東方十能力   作:nite

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二百六十三話 本当の

「さて、今日は予定もないから…ご主人様に聞きたいことがあるわ」

「ん?」

「ご主人様の本当の能力についてよ」

 

こいしのために色々と動いたけどできることがなくなったので今日は一日暇だ。となれば家ですることがあるわけだけど…一番優先すべきことはご主人様の能力についてだ。

ユズへの信頼がないわけではないけど不用意に聞かせることができないのでユズはいない方がいいのだが、今日は都合がいいことにユズは博麗神社に遊びに行っている。今頃水那と一緒に弾幕ごっこに興じていることだろう。

 

「あー…そういえば話すって言ったな」

 

先日の花見のときに水那の能力が判明した。自己申告制かつ彼女自身微妙な顔をしていたので判明という言い方は正しいのか分からないけど。その話の流れの中でご主人様の能力についての話になった。ご主人様はずっと能力を【十の力を操る程度の能力】だと言っているけど、それにしては不可解な点が多い。それにご主人様も力はそれだけじゃないような雰囲気を出している。

 

「あの不動も知らなかったってことはご主人様はずっと秘匿にしてきたんだろうし、言わなくても…」

「いや、気にしなくていい。秘匿って言っても紫やミキは知っているし、多分前に会った反応を見るに輝夜にもバレてる。なんとなくどんな能力か予想するくらいは誰でもできるしな」

 

ご主人様が不可解な動きを見せたのは不動の異変の時。黒病異変ではない方だ。

あの時ご主人様は明らかにいつもより苦しそうだったし、まるでどう動いたらいいのか分かっているかのように行動していた。それにあの輝夜姫の別世界、並行世界を匂わせる発言。ここから予想するに…

 

「未来を体験する能力、ってこと?」

「まあ間違いではない。特に名称はないんだが俺はこれを【打ち勝つ程度の能力】って呼んでる」

 

さらりとご主人様は能力名を口にした。名前だけなら随分と強そうな名前である。その能力を使っていればどんな戦いでも負けなしのように思える。しかしそんなことはないのだろう。あの異変のときにずっと一緒に行動していたけど、あの時のご主人様の苦しそうな顔はもう見たくない。あれほどの表情をさせる能力が使い勝手がいいはずがない。

 

「これは言うなれば死を体験する能力だ」

「死?」

「そう。その行動の先に死が待っているときにのみ能力が発動して、何が起きるのかを予想できる。霊力の消費は無効化ほど多くないんだが死んだときの苦しみが返ってくるんだよな。しかもこれに関しては俺の力で制御できなくてな…まあ死ぬ痛みを味わうだけで死ぬよりマシだがな」

 

苦笑いしながらそう言うご主人様。マシなんて言ってるけど、きっとそんなことはないだろう。言葉通り死ぬほどの痛みを何度も味わえばきっと死にたくなる。そしてそれを私は理解することができない。

 

「そんな悲しそうな顔しないでくれ。死ぬよりもマシなのは当然だろ?見た未来の数からすると…この能力が無ければ不動の異変で十回は死んでる」

「…」

 

あっけらかんと言うご主人様。痛み、死に対する恐れはないのだろうか。

そういえば痛みの話で思い出したが、フランから聞いた話だとご主人様が最初に紅魔館に訪れた際に狂気状態のフランによって腕を吹っ飛ばされたと聞いた。その腕はご主人様の再生の能力によって完全に元に戻ったと聞いたときはなんて規格外の再生力だと思った。妖怪でも腕が吹き飛ばされたら一カ月くらいは回復に時間がかかるというのに。

しかしもっと考えるべきはご主人様の反応だった。腕が吹き飛ばされたとき、ご主人様は叫び声一つ上げずにすぐさま腕を拾ってくっつけたらしい。腕を吹き飛ばされた直後の冷静さではない。答えは一つ、慣れていたのだ。腕を吹き飛ばされるくらいの痛みなどどうでもよくなるくらいの死というものに。

 

「…じゃあ質問を変えるわよ?」

「おう。今日は隠し事はなしだ。ルーミアのことは信頼してるしな」

「ふふ、ありがとう…ご主人様は能力をずっと【十の力を操る程度の能力】って言ってたけどあれはなんだったの?嘘ってことかしら?」

 

ご主人様は幻想郷に来てからずっと【十の力を操る程度の能力】であると宣言してきた。能力は自己申告制なので嘘の判定はないわけだけど、本当の能力があるのに別の能力名を口にしていたというのは嘘をついていたのと同義であると考えてもいいだろう。

 

「嘘じゃない。ルーミアだって知ってるだろ?」

「じゃあ能力は二つってこと?」

「んー、それもちょっと違うな。あくまでこいつも打ち勝つための布石だった」

 

だった?

