なぜこんなところに動物霊がいるのだろうか。というかハニワが飛んでいく方向だから磨弓がいると思っていたのだが…ハニワも何がなんだか分からないといった様子でふらふらしている。
「おいおい、ただの動物霊じゃないか。そのハニワ壊れちまってるんじゃないか?」
魔理沙が動物霊を見ながら呟く。確かにハニワはあんだけ数がいたし、このハニワに関しては道に落ちていた個体なので壊れていてもおかしくはないのだけど…
「動物霊ってこんなにでかいのか?」
この動物霊、規格外というほどに大きい。動物霊と言うのだからその大きさは魂に比重しているはずであり、では魂は何から構成されているかと言うと人間なら霊力、妖怪なら妖力といったような地力である。一介の動物霊がここまで肥大化しているなんて不思議な話である。大きいからか分からないが俺たちが目の前に来ても動く様子はない。まあ目はないのだけど。
「私は霊に関しては分からないなぁ…妖夢とかそれこそ眠り込んでるこの巫女ならわかると思うが」
「右に同じー」
魔理沙は魔法使いなのでこっち方面に関しては知らないようである。ルーミアは最近よく本を読んでいるけど霊魂に関する知識は併せ持っていないようだ。俺はと言うと人間霊ならまあ分からなくもないが動物霊に関してはよく分からない。
「進まないからこの巫女叩き起こしてもいいか?」
「え?ああ…まあ、いいぞ。怒られても知らないけどな」
魔理沙が霊夢を起こすというので離れておく。魔理沙のことだからまともな方法で起こさないのは分かり切っているので結界も張って身の安全を確保しておく。ルーミアも結界のこっち側にいる。
「そんな逃げなくてもいいってのに…じゃあ、彗星【ブレイジングスター】!」
やっぱりあぶねえじゃねえか。
そもそも帽子の中からミニ八卦炉を取り出した時点で怪しかったんだ。だってミニ八卦炉を魔理沙が使うときに高火力だったことがないから。どうやらミニ八卦炉は調整することでコンロの火くらいの火力も出せるようだが果たして魔理沙はそのような調整したことがあるのだろうか。
彗星と化した魔理沙は勢いそのままに霊夢に直撃した。そして霊夢が吹き飛ばされて地面を転がる。おい、あれ大丈夫なのか?
と思ったら霊夢の腕がピクリと動いた。よかったと思うのも束の間、霊夢が懐からお札を取り出して…
「なにすんのよ!霊符【夢想封印】!」
魔理沙に対して弾幕を放った。しかもホーミング性能付きの霊夢の十八番である夢想封印。魔理沙はまだ勢いが落ちていないのでそのまま夢想封印の弾の中に突っ込んでいく。
「うぎゃああ!」
ピチューン。
魔理沙が勢いそのままに墜落した。まあ自業自得なので再生だけかけて放置しておく。
「おはよう霊夢」
「まったく…おはよう定晴さん。魔理沙のこと止めてくれてもよかったのよ?」
「俺の言葉で止まるようなやつじゃないのは霊夢の方が知ってるだろ?」
魔理沙の我が道を行くスタイルは今に始まったことではない。俺の言葉で止まってくれるような聞き分けの良い性格は魔理沙に全く似合わない。
取り敢えず霊夢に現在の状況を伝える。ついでになぜ気を失ったのかを尋ねる。
「突然頭がふらふらして、それと同時に磨弓の方もふらふらしててね。あ、磨弓ってのはあのハニワのやつの名前よ。それでそのまま倒れちゃったのよね」
ふらふらしたのは急速に霊力を失ったことが原因だろう。磨弓は妖怪でも人間でもないので何の力かは分からないのだが磨弓の方も同じく力を急速に失ったことが原因であろうことが分かる。
「そんなに激しく弾幕ごっこをしたのか?」
「そんなわけないじゃない。そもそも私がふらふらになるまで弾幕ごっこをしようと思うならそれこそ一日中してないといけないわよ」
まあそうだろうな。弾幕ごっこのプロフェッショナルが今更弾幕ごっこのやりすぎで気絶するなんてことはないだろう。猿も木から落ちるとは言うものの…まあ現在の状況を見る限り霊夢と磨弓以外の何かが原因で力を失ってしまったと考えるべきだろう。
さて、霊夢を起こしたのは状況説明をしてもらうのもそうだがもう一つ、この動物霊を見てもらうためでもある。俺たちが話している間も動物霊は動く様子はなく、一応のために監視役にしたルーミアは暇そうにしている。
「ふーん、随分とまあ太ってるわねぇ…うーん…うーん?」
「何かわかるか?」
「こいつから磨弓と同じ力を感じるわね。あいつの配下かしら」
霊夢は袿姫と出会っていないから知らないことではあるが磨弓は動物霊と敵対関係であるはずだ。となると動物霊が磨弓の力を持っているのは一体…
「こいつからはこれ以上のことは分からないわね。ただ言えるのはこいつはただの貯蔵庫になってるってことね」
「貯蔵庫?」
「力の貯蔵庫よ。磨弓から拾った力を一時的に溜め込んでいる状態ね。だからこいつ、私たちが近くにいても動かないのよ。こいつ、どんだけ力を食ったんだか…」
なんだか謎が増えるばかりである。しかし動物霊自身が力を溜め込んでおく理由は分からないし、一時的ってことは後で誰かに…
「なあ霊夢、こいつって何かの術に縛られてるのか?」
「ん?縛られてるわけじゃないみたいよ。ただ別に動けないってわけでもないみたい。本当にただの貯蔵庫として存在してるって感じ」
ここで一つの仮説が浮上する。この力を溜め込むように指示した存在がいるかもしれない。そして動物霊に指示することができるのはこいつらの上司、つまり俺たちをここまで案内したやつらになるわけだが…
「そういえば霊夢、憑依していた霊はどうしてる?」
「…いないわね。私を置いて逃げてったのかしら」
なんか段々と分かってきた。
「磨弓のことは分からないけど情報が欲しいな。一度地上まで戻るぞ。霊夢、魔理沙を起こしてくれ」
「はいはい」
「ルーミアはその動物霊を縛ってくれ。持ち運べたりするか?」
「暴れたりしなければ大丈夫。持っていけるわ」
霊夢が魔理沙と同じく弾幕で過激に目を覚まさせ、ルーミアが闇で動物霊を縛った。抵抗らしい抵抗も見せないので人形を相手にしているような気分になるな。
「先行してる二人がいるからそこまで行くぞ」