東方十能力   作:nite

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予約投稿の時間ミスってました


二百五十六話 水那の能力

四月、ともなると思いっきり春である。一昨日も昨日も、そして今日もリリーは幻想郷中の空を飛んで春の到来を伝えている。一月にはミキによって疑似的な春を楽しんでいた彼女だが、やはり本当に春が来たとあればテンションが高ぶるらしい。高ぶりすぎてたまに弾を撒き散らしているらしい。迷惑な話だ。

そんな今日は博麗神社に来ている。別に宴会というわけではないが、花見をしたくなった人が勝手に花見をして騒いで帰るという場所となっているので人の出入りが激しい。俺はルーミア、ユズと共に境内の一角で花見をしていた。

 

「桜を見てるとミキを思い出すんだよなぁ…」

「どうして?」

「あいつの得意属性、光と神と桜なんだよ…」

 

そんな感じで他愛もない会話をしていたら水那が歩いてきた。宴会ではないので酒や料理を持っていることはない。ただし何か話したがっているようだ。

 

「定晴さん、少しいいですか?」

「ああ、構わない」

 

ルーミアたちに聞かれても問題ないことなのだろう。霊夢には聞かせられないことということだろうか。もしかして霊夢の誕生日…?そういえば霊夢たちの誕生日とか知らないな。正確な暦を記録してないだろうし季節が廻れば数えているのだろうか。

閑話休題

 

「私の能力についてなんですけど」

 

現在の水那は能力なしである。紫から外の世界から博麗の巫女として連れてくるときは能力がない人がいいと言われたのでその人材である水那には何も能力がなかったはずだ。しかししばらく幻想郷で過ごしていれば能力も出てくるだろうとも聞いていた。能力というのは自己申告制なので特に強くなったものや得意なことを能力にしてもいい。幻想郷では外の世界で信じられていないものの力が強くなるので俺の能力も強くなっているわけだし。

もしかして?

 

「なんか、能力って言っていいのか分からないんですけど、見つかったかもしれないです」

「へぇ、おめでとう。なんて能力だ?」

「【聖具を扱う程度の能力】って霊夢さんは言ってました」

 

聖具というのは様々な特殊な効果付きの道具のことを指す。例えば俺の輝剣も分類上は聖具である。俺専用だが浮かせたりなんだりできるというのは聖具としての力だからだ。あとは霊夢の陰陽玉も聖具である。あちらも俺の輝剣と同じように浮かせることができるうえ、あれは神社の家宝なわけだから聖具なのは納得だろう。

とはいえ陰陽玉を使えるという点で言うのであれば水那も霊夢も同じなのでは?

 

「実は華扇さんに陰陽玉の扱いが霊夢さんより上手だと言われたんです」

「華扇にか…」

 

確か華扇というのは霊夢の修行の師匠とかなんとか。仙人として長いこと生きてきたので霊夢の陰陽玉の扱い方も熟知していることだろう。そのうえで霊夢よりも水那の方が陰陽玉の扱いが上手だと言うのであればその通りなのは間違いない。

 

「それに霊夢さんが動かせなかった倉庫のものを動かせたので…」

「だから聖具を扱うってことか…」

 

水那は何かと物を丁寧に扱うのでそれに応えてくれているのかもしれないが、それで聖具を上手く扱えるのであればそれは確かに能力と言っても過言ではないだろう。聖具というのは簡単に見つかるものでもないが、とても希少というわけでもない。幻想郷では特に過去の遺物なんかが流れてくるわけだし水那が扱えるものも多い可能性がある。

 

「いいんじゃないか?それを伝えにきたのか?」

「はい。ただこれで本当にいいのかなって思いまして…」

 

確かに博麗の巫女としてはパッとしないかもしれない。霊夢の【空を飛ぶ程度の能力】は文字通り受け取るのであれば自由に空を飛ぶだけなのだが、その実態は世界の理から飛んでしまうという主人公らしい能力だ。しかし水那の【聖具を扱う程度の能力】はそれ以外にない。勿論聖具に対する理解だとかは早いだろうけどそれだけだ。もしそれを気にしているのなら…

 

「それなら俺の【十の力を使う程度の能力】だって同じようなものさ。気にすることでもない」

 

むしろ際限なく色んな聖具を扱えるのなら俺よりも応用の幅が広いだろう。しかし水那は訝し気な表情を浮かべた。

 

「私は最近定晴さんのその能力も怪しいと思ってますけどね。あなた前に並行世界だとかなんだとか言われてませんでした?十個の力の中にそんなのないですよね」

「確かに私もそれは思ってた」

「私も…」

 

あれー?いや、当然か。

不動の異変のときに俺は何度も死なない未来を探そうとした。それは確かに十個の力の中に入っていない。そう、俺はまだ能力がある。未来視っぽいやつはそれの派生みたいなものだ。抽象的すぎるが大体合ってる。

 

「じゃあどこかでルーミアには教えるよ」

「分かったわ」

「定晴さん…私は…?」

「ユズはまず自分の問題を解決しよう。俺のも中々面倒だから考えることを増やしたくない」

 

ついでに言うとこの能力の名前を言うとユズが俺のことを信頼してくれなくなる可能性がある。犯罪的なものではないけど反則的ではあるので。

ユズに信頼してもらうには俺もユズのことを信頼しなければいけないのは明白だ。しかし俺の中でユズよりもルーミアの方が信頼できるという認識があるのも事実。ユズにもいずれ話すつもりではあるが…でもこれでユズが俺たちに不信感を抱いてもよくないんだよな…うーん、考えておこう。

 

「取り敢えず水那の話が先だ。不満がないなら今後はその能力を名乗っていけばいいぞ」

「そうですね…分かりました。じゃあ私の能力は【聖具を扱う程度の能力】です」

 

こうして水那の能力が決まった。大々的に言うような場面はないので訊かれたら答える程度のものではあるが、博麗の巫女として何か答えられる方がいいだろう。

あ、そうだ。

 

「水那、祝いとしてこれをプレゼントだ」

 

俺は幻空から一つの髪飾りを取り出す。白く淡い光を放っているヘアピンみたいなものだ。

 

「祝われるようなものでもないですが…これは?」

「これも聖具らしい。らしいってのは俺が使えなかったからだが…霊力の循環を早めてくれるらしいぞ」

 

要は回復速度の向上だ。何かと負けることが多い水那が早く立ち直れるようにという祈願である。水那も弱いわけじゃないんだけどなぁ…相手がなぁ…

 

「ありがとうございます。ちゃんと使いこなしてみせます」

「そうしてくれ」

 

随分昔に手に入れて、俺は使いこなせないまま霊力量が増えて必要なくなったので幻空に入れっぱだったものだ。特に必要なものでもない。倉庫ではなく幻空にいれていた理由は小さくて倉庫に入れていたら失くしそうだからである。

 

「まあ、頑張ってくれ」

「はい!」

 

水那は珍しく元気に返事をした。

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