東方十能力   作:nite

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二百五十八話 無意識少女の相談

こいしに呼ばれて部屋に入った。ご主人様は追い出されるように部屋から出ていきそのままさとりの部屋へ向かったようである。今頃ご主人様は疎外感を覚えているだろうけど、こいしの気持ちを考えると我慢してほしいと思ってしまう。

ご主人様が遠くに行ったのを足音で感じると、その途端こいしの顔が赤くなった。一気に沸騰したところを見るとご主人様からクッキーを貰った時点で我慢していたようである。今度から沸騰石を飲んでおいた方がいいのではなかろうか。

 

「わあ!え、えっと…こいしさん、大丈夫ですか?」

「う、うん…あと私はこいしって呼び捨てにしてくれていいよ」

「では私もユズって呼んでください…」

 

こいしが真っ赤になったせいで慌てるユズ。そういえばこいしとユズは初対面となるのか。どちらもご主人様に対して少し拗らせている二人である。

 

「え、えっとさ、ルーミアちゃん」

「何かしら?」

「告白…したの…?」

 

急にぶっこんで来るわねこの子。一体ご主人様と何を話していたというのだろうか。というか私が告白したことを知っているのはごく一部で、燐経由で情報を得ていたというこいしは知る由もないのだけど…

 

「お燐から妖怪の賢者さんとフラワーマスターの大妖怪が定晴に告白したって聞いたんだけど、ルーミアちゃんは…?」

「ああ、そういうことね」

 

こいしは私が告白したかどうかは知らず、二人がご主人様に告白したという知らせを聞いて私がどう動いたのか気になっているようだ。このままこいしを悶々とさせていても面白いけど、多分こいしは既にいっぱいいっぱいとなっているので正直に答えてあげよう。

 

「ええ、したわ。直接ね」

「ひゃぁぁ!」

 

こいしが変な声をあげてソファに座っていたにも関わらず少し跳ねた。そういえば昔に私は告白する気はないということをこいしに伝えたから、その分も驚いたのかもしれない。

 

「え、で、どうなの?どうなったの!?」

「落ち着きなさいな。ちゃんと説明するわ」

 

紫と幽香が告白して、そして私が告白したこと。ご主人様の魂に愛とかいうわけわからないのが生まれたこと。そして告白が成功となるにはご主人様を惚れさせればいいことを話した。昔こいしがご主人様の家に泊まりに来たとき、私とこいしがこの気持ちを共有したときに私のことも大体話してしまっているのでいつもの口調でいいのは気が楽だ。

 

「え、じゃあ定晴はルーミアちゃんのこと放置してるの?」

「まあそうなるわね。別に不誠実とかじゃないわよ?それとも幻滅したかしら?」

 

複数人から告白されているのに本人はいつも通り生活しているなんて外の世界では幻滅されてしまってもいいくらいだ。紫と幽香は長年の積み重ねによる信頼があって、私は私でご主人様のことで幻滅することなんて今更ありえからこんなことになっているだけで。

 

「ううん。幻滅なんてしないよ。今も…クッキーを貰って舞い上がっちゃってるくらいだから。それに定晴に助けてもらった時のことは、今も思い出せるし」

 

こいしは元々結構ご主人様に対して好意的だった。恋愛感情はなくとも、少なくとも頼れる兄のような、フランと同じような感じで見ていたらしい。ただ地底での事件でこいしが捕まって、それをご主人様が助けたときに、惚れてしまったという。聞いた話によるとこいしが捕まったのはご主人様のミスでもあるからマッチポンプなのではとも思うけど、でもまあ今の私なら同じ場面に遭うとそれこそ数日は頭の中がそのことしか考えられなくなりそうだし分からなくもない。

 

「私も告白した方が、いいかな…」

「こいしが定晴に対してちゃんと向き合いたいなら、ずっと一緒にいたいって思うなら告白した方がいいと思うわよ」

 

ライバルが増えると言うのは本来は危惧すべきことだ。しかし今回は相手があのご主人様である。一人がひたすらアピールしたところで簡単に落とせるような人ではない。複数人でまずは異性そのものを意識させる必要がある。ならば手数は多くても問題はない。

 

「告白…うー…好きって、定晴に?」

「ええ。まあ私は話の流れで自然に言えたけど…それでも気を抜いたら脳が爆発しそうなくらいドキドキするし何も考えられなくなるから気をつけなさいよ」

 

所謂先輩からのアドバイスってやつだ。ご主人様は好意というものに非常に鈍感だ。だから私たちが本気でご主人様にアタックするならまずは私たち自身がこの気持ちを全力で伝えられるようにしなければいけない。こいしがご主人様争奪戦に参加したいというのであれば告白は初歩の初歩である。

 

「でも私って結局のところ地底に住んでるし…定晴と会いたくても中々会えなくて…」

 

こいしが寂しそうに言う。地底と地上はそこまで遠くないと言えども近いわけでもない。今回私たちが一泊するのがその証拠でもある。こいしは片思いの遠距離恋中なのである。毎日ご主人様と生活することができる私とは全然境遇が違う。しかし地底と地上の間には不可侵条約が一応あるので頻繁に行き来することもできない。ご主人様は紫に許可を貰っているからと言っていたが、閻魔に見つかったら普通に怒られると思う。

 

「寂しいな…」

 

こいしは結構姉思いであり、地底に住んでいてもさとりがいれば大丈夫だと思われている。だが実際のところ今こいしが一番近くにいたいのはご主人様のところであり、さとりは二番目になってしまっている。今思えばフランも同じような感じになっている気がする。

 

「地上で生活できるようにならないかな…」

「流石に難しいと思うわよ」

 

だが、正直言って地底の妖怪が地上で生活することのデメリットは全くない。元々こいしたちも地上の妖怪で、人間やらなんやらから逃げるために地底に移住した子たちである。こいしが地上にいたいと願っているのなら、紫への直談判でなんとかならないだろうか。

こうなってくると一番の障害は閻魔な気がしてくる。幻想郷担当の四季映姫は時々幻想郷に訪れて不意打ち説教をしてくる。こいしの能力はあの閻魔ですら欺けるらしいけど、閻魔の能力はその曖昧な存在にするこいしの能力と非常に相性が悪いので閻魔がちゃんとこいしを探せばすぐに見つけることは間違いないだろう。ということは閻魔を避けるのではなく説得する必要があるけど…

 

「まあ私も色々考えてみる。定晴の近くに、いたいし」

「それ、定晴に直接言った方が良いわよ?こいしの好意に気付いていないのは間違いないだろうし」

「直接言えたら苦労はないよ!」

 

非常に共感。告白したとはいえ私も真っ向からご主人様に気持ちを伝えるのはやはり恥ずかしい。

 

「はぁ…あとは寝る前にでも話そうか。定晴のこと迎えにいかないとね」

「そうね」

 

一泊するので時間はまだまだある。その間にこいしの方針を決めてしまうのがいいだろう。こいしの反応を見るに諦めるという選択肢はないようだし、私も一応応援しないといけない。

私はユズが迷わないように手をつなぎながら部屋を出て行ったこいしの後について行った。

 

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