東方十能力   作:nite

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二百四十九話 二人目

ルーミアに告白されてから数日が経過した。告白されたことでルーミアを見る目が何か変わるかとも思ったが、特にそんなことはなかった。これも恋愛感情を抑制されているからだろうか。幽香のときもそうだったし…むしろ告白されたのにドキドキもしないので申し訳なくなってくる。

 

「もうっ、気にしなくていいって言ってるじゃない」

「しかしな…紫たちとも会えてないし…」

 

ルーミアは俺の抱えている状況を紫たちにも共有したらしい。まああの二人なら特に問題ないだろうと思っている。ただ、話を聞いたあとに詳細を聞きに来るかなと身構えていたのにどちらも来なかったので少し拍子抜けした。

 

「私は私であなたに異性として見てもらうように頑張るだけだもの」

「アピール続けるのか?」

「ええ。本来はそんなつもりなかったけど告白した以上はやるわよ。本気で好きだもの」

 

俺の反応がどうしても薄くなるからこそルーミアはこうも強気に恥ずかしくなるようなセリフが吐けるわけだ。言うたびに顔を赤くするくらいなら言わなければいいのに…もし俺が敢えて演技で恥ずかしがってみたらどうなるだろうか。うーん、なんとなく面白いことにもありそうだったけどやめておこう。

 

「んで今日はユズか」

「はい…先にルーミアさんと話しておいたので…私のことをあなたにもお話します…」

 

ユズが言語能力を落としている理由、そのことを教えてくれるらしい。前もってルーミアに相談していたのもいいことだ。やはり判断というのは二者の間だけで行うようなものでもないからな。俺の魂たちは基本的に俺と同じ思考なのであまり頼りにならないし。ああでも魔女ならまだ第三者目線で意見をくれそうだ。

 

「では…えっと…先に言っておきますけどお二人のことは嫌いではありません。むしろとても好ましく…思ってます。こんな私でもちゃんと…世話をしてくれるので…とてもありがたいと思ってます…そのうえで…私は…誰もが怖いんです。記憶はないのに体が覚えているんです。自分の体なのに自分の意志で動かせない恐怖が…体に…」

 

不動の術のことを言っているのだろう。無理やり式神を使役する術であり、西洋風に言えば黒魔術とかそんな感じのやつだ。俺はそういった方面には弱いので未だに藍から教えてもらった契約式での式神しか使えないのだが、陰陽道を習得していけばどこかで出会うことになるのだろう。所謂文化の闇の部分である。

 

「だから…他の人が怖いんです…それで…恐怖で…声が…」

「でもマッサージで喋れるようになってるんだよな?」

「美鈴が言うにはあれは体内の気を動かして心象を和らげてるらしいわよ。私も詳しいことは分からないけどユズの中の負の部分をうまく捌いてるみたい」

 

ルーミアが捕捉をいれてくれた。美鈴は門番としてはあまり役に立っていない印象だがそれ以外ではとても優秀なのだ。幻想郷では規格外が多いだけで美鈴とて武術の達人レベルであるし、聞いた話だとメイドの仕事もちゃんとこなせるらしい。なのになぜ門番ができないのか…人には向き不向きがあるというが、あそこまで行くとレミリアの人選ミスな気がしてくる。

 

「ただあのマッサージも…怖いんです。私じゃない誰かに私の体の中を弄られている…ので…」

「確かにそうだな。それで…ユズはどうしたいんだ?」

「私も…人に慣れて…ちゃんと話せるように…なりたいです」

 

明らかに先ほどよりも途切れる回数が増えている。嫌なことを思い出させたせいで悪化しているのだろう。

 

「私は…お二人のことを一番信用しています…あとあのお医者さんも…」

 

多分ユズを保護したときにしばらく預かっていた永琳のことだ。鈴仙やてゐも手伝いをしたとは思うのだけど、残念ながら印象には残らなかったようである。

 

「だから…私を…今後も…ここに住まわせてください!」

「当たり前だ。ここでお前を放り出すわけないだろ?」

「うぅ…ありがとうございます…」

 

泣き出してしまった。やはりユズにとってはとても強烈なトラウマなのだろう。精神的負荷になっているのは声が出なくなっていることからもよくわかる。これを解消するなら俺やルーミアにまずは慣れてもらう必要があるな。

 

「安心してユズ。私のご主人様はやると決めたら最後まで責任をもってやってくれるわ」

「はい…ルーミアさんも…ありがとうございます…」

 

とはいえ霊夢と水那にもある程度協力してもらった方がいいかもしれない。どうしてもユズの声が安定しない理由がこれだけじゃない気がする。そのためにも原因となった術についても調べるしかない。

 

「というわけで…前段階として…私を式神にしてください…」

 

そういえば藍にも話を聞いた方がいいかもしれないな。あいつも術式には詳しいはずだ。今ユズが言ったように式神についても…ちょっと待て今なんて?

