東方十能力   作:nite

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二百三十九話 隔離

定晴さんと別れてから数分。私と袿姫さんとの間に会話はなかった。

そもそも私はそこまで社交性が高い方ではない。幽々子様の元に訪ねてきた人物については案内することもあるが、それも案内までだ。私が知り合ってはっきりと友達であると言えるのは霊夢や魔理沙、咲夜さんとか早苗さんあたりだろう。あ、あと買い出しで顔見知りになった八百屋の人とかもかな。

ともかく、私は初対面の人と突然会話ができるというわけでもない。別に人見知りではないのだけど、話す必要もないときに会話はしないという質なだけで。

 

「そろそろよ」

 

やっと袿姫さんが口を開いた。やっと出入口の場所まで近づいたらしい。確かにここらへんは先ほどよりも明るいし空気も澄んでいる。私は映姫さんに送られてさっきの場所まで行ったから分からないけど、定晴さんたちはここを通ってきたのだろうか。

 

「それにしても、あなた閻魔とどう話をするつもり?」

「元々調査のためにこっちまで来てますので。報告だって言えば来てくれるはずです」

 

映姫さんが私の話を聞いてどう動くのかは分からない。もしかしたら沈黙するかもしれないけど…せめて地響きの原因だけでも突き止めてほしいものだ。地殻変動の部類なので閻魔様の範囲外かもしれないけど、局所的なものだとしたら閻魔様たちでもなんとかなるかもしれない。

 

「はい、ここが入口よ」

「案内ありがとうございました」

 

袿姫さんにお礼を言ってから懐から一枚の紙きれを取り出す。

実のところ私は閻魔様への連絡手段を持っている。このお札だ。ただ先ほどの場所では使えなかった…というか予想以上に閻魔様と距離があったせいで私だと霊力が足りないのでここまで来ることになったのだ。私以外の力だと反応してくれないので仕方ない。

まさか私の霊力が足りないなんて思わなかったけど、まさか閻魔様が私の霊力量を間違えるとも思えないし地響きが原因だと思われる。あれのせいで世界の境界が不安定なものとなっているのだろう。幻想郷と冥界を分かつ結界と同じような感じにならなければいいけど。というか紫様はいつになったらあれを直すのだろう。

それはともかくお札に霊力を込める。ちゃんと繋がれば感覚で分かるはずなんだけど…

…あれ?

…つながらない?

 

「どうしたのよ」

「いえ、その…繋がらなくて…」

 

わざわざこんなところまで来たというのに距離が変わったような気が全くしない。元々の距離が遠すぎて畜生界を移動しただけでは意味がないとでも言うのだろうか。しかし定晴さんたちは飛んできているからそこまで遠いはずがない。

 

「畜生界を出てもいいですか?」

「いいけど私はついていけないわよ。ここの人間霊を守るために召喚された神だから、その契約は破れない」

 

袿姫さんは来れないようだけど、繋がらないから仕方ない。

 

「まっすぐ進めばいいんですよね?」

「ええ」

 

なんとなく結界を感じる場所を進もうとして…

 

「ふぎゃっ」

 

壁に激突した。

 

「な、なんで壁になってるんですか!袿姫さんだましたんですか!?」

「ちょっと待ってよ。それは私も知らないわ!」

 

触ってみると、確かに結界はとても分厚く展開されており進むことはできない。私の剣を使えば斬れないこともなさそうだけど…結界というのは基本的に完全な一枚のものなので私がこの部分だけ斬ってもほかの場所に影響があるかもしれない。

 

「なぜこんなところに結界があるんですか?定晴さんたちはここを通ってきたんですよね?」

「こんな結界は知らないって言ってるじゃない。地上からここまで来るにはここを通るしかないからあの人たちがここを通ってきたのは確かなんだけど」

 

つまり一方通行の結界?しかし一方通行にしては結界が分厚すぎる。しかも袿姫さんが知らないとなると本来はこんな結界はないのだろう。それにこういう結界があるならば定晴さんは気づいているはずだし、定晴さんがここに来たときは霊夢も一緒にいたはずだから結界に気が付かないなんてことはあり得ない。なのに何の情報もなかったのは…

もしかして私たちは既に何者かの罠に嵌っている?袿姫さん曰く出入口はここだけ、となると私たちは現在畜生界に隔離されていることになる。それはまずい。非常にまずい。この結界がどれくらいの範囲まで影響しているかは知らないもののそこまでちゃちなものではないだろう。閻魔様に連絡が取れないのもこの結界のせいであると考えると色々と辻褄があう。

 

「袿姫さん、私たちはここに閉じ込められたかもしれません」

「え、どういうこと?」

 

袿姫さんに私の仮説を教える。勿論私の憶測でしかないものの、そこまで的外れなことでもない気がする。となると定晴さんが探しに行った霊夢や魔理沙の安否が気になるところである。

 

「それは…困ったわね。私は神だから正直なところ何も食べなくとも生きていけるのだけど、あなたたちは違うんでしょ?自慢じゃないけどここには食料なんてないわよ?」

 

本当に自慢にできない。ここに幽々子様がいなくて本当に良かった。もしかしたら幽々子様ならなんとかできるのかもしれないけど。

畜生界は一つの世界であり、それが丸々隔離されてしまうというのは結構な一大事であるはずだ。紫様が気が付いてここに来てくれればいいのだけど…今の時期はまだ紫様は眠っていることが多い。巷では冬眠と言われる紫様の長期睡眠はたまに起きて活動する程度なので起きてる可能性もあるけどあまり期待しない方がいいだろう。

幽々子様曰く紫様は定晴さんのことが好きらしいのでどこからか嗅ぎつけて来てくれることもあるのだろうか。

 

「取り敢えず…どうしましょうか」

「あの人たちと合流した方がいいんじゃない?」

 

私は結界に詳しくないので定晴さんか霊夢に見てもらった方がいいのは明確だ。もしかしたら何かわかるかもしれない。

私たちは定晴さんと合流するために来た道を戻った。霊夢たちが見つかっていればいいのだけど…

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