東方十能力   作:nite

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四章 妖精大戦争
二百六十五話 大妖精の依頼


とある春の昼下り。幻想郷の人知れない森の中で一人の妖精と三人の妖精が向かい合っていた。

 

「あんたたち、あたいに喧嘩を売るなんていい度胸ね!」

 

片方は冷え冷えサイキョーの氷妖精チルノ。春から夏になるにつれて需要が高まっていく妖精だ。

いつも一緒にいる大妖精の姿はなく、またルーミアやミスティア、リグルといったいつものメンバーの姿もない。珍しくチルノが一人で行動していた。

 

「悔しかったら仲間の妖精でも引き連れてみなさい」

「ふふっ、まだまだ始まったばかり」

「弾幕勝負は受けて立つわ」

 

対する三人はサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの光の三妖精と呼ばれる三人。いつもは人間相手に悪戯をしている三人は珍しく同族であるチルノに対して見下したような態度を取りつつ挑発をしている。それに腹を立てるチルノという構図が出来上がっていた。

 

「勿論私達の下について異変を起こす手伝いをしてくれるなら全然…」

「あたいが誰かの下につくわけないでしょ!あたいが一番サイキョーなんだから一番トップに決まってるじゃない!」

 

最強という言葉にもトップという言葉にも一番という意味が既に入っているため言語が凄まじいことになっているが妖精の中で頭がいいとか力が強いと言ってもそれは妖精の中での話。おバカなことには変わらない妖精四人の中で言語に気が付いた者はいなかった。

イライラが頂点に達したチルノは三妖精に対して攻撃をした。

 

「このっ!」

「残念ね」

 

チルノは氷弾を飛ばすがしかし、三人に当たることはなかった。どうやらサニーミルクの能力で絶妙に光が屈折しているらしい。スターサファイアは少し残念そうな顔をして、他の二人は攻撃されたことに警戒をしていた。三人の影が揺らいだかと思うとそのまま三妖精はいなくなってしまった。

 

「ふんっ!あたいの前から逃げるなんて意気地なしね!」

 

三妖精によって搔き立てられた怒りを近くの虫を氷漬けにすることで解消しながらそんな言葉を吐いた。

だがそれですっきりしてしまったのか大妖精と遊ぶことを思い出したチルノはそのまま大妖精のところへ遊びに行ったのだった。それが約三日前。

 


 

「それで…えっと、妖精たちが異変を起こそうとしてるから止めてほしいと」

「はい…チルノちゃん先走ってどこかに飛んでいっちゃって…私も止めようと頑張ったんですけど問答無用で氷漬けされそうになったので逃げてきたんです…」

 

どうやら喧嘩を売られたことを思い出したチルノが今になって三妖精相手に勝負を仕掛けているそうだ。既に幻想郷の多くの妖精は三妖精の下について暴れる準備をしているらしい。妖精一匹一匹の強さはそこらへんの野良妖怪にも劣るものの数だけで言えば幻想郷で最多人口を誇る。

どうやら三妖精は妖精たちを集めて異変を起こそうとしているらしい。大妖精も色々と情報収集に動いてくれていたようだ。

 

「で、なんで霊夢じゃなくて俺なんだ?」

「だって霊夢さんだと幻想郷の妖精根絶やしにしそうなんですもん…」

 

分かる。霊夢ならやりかねない。まあ途中で飽きるか面倒になってやめるかするだろうけど、それでも幻想郷に住んでいる妖精の半分が一回休みとなるのは確定しているだろう。流石の大妖精も同族が全員吹き飛ばされるところを見るのは忍びないようである。

 

「でもそれってチルノが三妖精全員負かしてしまえば終わりじゃないのか?チルノだって強いんだろ?」

「そりゃチルノちゃんは三妖精にでも勝てると思うけど…サニーちゃんは教えてくれなかったんだけど、どうやらチルノちゃんよりも強い妖精も仲間にしているみたいで…」

 

サニーというのは光の三妖精の一人、サニーミルクのことだ。大妖精曰く能力は【光を屈折させる程度の能力】らしくそれを使って日々悪戯をしているらしい。三妖精の中で発案者的な役割を担っており、何かとリーダー役をすることも多いらしい。

 

「でも三妖精はチルノよりも弱いんだろ?どうやって仲間にしたんだ?」

「それは分からないけど…このままじゃチルノちゃんが危ないんです!」

 

そのためにわざわざ大妖精は少ないながらもお金を集めて俺のところまで来たようだ。俺にチルノを助けるという依頼をするために。依頼料としては少ないものの、まあ必死な大妖精の姿を見ればお金に関してはどうでもよくなる。本当に大切な友なのだろう。

 

「分かった。異変っていうのは起きる前に解決してしまった方が楽だしな。ただ大妖精も手伝ってくれよ?」

「もちろんです!」

 

拳を握って「おー!」とやっている大妖精。いつもは冷静で少し大人びた雰囲気があるからこういった子供っぽい動きはギャップがある。大妖精もチルノたちと同じ妖精で子供なのに変な感じだ。

 

「ルーミアとユズは留守番な。前みたいに大変なときは式神召喚するかもしれないから頼むぞ」

「…はーい」

「はい!」

 

俺の言葉に気怠そうに応えるルーミアと元気があるユズ。でも呼び出すとしたらルーミアなのでユズには留守番を頑張ってほしいものである。

 

「そんで、俺は何をすればいい?三妖精を見つけて先にぶっ倒せばいいのか?」

「チルノちゃんを見つけてほしいんです!私だと負けちゃうから止めてもらって、話がしたいんです」

「了解」

 

俺は大妖精の言葉に従って家を出た。さて、今回こそ失敗することなく異変を解決できるだろうか。

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