけど…一見すると何も見えないのでハニワを離してみる。ゆっくりとはいえ目的地までふわふわ飛んでいこうとしていたから何かわかるかもしれない。
ハニワはゆっくりと部屋のひとつの隅へと飛んでいく。ハニワを追い越し岩陰を見てみると…
「動物霊だと?」
他のものより一回りも二回りも大きい動物霊が鎮座していたのだった。