たまに迷いながらも来た道を戻る。そうすれば妖夢たちと別れたところまで行くこともできるだろう。あそこからなら俺も入口までの道が分かるし、どこかで妖夢たちに会うこともできるかもしれない。
現在この世界は非常に危険な状態である可能性が高い。未だに地鳴りは続いており焦燥に駆られるが、冷静に状況判断をする必要があるだろう。
先程発見した動物霊。霊夢曰くそれは力を溜めるためだけのものとなっていた。しかもその力は元々磨弓が持っていたものだという。
動物霊は命令を受けていたというからには命令した誰かがいるはずだ。それが誰なのかは未だに分からないが…
「絶対にまずいことになってる」
「んなこと言われたって分からないぜ」
霊夢に吹き飛ばされ気絶した影響か少しふらふらしている魔理沙が言う。
そもそも俺たちはここに来るのが初めてなのである。ここの状況やら近況やらが分かるわけがないし、この地響きがどう関係しているのかも分からない。だがこの地震にも似たずっと続く揺れはここでイレギュラーな事象であり、袿姫ですら知りえない何かが起きているのかはわかる。
「妖夢たちに会ったところでどうするのよ」
「どちらかと言えば目的は地上まで行くことだ。妖夢が何らかの方法で映姫に連絡をしているはずだから何か対応があるだろう。何をすればいいのかも分からないこの状況で迂闊な行動によって被害を拡大させたくはない」
俺たちは計り知れないことではあるがもしかしたら地上にも既に影響が出ているかもしれない。幻想郷の周辺の空間の繋がり方がどうなっているのかは分からないけど畜生界が崩壊したらよくないことが起きることくらいは分かる。というかそもそも空間自体に影響があれば少なからず被害があるのは分かり切ったことである。
なんかこう見てみると俺って分からないことばかりだな。まあ霊夢や魔理沙も似たような状況だろうけど、やはり情報って重要だなと考える。
しばらく飛べば入口に近づき袿姫の力を感じることができるようになった。伊達にも神様だからかある程度離れていても力を感じることができるのは助かる。この力を参考にしつつ入口に移動した。すると入口に到着する前に袿姫たちと合流した。
二人とも表情は暗く困惑しているようにも見える。さすがに表情が気になり先に質問をした。
「どうした?」
「いえ、実は…」
妖夢から状況を聞いた。どうやら映姫と連絡ができず、外に出ることもできないようである。妖夢が、というか映姫が連絡用お札なんてものを所持しているなんて思わなかったが現在の状況では無用の長物と化しているようである。なんともまあ使い物にならない。
妖夢たちに案内されて入口の方へ。移動しつつこちらの状況も共有しておく。
「磨弓…あの子どこ行ったのかしら…」
袿姫が不安そうになっている。うーん、不安要素が多すぎてこちらもどう声をかけていいのか分からないな。
「定晴さん、これです」
「確かに頑丈な結界だな…」
妖夢に案内されて到着した畜生界の入口には見るからに分厚そうな結界が張られていた。俺の結界の能力はその名の通り陣などを介さずに結界を展開するだけなので俺が見たところで結界の詳細が知れるわけではない。ということでここは専門家にバトンタッチ。
「これ…相当な結界じゃない。それこそ、世界を隔てるくらいには強力な結界よ。流石の私もこれを今すぐ解除するのは無理ね。紫ならまだなんとかなのかもしれないけど私がやるにはそれなりの準備が必要だわ。ただここにはそういうのがないから実質不可能ね」
霊夢の見解、無理。
となるとこの結界を解除するには術者及び結界の元となる部分を断つしかないだろう。こんなに巨大な結界なのだから術者はずっと展開し続けているかもしくは何かしらを起点に…起点…?
「なあ霊夢。もしかしてこいつの起点ってさっき見つけた動物霊だったりしない?」
「え?うーん、可能性はないこともないけどさっき見たときは本当にただの貯蔵庫だったのよ?まあでもあんな感じで貯めておいてスペア的に使う予定なのかもしれないわ。少なくとも途中で力の補充しないといけないレベルの結界であるのは間違いないしね」
やはりさっきの動物霊は滅却しておいた方がよかったかもしれない。本当は磨弓に返してしまうのがベストなのだが敵に使われてしまうとなれば消滅させてしまった方が有益である。
「ルーミア、さっきのとこまで行ってあの動物霊を消滅させてきてくれないか?」
「了解なのだー」
そしてルーミアはふわふわとさっきのところまで移動し始めた。俺たちが見えないところまで行ったら闇の能力で加速することだろう。
俺たちは本格的に敵を討伐することを目的にした方がよさそうである。
「きっと何かしらヒントがあるはずだ。情報を一度整理しよう」
俺たちはこの状況から脱するために作戦会議を開始した。