東方十能力   作:nite

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二百五十二話 そろそろ塗り替えてやろうか

久しぶりに紅魔館へとやってきた。一応たまに来ないとフランが不機嫌になるので一週間に一度くらいは来ているのだが、最近は忙しくてあまり来ることもできていなかった。ただたまに買い物の途中で会う咲夜曰くそれで不機嫌になっているということはないようだ。そろそろ俺離れだろうか。

今日はルーミアとユズの両方を連れてきている。ユズは美鈴にマッサージをしてもらうという目的もあるし、これを機にフランとも仲良くなってくれたら嬉しい。狂気が落ち着いたフランはただの少女なのでやはり同性で遊んでいた方が気も楽だろう。

 

「よう美鈴」

「こんにちはー。ユズさんは先にマッサージしておきます?」

 

美鈴は起きていた。最近はあまり美鈴が眠っているところを見ていないような気がする。若干肌寒いし流石に眠りにくいのだろうか。

ユズは美鈴のマッサージを先に受けるらしい。ユズにはルーミアに付き添ってもらうとして、俺は本館の方へと向かう。もう既に数十回は来ているのに未だにこの真っ赤な館に慣れる気がしない。どっかで紅魔館を奇襲して落ち着いた色に塗り替えてやろうか。フランたちにもあまり好評じゃないみたいだし。

 

「いらっしゃいませ定晴様」

「お疲れ咲夜」

 

入口では咲夜が待ってくれている。ここらへんはいつも通りである。因みにだが予め今日紅魔館に来ることを伝えているわけではない。レミリアたちは特に忙しくしているわけでもないのでいつ来ても大体いるのでそれでも問題ないのである。ではなぜ咲夜が入口で待機してくれているかと言うと、俺が来たことを確認したら時間を止めて入口まで移動しているという。メイドの鑑であることは間違いない。

咲夜に案内されてレミリアの元へ。フランからは先に私のところに来ればいいのに云々を言われているが、流石に紅魔館の主を無視しているわけにもいかない。寝ているのであれば別だが最近は吸血鬼姉妹はほとんど人間と同じ時間帯で生活しているらしいから俺が来たときに寝ているというのも稀である。

 

「いらっしゃい定晴」

「お兄様ー!」

「二人とも、こんにちは」

 

咲夜に案内されてとある一室に来た。レミリアたちがお茶をするときに使う部屋である。

レミリアのところにフランがいた。実のところこれも最近はよく見る光景である。俺が先にレミリアのところに行くのであればフランもレミリアのところにいればすぐに遊べると考えたらしく、俺が来たときに二人が雑談していることも多い。姉妹仲が良好なようで嬉しいばかりである。

 

「あれ、ルーミアちゃんたちもいるんじゃないの?」

「今美鈴にユズのマッサージしてもらってるから今はいないな。あとで来るよ」

 

一体咲夜はどこで俺たちのことを確認しているのだろうか。俺は結構視線には敏感なのだが、咲夜がこちらを見ていることに気が付くことはとても少ない。気が付いたとしてもたまたま咲夜がいる方向を見ていたとかそういう理由でしかない。やはり殺気とか強い興味とかがない視線には気が付けないのだろうか。そういえばルーミアに恋愛的な視線にも気が付けないとか言われたな。咲夜に限ってそれはないと思うが、もし咲夜が殺し屋だったら一度か二度ほど殺されているかもしれないな。

 

「今日のプレゼントはこれだ」

「「わーい!」」

 

俺が幻空から抹茶のムースを取り出した。レミリアとフランの反応が同じであるあたりやはり二人は姉妹なのだと実感する。幻想郷では他に古明地姉妹もよく見知っているが…あっちはこの二人ほど似ている印象はないな。あっちは見た目がこの二人よりも似ている印象である。

 

「紫が物流を回したおかげでゼラチンとかが幻想郷で手に入るようになったのはでかいな」

「そうですね。私も色々とレパートリーが増えて嬉しいです」

 