 

「俺は学生時代に能力を身に着けた全能感から家を飛び出て一人で生活を始めた。そのときは既に力はあったんだ。でも十個じゃない。魔術だけだ」

「え、どういうこと?」

「十個の力っていうのは段階的に見に着けたものなんだ。ルーミアに言ったことあったか忘れたけど俺の剣術の師匠はあのミキだぜ?んでもってこの剣は…」

 

ご主人様が輝剣を出現させた。ご主人様が持つこともなくふわふわと浮いているのは特性らしい。

 

「ミキと一緒にとってきたものだ。俺の死を回避するために剣の力が発現したから剣術を習ったに過ぎない。剣の力がうまれたのは偶々…だと思う。少なくとも俺は剣が無ければ死んでいたって状況になった記憶がないからな。剣のおかげで仕事に成功した記憶はあるけど、打ち勝つ能力は死以外には反応しないからなぁ…」

 

順番を整理すると、打ち勝つ能力が死を検知して剣術の力を発現、輝剣をミキと一緒に取りに行く、剣術を習う。ということだ。となると輝剣と剣を出現させたり消したり増やしたりという芸当は関係ないように思えるけど…

 

「その認識で間違いないぞ。輝剣を幻空とは別のところに収納することができるのは【十の力を操る程度の能力】に由来するものだ。ただ収納できるのは一本だけで、増やすことができたのは光属性と相性がよかったからだからまるっきり関係ないわけでもない」

「じゃあ別の剣を入れることもできるってこと?」

「そうだな。でもこのフワフワ浮くのは輝剣の固有のものだからこれ以外を使う気もないけど」

 

ご主人様から本当の能力を聞いて謎を解明しようと思ったら更なる謎が増えた。そしてこの謎を解明するためにはきっとご主人様の人生を体験しなければいけないだろう。

 

「ま、あれだ。剣も魔術も結果も無効化も、全部死を回避するために生み出されたものだ」

「じゃあこれからも増えるんじゃないの?」

「かもな。増えたらなんとなく感覚で分かるんだが幻想郷に来てからはまだないな。不動のときも発現しなかったからもしかしたらこの十個の力で事足りるってことなのかもな…本当のこと言うと未来視も力の一つだから十個じゃないのだけど」

 

おや?新しい謎の予感。

 

「十個の力っていうのは俺が勝手に選んだ十個だ。それに魂って力じゃなくて本当に知らない間に狂気がいただkだから能力に関係ない。要は他人に言ったり見せたりするためにキリよく十個の力ってことにしてるだけだ」

「そんなのズルじゃない!」

「問題はない。なんせ十個全部見せるってことは中々ないからな。霊夢の前とかでも十個全部使ったわけじゃないし、このことを知ってるのはミキと紫とルーミアだけだ」

 

なんだか段々ご主人様のことが詐欺師に思えてきた。今までの幻想郷での能力に対する態度はすべてブラフであり、本当の能力を隠すためのものだったということに驚きを隠せない。

 

「ちなみに能力のことを隠すのは、知られると効果がなくなるからだ」

「それ私に言ってよかったの?」

「ルーミアは俺を殺そうとしないだろ?」

 

まあ、するわけないけど。ご主人様からの多大な信頼が私を嬉しくさせる。ここまで式神のことを全面的に信頼してくれる主も中々いないだろう。

 

「ま、大体こんなもんだ。質問に関しては周囲に誰もいなければいつでも受け付けるぞ」

「分かったわ」

 

ご主人様の能力はまだまだ謎だらけだ。それに今までの情報の精査もしなければいけない。ご主人様のことを理解するためには必要なことだ。惚れさせるためにも、絶対に。




作品タイトルを無視するような能力が出てきましたがちゃんと収束しますのでご安心ください
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