 

「はい?」

「あぅ…私も…式神にしてください…だめ…でしょうか…?」

「いや、別に構わないが…なぜそうなった?」

 

式神にする分には構わない。式神を一人増やすくらいの余力は全然あるし問題はないのだが…そもそもなぜ前段階が式神になることなのだろう。

 

「私から提案したのよ」

「ルーミアが?」

「ええ。式神の繋がりってとても分かりやすいの。今だって意識すればご主人様の力を感じることができる。この繋がりって直接的なものだしユズが人に慣れるのに手っ取り早いかなって思ったのよ。先輩式神からのアドバイスってことね」

 

俺とルーミアの間には結構強い繋がりが出来上がっている。随分と繋がりって強いんだなと思ったが、多分ルーミアが意図的に俺に意識させるために妖力を多く流している。本人から聞いたわけではないがこれもアピールの一種なのかもしれない。式神契約をしたときからこんな感じだったのでルーミアの無意識かもしれないけど。

この繋がりよりかは数段劣るとはいえ式神の繋がりはしっかりと相手のことを認識することができる。それを使って慣れさせようという魂胆なのだろう。

 

「まあなんとなく考えは分かった。でもいいのか式神なんて?」

「定晴さんなら…信頼できますし…」

 

ユズに信頼してもらえて嬉しい限りである。水那たちとも遊ぶことがあるユズだが、多分誰と接していても無意識的な恐怖は存在するのだろう。もし俺がそんな状況になったら…魂に恐怖の抑制するやつが生まれて終わる気がする。

 

「じゃあ式神契約するから床に座ってくれ」

「はい…」

 

藍から教わった通りに契約を結ぶ。ルーミアのときは色々と俺がやらかしたせいでキスなんていう手段を取らざるを得なかったが今回はそんなことはない。ちゃんと術を使って繋がりを作りさえすればいい。今のユズにキスとかすると恐怖心がマックスになるのは確実である。

 

「はい終わり。俺からできることは特にないから分からないことがあればルーミアに聞いてくれ。藍の説明を一緒に聞いてたから基本的になんでも答えられるはずだ」

「分かりました…ルーミアさん、お願いします…」

「はいはい任せなさい」

 

ユズを連れ立ってルーミアが部屋へと戻った。まあ何か異変があれば繋がりを通して分かるだろう。

折角繋がりができたので少し妖力を分析してみる。というのもユズは未だに何の妖怪なのかわかっていない。紫ですら分からないという結果なので分析したところで分からないのだけど、どういう出自なのかとかは分かるかもしれない。

妖力は人によって違う。それは同じ種類の妖怪とてそうだ。例えば天狗。妖怪の山にいる天狗は様々な種類がいるが、同じ烏天狗でも個人個人で妖力は変わる。だからといって全く違うというわけでもない。似ている…とでも言うのだろうか。力の質をしっかりと判別する基準もないので感覚的なものでしか言えないが、烏天狗同士は妖力が似ていたりする。ついでに言うと文を基準にするとさとりよりも椛の方が似ているといった系統ごとに類似だったりもある。

ということで前置きが長くなったが、要はユズの妖力を解析して似たような妖力を探せば種族が分かるかもしれないのだ。勿論紫のように完全に唯一の種族である可能性も頭に入れておく。

さて、繋がりで妖力チェック。

 

「うーん…?」

 

少なくとも幻想郷でよく会う妖怪たちに似ている感じはしないな。不動が言うにはユズは外の世界にいた妖怪らしいので幻想郷にはまだ来ていない一派かもしれないな。

外の世界に行くことは正直に言えば簡単なのだが…まあユズが今のところ同種族がいなくて困っている様子はないから後回しでいいだろう。内心ではやはり同種がいればある程度は心休まると思っているが、まあ妖怪ってなんだかんだ複雑な事情があるからあまり口を出すのもやめておいた方がいいだろう。

 

「まあ契約したとはいえ式神で呼び出すのはルーミアでいいかな」

 

ルーミアが結構式神として呼んでもらいたがっているというのが分かったので今後も要件があればルーミアに頼めばいいだろう。

なんだか少し盛り上がっているルーミアの部屋から漏れる音を微かに聞き取りながらそう思った。

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