紫は外の世界の電子機器なんかは断固拒否しているが、食材に関しては結構寛容というか積極的に取り入れようとしている。多分それは紫自身がデザートが好きだからだろう。外の世界から迷い込んでしまってそのまま幻想郷に住むことになった外来人だとかが紫が持ってきた食材を販売していたりする。

 

「美味しいー!」

 

まだおやつの時間ではないが二人は食べ始めている。それについて咲夜が怒ることはない。その分本来の時間に出てくるはずのデザートが出てこなくなるだけである。自分で作ったものを喜んで食べてくれるのはやはり嬉しいな。

 

「それで今日は何して遊ぶー?」

「あ、待ちなさいフラン。フランはユズとルーミアの遊んでいてちょうだい。ちょっと定晴の話があるのよ」

「お姉さまずるーい!」

 

話とはなんだろうか。フランの俺離れについてかもしれない。というかそれくらいしか思いつかないのだけど…

レミリアはなんとかフランを説得してフランはユズたちに合流するために部屋を飛び出していった。食べるの早いなぁ…

フランが出て行ったのを見たのちにレミリアと向き合った。

 

「で、話ってなんだ?」

「そんな硬くならなくていいわ。ちょっとしたことよ」

 

レミリアは身長こそフランとあまり変わらないが、その威圧感はやはり大妖怪と言ったところ。一対一で向かい合うとどうしても少し強張ってしまう。紫相手だとならないのだけど…レミリアと向かい合うという機会が少ないからだろう。戦闘中とかなら気にならないが、こういう日常の中で大妖怪と向かい合うと緊張してしまう。

 

「一週間後に何があるか、忘れてないでしょうね?」

 

現在は三月の頭である。まだ少しだけ涼しい風が吹くものの日によってはポカポカの陽気が幻想郷全体を照らすことになる。今日はまだ少し肌寒い日だが、一週間もすれば肌寒さも遠くに流れていくだろう。ただレミリアが言っているのはそういうことではないのは分かる。

 

「ホワイトデーだな。ちゃんとみんなへのお返しも用意する予定だよ」

「それは心配してないわ。ちゃんと美味しいお菓子を返してくれるって思ってるから」

 

先月のバレンタインデーでは幽香や紫からチョコを貰ったあと、実はフランたちからもチョコを貰っている。咲夜に手伝ってもらいながら作った力作だったようで、その出来と作ってるときの報告を楽しそうにするフランにほっこりした。

 

「でもお嬢様はチョコをお渡しになっていないのでは?」

「えっ…」

「どうせ片方に渡しても喧嘩になるからでかめのを二人分ってことで渡すよ」

 

多分レミリアはいつも通りプライドが云々のせいでチョコを渡さなかったのだろうと思われる。フランからはレミリアはチョコを渡していないのにとか文句が飛んでくることになるだろうが、まあそこはお返しに味で黙らせよう。

 

「あー…えっと…そのことなんだけど」

「ん?何か問題があるのか?」

「もし喧嘩になりそうだったら私は要らないわ。フランには個別にちゃんと渡してあげて頂戴」

 

どうやらレミリアはフランに個人で渡すことを求めているようだ。まあレミリアが要らないというのであればそれに従うまでだが、デザートとかに目がないレミリアにしては珍しいな。

 

「いいのか?」

「ええ。まあもし貰えるのだったら小さめでもいいから私にもくれると嬉しいけど」

「じゃあ分かった。それぞれ個別に渡すよ」

 

紅魔館へのデザートのプレゼントは二人分まとめてあげることが多い。そちらの方が効率的だし不平等とかそういう問題もないからだ。スカーレット姉妹は仲がいいものの些細なことでも喧嘩してしまう幼さもあるのでそこらへんを配慮しないといけないのだ。基本的にじゃれあいで喧嘩は収まるのだが、万が一ガチ喧嘩になってしまった場合は紅魔館周辺が更地になりかねない。

 

「話は以上よ。フランたちのとこへ行ってらっしゃい」

「ああ、わかった」

 

わざわざフランがいないところでする話でもなかったような気がするが、特に訝しむ部分もないのでフランのところへ遊びに行った。

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